テラーノベル
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「ステルス追っかけ期間」に突入したはずの女子たちだったが、声を大にして「可愛い」と叫べないフラストレーションは、別の形で大爆発することになった。
「……おい。これ、どうすんだよ」
放課後。男子寮の共同スペースのテーブルを前に、小形遥太(こがた はるた)は完全に引きつった顔で立ち尽くしていた。
テーブルの上には、山積みにされた色とりどりのラブレターやプレゼントの箱。それだけではない。彼らの下駄箱や教室の机の中、さらには寮のポストにまで、溢れんばかりの告白の手紙が文字通り「秒単位」で投函され続けていたのだ。
「ふむ……。僕の机に詰め込まれていたラブレターは総数412通。内容の9割が『わたるんの猫耳を間近で見せてください』『無言で応援しています』という強迫概念に近いものだった。読むだけで僕の脳内メモリがゴミデータで埋め尽くされる……っ」
末田渉(すえだ わたる)は、メガネを萌え袖の先で神経質そうに押し上げながら、深いため息をついた。不快感と恥ずかしさで、黒い猫耳がヘナヘナと力なく垂れ下がっている。
「いや〜、俺のところにも『大型犬の秀兎くんへ』って書かれた手紙と一緒に、犬用のおやつ(高級ブランド品)が届いたんだけど……。嬉しいけど、流空、これ食べる?」
「食べるわけないだろ。……俺のところには、手紙と一緒に『狼の流空様へ』って生肉(特選A5ランク)のカタログギフトが届いたぞ。意味がわからん」
流空は狼耳をピクリとも動かさず、うんざりした様子で萌え袖の腕を組んだ。イケメン5人の元に届く告白とラブレターの量は、もはや個人の処理能力を遥かに超えていた。
「ははは! みんな大人気だね! まさに怪盗キッドが世界中からラブレター(予告状への返信)を貰うのと同じ現象さ!」
一人だけ届いたラブレターを嬉しそうに仕分けしていた新庄駿(しんじょう しゅん)だったが、遥太の目がスッと鋭くなったのを見て、ピシリと動きを止めた。
「駿……。君が昨日、余計な『限定写真』なんかで取引したせいで、女子たちのエネルギーが全部この『ラブレターと告白』に変換されたんだぞ……!」
遥太のトイプードル耳が怒りでピンと逆立つ。彼は本来、超武闘派の「チート能力」の持ち主だ。萌え袖をぎゅっと握りしめ、凄まじい威圧感を放ちながら駿に一歩迫る。
「ひっ……! ご、ごめんってば遥太! 悪気はなかったんだよ!」
「言い訳は聞かない。渉、こいつのスマホに制裁を下せ!」
「了解した。駿のスマホの全連絡先および、これまでに撮影した『わたはる限定データ』のフォルダに、自己増殖型の破壊ウイルスをハッキングで流し込む」
渉の指先が、ノートPCのキーボードの上で残像が見えるほどのチート速度で踊り狂う。
「ああっ!? 僕の命より大事なコレクションが!! 待って、渉、それだけは勘弁して――!!」
駿がウサ耳を振り乱して泣き叫ぶ。
「……はぁ。駿の自業自得だけど、このラブレターの山をどうにかしないと、明日も学校に行けないぞ」
流空が頭を抱えながら、窓の外を見た。遮光カーテンの隙間から覗くと、寮の敷地外には、自分たちのラブレターが読まれたかどうかを「無言で、じっと息を潜めて」見守っている女子たちの視線が、無数に光っていた。
「うう……もう告白されるのはうんざりだよ……っ」
遥太は恥ずかしさと疲れで顔を真っ赤にしながら、萌え袖で顔を覆ってソファに沈み込んだ。
「同感だ。これ以上のラブレターは紙資源の無駄であり、僕たちの精神衛生上、極めて有害であると言わざるを得ない……っ」
渉も赤面したまま、猫尻尾をボフッと膨らませてソファの端っこに丸まった。
どれだけチートな能力や頭脳を持っていても、女子たちの「無言の告白猛攻」には手も足も出ない5人。萌え袖獣耳パーカーの呪い(制服)が解けない限り、彼らの受難の毎日が終わる気配は、サラサラとなさそうだった。
コメント
1件
いやもう、ラブレターの数がエグい!412通とか強迫概念レベルで草。犬用おやつとA5ランクの生肉カタログが届くの、キャラの個性出てて笑ったわ。駿が余計なことして自爆する流れ、めっちゃウケる。でもチート能力持ってても女子の無言圧には抗えないもどかしさ、共感できる〜。続き気になる!
新庄 駿
270
茶々丸
122