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「……ねぇそれで、そのお店のこと知ってるの? 理沙は」
私の表情を探るように、じっと顔を覗き込んでくる花梨に、
「う……ううん! 私も、知らないから。ただ、そんなに有名なら、ちょっと興味あるかなって思っただけ……」
とっさに話をはぐらかした。
花梨とはたまにおしゃべりをする仲ではあったけれど、彼女はちょっと口が軽くウワサ好きなところがあった。
だからもし花梨なんかにそのお店のカードキーを持ってることが知られでもしたら、あっという間にあることないこと大学中に広められそうだった。
「……そっか〜。かの夏目 理沙様でも、知らないんだァー」
「何よ、その言い方って……」
どこか引っかかるような言い方に、ムッとして閉口する。
「だって理沙は、ミス・キャンパスにも選ばれる程、構内でも人気の的だし、その理沙様なら、もう実はホストに招待されてるんじゃないかな〜……なんて思って」
花梨がふふっと含み笑いを浮かべて、横目に私を見やる。
「……様とか、だからやめてって言ってるでしょ……」
いちいちカチンとくるような言い方に、もうあまり話したくもなくなって、彼女からふいと目を逸らした。
「……ほら、そういうところだって! そういうさ、周りを寄せ付けないようなところが、逆に人気にもなってるんだよね……知らないの、理沙?」
「知らないから……」
正直、これ以上は彼女の口やかましいおしゃべりには付き合う気にもなれなくて、素っ気ない一言だけを返した。
「ふぅーん。まぁ、いいけどぉ〜……」
と、花梨がさも面白くなさそうに、緩めに巻いた髪をくるくると指に巻きつける。
「じゃあ、またね」
講義が終わったこともあり、私はその場に彼女を置いて、カバンを手にさっさと席を立った──。