学食へ向かうと、花梨が言っていたように、あちこちで『超イケメン✧ホストクラブ』の話題が上がっているようだった──。
おしゃべりな彼女が知っていたくらいだから、もう話はスピーカーで流したみたいに知れ渡っているんだろうとは思っていたけれど、いざ話題になっているのを目の当たりにしても、まだ私にはあまり現実味が湧かないでいた……。
頼んだランチのトレイをテーブルへ置き、空いていたイスに腰を下ろすと、近くの席からはこんな会話が聞こえてきた──。
『超イケメン✧ホストクラブ、うちのお姉ちゃんの友達の妹の先輩が、招待されたとかって言ってたよ』
『何、それ? お姉ちゃんの友達の妹の先輩って、遠すぎだし〜。ウソなんじゃないの?』
『ウソじゃないって、ホントだってば!』
『……ああ、でも私も行ってみたいかもー。超イケメンばっかりのホストクラブなんて〜』
『私もー。けどそれって、現実に行ったって人の話とかは、直接聞いたことないよね?』
食器のぶつかるカチャカチャという雑音に混じって、そんな話し声が耳に入ってくる。
『行った人が誰もいないんじゃ、だいたいお店の名前からして、ただの噂なんじゃないの?』
『そうそう、超イケメン揃いのホストクラブだなんて……。実は、都市伝説とか?』
笑いながらそんなことを喋っている人たちの中で、私はこっそりとカバンの奥に手を突っ込んでみた。
手応えを感じて取り出すと、そこには、紛れもなく『超イケメン✧ホストクラブ』と書かれた、カードキーがあった。
誰かの目に触れたりしない内にと、急いでまたカバンの中へ戻して、
(こんなに話題になってるのなら、一度くらいは、行ってみてもいいかな……)
いつしか私はそう考えるようにもなっていた──。
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