初めての完結ですね!
(1)〜(3)をまとめました!
話の内容は一切変わっていません。
まとめて読みたい方用です。
タイトルはruka様から頂きました!!
“博士が求めていないペガサスくんの「死」と、博士が求めていない自分の「生」”
という意味らしいです…!!
本当に本当に。素敵なタイトルをありがとうございます…!!!
死ネタです。
救いはありません。
本編すたーと
カチャカチャ…カチャカチャ…研究室に響くこの音を、僕はどのくらい聞いているんだろう。淡々と部品を組み立て、完成した“彼”に電源を入れる。
「…ル、いどウジ、ハ、かセ…」
違う、”彼“は僕をこんな声で呼ばない。こんな表情で、僕を呼ばない。服装は、髪は、身長は、立ち姿は、声は、顔は。”彼”と何も変わらないのに、僕を呼ぶ声と表情は、全く“彼”のものではなかった。
そうだ、所詮コレは作り物だ。僕はその事実に耐えられなくなり、近くにあった工具で思いっきりソレを殴りつけ、壊す。
…あぁ、また”彼”を壊してしまった。違う、ダメだ、もっと完璧な“彼“を、作らないと、作り続けないと。
カチャカチャ…カチャカチャ…同じ音が研究室に響く。
どうして、どうしてこうなってしまったんだろう…。
数週間前、彼……司くんは、逃げ遅れた子供を、敵の攻撃から庇い、大怪我をした。僕はもう、医務室で血の滲んだ包帯を、身体中に巻いて眠る司くんを、見たくなかった。だから、司くんが任務の時に着るスーツに、安全装置を付けることにした。
スーツの見た目はそのままに、どうやって、どこに、どんな安全装置を付けるか。なるべく取れずらいように、けれど、司くんが動きやすいように。何度も繰り返し考えて、作って。何日寝ていないか、食べていないか、覚えていない。けど、疲れは感じなかった。いつも頭の片隅には、子供を庇ったときの司くんの姿があった。
そうして約一週間で、僕は、安全装置がしっかりと付いた、司くんのスーツを完成させた。司くんの怪我が完治し、訓練にも顔を出せるようになってから、最初の任務に、司くんは僕が作ったスーツを着て行った。スーツを渡して、安全装置の説明をしたときも、目を輝かせながら、
「すごいな!類道寺博士!!」
と褒められ、作ってよかったと、心の底から思った。
司くんは大丈夫、絶対に帰ってくる、___そう思っていたのに。
いつものように、街の人を安全な場所へ避難させて、司くんは敵へと立ち向かう。いつもハラハラしながら指示を出しているが、この日は何故か安心して、冷静に指示を出すことができた。あと少しで敵を倒せる、ふと、肩の力を抜いた瞬間。
ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ…!!
司くんの身の危険を察知すると、司令塔にあるランプが、音を出して赤く光るようにする装置が起動したようだ。僕は慌ててモニターに映る司くんを見る。目立った傷はない、強いて言うなら、服の袖の辺りが少し破れているぐらいだ。でも、司くんの表情は、どこか諦めのような、何かを決意したような、複雑な顔をしていた。嫌な予感が頭を過ぎる。僕は慌てて無線のスイッチを入れた。
「司くん!!どうしたんだい!?君の身の危険を察知すると反応する装置が、起動しているんだ!!ねぇ司くん!どうしたの!早く安全な場所へ…!!」
一向に返事をしない司くん、僕の不安は大きくなるばかり。
「類道寺博士…いや、類。」
「…!!司くん、!ねぇ、どうしてそんな顔するの!?敵はネネンガーVに任せて、君はもう帰ってくるんだ!!」
「オレは、最期まで、ちゃんと、ヒーローとして在れているか…?」
「なっ…司くん…!!もちろんだよ…君は…ずっと…最高のヒーローだ……。だからお願い、帰ってきて…!!」
「類、スーツに、安全装置、沢山付けてくれてありがとう…。」
モニターには、涙を流しながらゴールに付いたインカムへ話しかける司くんの姿が映る。どうして、そんなことを言うんだ。まるで、この戦いで、もうすぐ自分は死ぬと、言っているようなものじゃないか…!!
ぐるぐると、いろいろなことを考えていると、ヘッドフォンから、掠れた司くんの声が聞こえてきた。
「さようなら、類…!」
「ダメだ!!司くん!!待って!!止まって!!」
いつかの子供を庇ったときのように、司くんは僕の指示を聞こうともせず、目の前の敵に向かって走っていく。
ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ…!!
ランプは変わらず赤く点滅し、音を出し続ける。司くんは、自分よりも明らかに大きい敵へと体当たりしようとしているに違いない。
「やめるんだ!!!司くん!!!!!!」
僕はかつてないほどの声で叫んだ。そして、僕のヘッドフォンには、ザザッ…というノイズと共に、
「あ_がと_…。_いして_ぞ、るい…。」
そんな声が聞こえたと思えば、ブチッと音声とノイズが消え、無音になる。モニターには、敵の急所から黒い煙がもくもくと立ち上っている映像が映し出された。
____司くんは…ペガサス・ザ・シャイニングは、この世から姿を消した。
…後から聞いた話だが、司くんを死に追いやったのは、僕が作った安全装置が原因だったそうだ。安全装置が誤作動を起こし、それに司くんが気付かないまま長い間動いたから、装置の一部が焼け、爆発を起こしたのだろうと、他の研究者が言った。
司くんが敵に体当たりをしたのは、あの複雑そうな表情は、きっと爆発するのがわかったからだろう。
最期までヒーローで在った司くんは、どこまでも眩しく、危うかった。
他の人達は、司くんの安全を考えて付けたのだから、博士は何も悪くない、不幸な事故だったと、僕に慰めの言葉を投げかけてくれたけど。僕の心には、何も響かなかった。僕は司くんの安全を一番に考えて、スーツに安全装置を付けた。けどそれが、司くんの命を奪った。こんなの、僕が彼を殺したも同然だ。
___それなら、僕が“彼”を作らなくては。本物以上に本物で、完璧なペガサス・ザ・シャイニング、もとい司くんを。
そう決心して、僕は研究室のドアを閉めた。
え?そんなに司くんに会いたいのなら、自殺でもして会いに行けよって?…僕だって、今すぐにでもそうしたい。自殺して、司くんに会って、謝りたい。けど、できないんだ。
___司くんは、それを望んでいないから。………気になるって?弱々しい司くんを知っているのは僕だけでいいんだけれど…。仕方ない、特別だよ。
司くんが生前、僕に言ったんだ。
「オレ達は常に危険と隣り合わせの状態にある。明日が必ずやってくるなんて、言い切れる状態ではないんだ。…だから博士、頼む、長生きしてくれ。絶対に、博士には死んで欲しくない。寿命が尽きるまで、生きていて欲しい。この先何が起こるかわからない。だが、博士…類には、生きていて欲しい。…わがままなのは、わかってる。けど、お願いだ。これが、オレの最初で最後の、類へのわがままだから…。」
って。司くんは、普段全くお願い事とかわがままとか言わないから、正直めちゃくちゃ嬉しかったんだ。
何より、これを話しているときの、司くんの寂しそうな笑顔に心を掴まれてしまってね。…僕はその場で、指切りげんまんをしたんだ。僕の寿命が尽きるまで、この世で過ごす、って。
……さて、おしゃべりもここら辺にしておこうかな。僕は早く作業に戻らないといけないんだ。本物以上に本物で、完璧な司くんを、作り上げないと。
博士は作り続ける、納得がいく“彼”が完成するまで。
カチャカチャ…カチャカチャ…研究室に音が響く。
博士は、これからも同じことを、何回も、何回も繰り返す。“彼”を作って、完成したら電源を入れ、“彼”が言葉を発する度に、ソレが作り物だという事実に耐えられず、工具でソレを壊す。壊してから、“彼”を自分の装置で帰らぬ人とさせてしまったことを思い出し、狂い叫び、絶望し、また“彼”を作り始める。
博士は生前の“彼”の願いによって、死ぬことさえも許されない。
カチャカチャ…カチャカチャ…
「るい、ど、ウじ、ハカ、せ…」
「違う、司くんはこんなモノじゃない…!!」
ガチャンッ…、グシャッ…!バキッ…!ブチブチ…!
「あ゙あ゙!!司くんッ…!!ごめん、ごめん、ごめんね、次は、次こそは…絶対に君を…!!」
カチャカチャ…カチャカチャ…カチャカチャ…カチャカチャ…
研究室の奥には、博士の手によって破壊された、“彼”を模したロボットが、山積みになっている。“彼ら“の綺麗な金色の髪は、生前の輝きを失っていた。
___博士が”彼”と再会するのも、時間の問題だろう。
まとめて改めて全部見てもさ、本当にどこにも救いがない話だよね。
しんどい…けどそこが良い…!!
まじで派生類司増えないかな!!
これ読んでる人さ、ノベルでもチャットでもいいから派生の類司書いて、タグに「#派生類司」って付けて投稿してほしい!!すぐ反応しに行く!!
派生の良さを、もっとたくさんの人に知って欲しいんだ!!
どうか!!お願いします!!!!!
読んでくれてありがとうございます!!博ペガはこれで終わりですが、これからもよろしくお願いします!
全体を通しての感想、コメントに書いていってください!!
それでは、おつえだです!
コメント
2件
あれ、コメント表示されないんだけど…。
ちなみに、「安全装置の誤作動」ってどこかで聞いたことありませんか? そうです、類司イベと言っても過言ではない、あの伝説のpotatoイベで、ゾンビロボットが司くんを奈落に引きずり落としてしまう、というところがありましたよね。 potatoイベとぷちセカを見ながら書きました。 あのとき本当に司くんが起きなかったら、どうなっていたんですかね。 読んでくれてありがとうございました。