TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
シェアするシェアする
報告する

「ごめん、柚葉。樹のジョークだから気にしないで。樹、気をつけろよ」



「本当のことを言っただけだ」



思わず私の目が据わる。



「いい加減にしてくれ。柚葉のことを悪く言うなら許さない」



「……」



樹さんは、横を向いたまま黙ってしまった。



「だ、大丈夫です、全然大丈夫。まあ、美人じゃないのは本当のことだから……。あはは」



私のせいで場の雰囲気が悪くなるのはものすごく嫌だった。何とか愛想笑いでごまかしたけど……



「ごめん、本当に樹の言うことは気にしないで。さあ、行こうか」



柊君が、申し訳なさそうな顔をした。



それにしても、樹さんはほぼ荷物を持っていない。

服装も、ジーンズにTシャツ、ジャンパー姿でかなりラフな格好だ。

これで海外支社長とはとても思えない。



洋服の感じもだけど、他の見た目の違いでいえば、髪の色が少し違ってる。つまりはそこで2人を見分けられる。

柊君はナチュラルなブラウン、樹さんはクール系のアッシュグレー。緩いパーマスタイルは似ているけど、確かに、樹さんの方がオシャレ感はかなり強い。



もちろん、私には圧倒的に柊君の方が爽やかで好感が持てるけど。



はぁ……。

すねていても仕方ない。

私は気を取り直して樹さんに話しかけた。



「樹さん、英語ペラペラなんですよね。すごいですね」



将来、義理の弟になる人なんだから、大事にしないといけない……私は自分に言い聞かせた。



「アメリカに住んでるんだから、英語くらい話せて当然だ。つまらないお世辞はやめてくれ」



前言撤回!!

やっぱりこんな人、大事になんて思えない。

何なの、本当に柊君の弟?



いやいや、柊君の弟だと思うからダメなんだ。ただの「人」だと思おう。だけど、見た目が似すぎてるから変に頭が混乱する。



「樹はアメリカに行く前から英語が話せてたんだよ。僕らは、2人とも子どもの頃から英会話にずっと通ってたんだけど、樹の方が断然上手くて。ビジネス英語ができるから、それが樹の武器だよな」



柊君は、誇らしげに樹さんを褒めた。



「柊も英会話は得意じゃないか。ビジネス英語も、柊ならすぐにマスターできる」



「そうだな、英会話も頑張らないとな。樹は、昔から本当に何でもできる秀才なのに、なんせこの通り愛想が悪いから、周りに誤解されやすいんだ」



柊君は、そう言って笑った。



「何でもできるのは柊だろ。柊のおかげで、今は俺もやりがいのある仕事に就けたって思ってるし」



そっか……

性格は違っても、この2人はお互いに認め合い、尊敬し合ってるんだ。



素敵だな、そういうの。

兄弟っていいな。



でも、やっぱり……樹さんは苦手だ。



「じゃあ、日本に戻っても樹にはバリバリ頑張ってもらわないとな」



「こき使うのだけは勘弁してくれ」



兄弟2人の自然な会話を聞きながら、私達は地下にある駐車場に到着した。

止めてあった車に樹さんの少ない荷物を乗せ、私達はそれぞれ前と後ろに乗り込んだ。

後部座席からの眺めは、まるで同じ人が運転席と助手席に乗ってるようで、かなり不思議な空間になっていた。おまけに、キラキラオーラも充満して、何ともいえずドキドキしてしまう。



「今日は、夜、3人で食事しよう。いいだろ? 樹」



「ああ、別に予定は無いよ」



「柚葉もいいよね?」



「あ、うん、大丈夫だよ」



「良かった。じゃあ、仕事が終わったら、柚葉と一緒に樹を迎えに行くから」



「わかった、待ってる」

loading

この作品はいかがでしたか?

3

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚