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『ただいまぁ…』
「おかえり、俊典さん」
『うんただいま、相澤くん』
俊典こと…世間からは”オールマイト”と呼ばれ、英雄として掲げられている彼は、ヒーローであり、俺の彼氏でもある。
『今日の夕飯なに?』
「今日は時間なかったんで、チャーハンにしました」
『うわぁ!ありがとう!』
昼飯はゼリーしか食べないが、付き合い始めてから彼のことを考えて料理をするようになった。
「腹減ったんで食べましょう。はよ、手洗ってきてください」
『あ、うん!今すぐ!』
バタバタと足音を立てながら手を洗いに行く。
英雄と言われていても、俺の前では何の繕いもなく、その辺の市民と変わらないただ1人の男だ。
その男と、初夜を迎えると考えると…
「…くそっ」
『ごめんお待たせ!食べようか』
「…はい」
お互いにプロヒーローとして、雄英に務めるものとして、会話することは生徒のことやヴィランのこと。
少なからず、他人から見ても付き合っているだなんて思わない。
「…俊典さん」
『ん?』
「ほんとに俺でいいんですか?」
思わず聞いてしまう。
『んと、なにが?』
「相手が俺で。あんた、モテるでしょう?俺でなくても相手なんでそこら中にいるでしょうし、ましてや男なんて…」
『相澤くん』
カチャ、と食器がぶつかる音がする。
『私はね、相澤くんが好きだから相澤くんを選んだんだ。片思いだと思ってたのに、両思いだったのわかってすごく嬉しかったんだよ。だから、そんなこと言わないでくれ。』
心からそう伝えてくれているのが分かる。ジンと胸が熱くなり、恥ずかしさに目をそらす。
『自信もって…なんて安易に言わないけど、私の”大切な人”としては自信持ってほしいな』
「…はい、すいません。変なこと聞いて」
『い、いや!いいんだよ!そう思うのがきっと…普通、なの、かな…』
歯切れの悪い答えに思わず吹き出す。
「言いたいことは分かったんで…今夜は楽しみましょう」
テーブルに置いていた手を取り、指を絡ませる。
『っ…!反則だよ、相澤くん…』
そう言って顔を隠す彼に、俺は口角を上げずにはいられなかった。