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冷たいアスファルトの感触で、ポピーは意識を取り戻した。ゆっくりと身を起こし、まずは自分の手を見る。そこにあるのはプラスチックの質感ではなく、血の通った人間の肌だ。身長は160センチほど。プレイタイム社の最深部にいたはずの彼女は、いつの間にか見知らぬ場所で、人間の少女の姿へと変わっていた。
「……ここがどこか、まずは把握しないとね」
独り言をつぶやく声に怯えはない。背中には、使い慣れたグラブパックの重みがある。腰には予備の懐中電灯。最低限の装備は揃っている。
視線を上げると、目の前には巨大な校舎がそびえ立っていた。しかし、その光景を目にした瞬間、ポピーの鋭い知性が小さな違和感を捉える。
「……何かしら、この質感。まるで、すべてが『紙』でできているみたい」
空も、地面も、遠くに見える木々も。世界全体が白と黒のモノクロームで構成され、奥行きがあるはずなのに、どこか平面的な切り絵のような奇妙な質感を備えている。プレイタイム社のような廃墟の不気味さとは違う、数学的なほどに整いすぎた、二次元的な違和感だ。
校門に刻まれた文字は『Fundamental Paper Education』。
「紙の教育……。ずいぶんと風変わりな名前の学校ね」
ポピーは分析を続ける。これほど広大な敷地を持ちながら、聞こえてくるのは風の音だけで、風紀の乱れを感じさせる落書き一つない。おそらく、非常に厳格で規律正しい人間が運営している施設なのだろう。あの混沌とした工場から脱出できたのなら、これほど秩序だった場所は理想的な中継地点に思えた。
「まずは、この学校の管理者に会って情報を集めましょう。知的な相手なら、きっと協力してくれるはずだわ」
彼女はグラブパックの青と赤のマジックハンドを軽く動作させ、異常がないことを確認した。もし建物内に高い棚や仕掛けがあっても、これがあればスマートに解決できる。
ポピーは迷いのない足取りで、鉄格子の門へと歩を進めた。
ギィィ……と、静寂の中に硬質な金属音が響き、門がゆっくりと開く。
「随分と歓迎されているみたい。お邪魔するわね」
ポピーはその奇妙な質感の世界に微かな好奇心を抱きながら、背筋を伸ばし、白と黒のコントラストが支配する学び舎へと足を踏み入れた。