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……いや、正確には椅子に縛られていた。
「……は?」
夢だと思った。夢だと思ったが縄が結構縛り付けてきて痛い。夢じゃないのである。
何故、こうなったか。俺が覚えている限りでもいいなら説明してあげよう。
俺、妖崎鴉(ヨウザキ カラス)17歳。ごく普通の青年。両親はいなくて、姉と定食屋をやっている。姉とは仲が良く、犯罪も犯したことがない。貧相なもので学校には通えていないが、それでもやっぱり幸せだった。
が、
8月のあの日、暑すぎて汗が滴る頃、ある一人の男が店に来た。愛想いいおじ様で、俺も姉貴も心を許していた。
「ちょいと弟さん貸してもらっても?」
爺さんがそう言った。
「ごめんなさいねぇ、アタシらまだ仕事中で…」
「なーに、すぐ終わるよ」
「でも…」
姉貴がためらっているのを見て、俺は自分から
「いいよ、姉貴。俺行ってくる。」
とついて行った。ついて行ってしまった。
連れ込まれた路地裏は薄暗く、夏なのに寒気もした。
ここからだ、異変に気づいたのは。
爺さんがさっきみたいに笑ってない。___正直言って怖かった。
「じ、爺さん…? ここ何処だよ…」
困惑と恐怖が混ざりながら目の前の爺さんに問う。
でも爺さんは答えてくれやしなかった。
ただ、伏せてるだけ。
「…爺さん?」
声をかけた時にはもう、遅かった。
「…ッ!?」
地面からいきなり鎖が出てきて俺を縛ってくる。___痛い。
爺さんを見ると変な札を持って顔の前に掲げ、なんか変な言葉を話していた。
「祓屋先祖よ…我に力を借らせ給へ」
なんだ?何喋ってんだあいつ。
そんなことを考えていると、体に猛烈な痛みが走る。
「い“っ!?」
痛い。痛い。焼けるように痛い。
鎖から外れようともがくが、それは叶わない。
あ、俺死ぬんだな。
直感的にそう思った。
ここは大人しく死のう、じゃあな姉貴。元気でやれよ。
そう思いながら目を閉じようと思ったその時。
「急急如律令!仏たッ」
爺さんの呪文が途切れた。
あれ?俺を殺すんじゃねぇの?なんて思いながら恐る恐る目を開ける。
そこには倒れている爺さんと、____
もう一人、背の高くて金髪の男が立っていた。
「お前、逃げるぞ」
「___っへ?」
___で、これ。
逃げてる間の記憶なんてなくて、いつの間にかここにいた。
俺、捕まったかな…なんて思っていれば、先ほどのあの声が聞こえてくる。
「起きた?」
「んぇ?あぁ、はい」
金髪の男だった。
さっきの冷たい声とは違う優しい声。俺がどれくらい安心しただろうか。
…って、今はそんなん考えてる時じゃない。
「おまっ、これ、外せよ!!」
「やだよばーーか、お前が落ち着いたらだよ馬鹿。精々そこで親指咥えて待ってろ」
縛られてるから親指すら咥えらんねぇよ!!
と心の中でツッコむが、縄を解いてくれないのは本当らしい。
俺が一体何したってんだ…。
「まずは生還おめっとさん。良く生きたなお前、あの祓屋結構強いんだぞ」
頭を撫でてくる、嫌すぎたから睨んでやった。
「触んじゃねぇ。何処だここ。祓屋ってなんだ」
「へーへー。全く、最近の若いのは人とコミュニケーションすらとらねぇってのかい」
「とぼけんじゃねぇ、なんなんだよこれ」
正直言って今俺は冷静じゃない。
だけど目の前のコイツがとにかく気に入らない。
金髪の男はガシガシ頭を掻くと、俺の方を見てこう言った。
「お前、妖怪は今現在実在するって知ってるか?」
「……は?」
ここからだ。
この日からだった。
俺の人生が狂い始めたのは。