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うい、我です。
両視点復活しました。
(以下略)
ーーとーます視点ーー
「大丈夫…。絶対…。」
いつから…何回…?
何回この言葉を口に出しているか…。
ブーブー
自分のスマホから通知代わりのバイブがなる。
【今、かえるくんのご家族に連絡したよ。】
【すぐ行くって。】
共通の知人からの連絡だった。
そのメッセージを見ただけで、少しだけ肩から力が抜けたような気がした。
しばらくすると、看護師が俺の傍に寄ってくる。
【あの、とーます様。かえる様の面会の準備ができましたので、ご案内させていただきます。】
「お願いします。」
俺はすぐに立ち上がり、彼女の後ろについていった。
集中治療室のドアが開く。
中には機械に囲まれて横たわるかえるくんが居た。
いつもだったら、もっと幸せそうな寝顔なのに。
今はただ、痛々しい姿なかえるくんがそこに居る。
急いで駆け寄り手を握りに行く。
俺がかえるくんの家に行ったばかりの時は、まだほんのりと温かかったのに。
今は冷たくて、なんだか頼りない。
「かえるくん…。」
俺が呼び掛けても、機械の電子音が規則正しく鳴り響くだけ。
「ごめん…。ごめんね…。」
「俺が…もっとちゃんとしてれば…。」
君を目の前にしていると涙が溢れてくる。
『とーますと話してるだけでも、僕本当に楽しいな。』
恋人になってからの通話でかえるが言ってくれた言葉。
その言葉が、俺の体を締め付けてくる。
苦しくて切ない。
「お願いだから…。目を開けてよ…。」
「もっとたくさん話そ……。」
そう言って俺は、かえるくんの冷たい手を必死に温め続けた。
ーーかえる視点ーー
「大丈夫…。絶対…。」
何度もこの言葉が遠くから聞こえてくる。
面と向かってではなく、脳内に喋りかけられているかのよう。
誰の声だろう…?
だけど、心のどこかで分かっている。
凄く大切な人の声だということが。
もっと近くでこの声を聞いていたい。
だけど、体が言うことを聞かない。
なんなら、もっと遠くになっているような感覚がしている。
今の自分がどんな状態なのか分からない。
ずっと重たい体を暗闇の中で必死に動かしている。
1つの輝いている光に向かいながら。
すると、誰かが僕の手を握ってくれた。
温かい。
優しくて、なんだか懐かしい温もり。
「かえるくん…。」
僕を呼ぶその声に、暗闇の中の光がさらに強く輝く。
「ごめん…。ごめんね…。」
「俺が…もっとちゃんとしてれば…。」
分かった…。
これはとーますの声だ。
謝らないで。とーます。
これはとーますのせいじゃないよ。
だから泣かないで…。
涙を流す必要なんてないから…。
「お願いだから…。目を開けてよ…。」
「もっとたくさん話そ…。」
その声に応えたい…。
その手に応えたい…。
もう一度…彼の顔が見たい…。
そう強く願う。
どうか、僕の気持ちがとーますに届きますように…。
彼の声がする方向に向かって、一生懸命に手を伸ばした。