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うい、我です。
(以下略)
ーーとーます視点ーー
かえるくんの手を長い間握りしめ、ただ祈るように傍に居た俺は、背後から聞こえる足音に気づいて振り返った。
?【かえるは…!かえるはどこですか!】
女性の声が聞こえる。
かえるくんのお母さんかな…。
その隣には、かえるのお父さんだと思われる男性が立っていた。
その2人は、不安と疲労が入り混じった表情で俺を見ていた。
「あの…俺、かえるくんの友人…のとーますです…。」
俺は立ち上がり頭を下げる。
すると、お父さんが俺の顔をじっと見て尋ねてきた。
🐸父【あなたは…かえるの…】
「はい…俺はかえるくんの…」
言葉が詰まる。
友人、という言葉が喉にひっかかって出てこない。
この場ではありのままを伝えるべきだ。
「恋人なんです。」
お母さんは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに俺の目を見て言った。
🐸母【そう…。とーますさん、かえるの傍に居てくれてありがとうございます。】
その言葉に、俺の心でピンと張られていた糸が少し緩んだような気がした。
「いえ…俺がもう少し早くかえるくんの所に行けていれば…。」
🐸母【大丈夫。かえるは強い子です。きっと…すぐに目を覚ましてくれるわ。】
お母さんはそう言ってかえるのベッドに寄りに行き、その頬を優しく撫でた。
その時。
かえるくんの指がピクリと動いた。
🐸母【今…動きました…?】
かえるくんのお母さんが驚いた声を出す。
俺は再びかえるくんの手に目を向ける。
そしてもう一度、かえるくんの指が動いたのを確認した。
「かえるくん…!」
『とー…ます……?』
ーーかえる視点ーー
僕は長い間凄く暗い場所を歩き進んでいる。
止まりたいのに止まれない。
心残りがあるかのように、大きな目標ではなくても、何かに向かって頑張っている自分が居る。
しばらく進んでいると、真冬の海のような冷たい水に沈んでいく。
それでも僕は止まれないんだ。
ここはどこだろう…。
自分がここに居る理由はなんだろう…。
そんなことを考えているうちに、再び意識も沈んでいく。
だけどその度に誰かの声が聞こえてくる。
最初は全く聞き取れなかった。
だけど今ははっきりと聞こえるんだ。
「かえるくん…。」
とーますの声だ。
僕を呼ぶその声が、沈んでいく体を水面へと引き上げてくれているみたい。
なんとかして上に浮かんでいきたい。
だけどごめんね…。
とーます…。
僕…ここから抜け出せないんだ。
体を動かそうとしても動かない。
瞼も開けられない。
かろうじてできたのは、指を少し動かすこと。
その時、僕の頬を撫でる優しい感触があった。
お母さんだ…。
声も聞こえてくる…。
そっか…。僕、病院に居るんだ…。
そして聞こえてきたとーますの声。
「かえるくん…!」
どうしてもその声に応えたい。
もう一度全身の力を振り絞る。
『とー…ます……?』
あぁ…やっとだ…。
やっと僕の思いが届いたんだ…。
僕は…意識が戻ったんだ…。