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⚠︎ 注意 ⚠︎
本作品は、山本様の楽曲 『デロスサントス』 に着想を得た、 完全非公式の二次創作小説 です。
実在の楽曲および関係者様とは一切関係ございません。
本作はフィクションです。
また、本作品は野球を題材としておりますが、登場する球団・選手・試合展開等はすべて創作によるものです。
特定の実在球団や選手、戦績等を意図的に反映・揶揄する意図はございません。
野球という題材をお借りしたフィクションとしてお楽しみください。
作品内には、以下のような表現が含まれます。
・痛覚を伴う描写
・楽曲やキャラクターに対する独自解釈(解釈違いと感じられる可能性があります)
・モブキャラクターの登場
・一部、キャラクター同士の関係性が親密に見える描写
・やや砕けた、または下品に感じられる言葉遣いを含む表現
・上半身裸の場面や入浴シーンなどの描写(過度なものではありません)
以上の点をご理解いただいたうえで、閲覧は自己責任にてお願いいたします。
苦手な要素がある方は、無理をなさらず閲覧をお控えください。
第一話 ドミニカの大砲
潮風の匂いと、カクテル光線のジーンという音がいつもより異様に感じられる、東京ベイ・マリンスタジアム。
東京ベイ・ファイアバーナーズの監督は、溜息混じりに新しい選手を紹介した。
「今日から新しい仲間だ。ドミニカのデロスサントス。……彼には早速、明日の試合から4番を任せる」
その瞬間、ベンチがざわめく。
4番……ってことは、5番のボクのすぐ近くに、彼が座るってことか?
ボクは思わず自分の背番号を見つめた。
偉大な4番の打席を待つというプレッシャーに、思わず背筋が伸びた。
練習中、ベンチの隣にはその「新しい4番」が座っていた。
「……えっと、なんて話しかけよう」
重音は野球用語の入った小さなお手製の単語帳を握りしめ、言葉を探してモジモジと呟いていた。
ボクがメキシコ派遣のたびに、現地のチームメイトから教わった言葉をノートの切れ端や裏紙にメモして、ホッチキスで止めただけのボロボロの単語帳だ。
ボクがチキっているうちに、デロスサントスがふらりと立ち上がり、打席へと向かった。
次の瞬間、球場が静まり返る。
デロスサントスの放った打球は、海からの逆風を切り裂き、東京ベイの低い空を真っ二つにしてフェンスを越えていった。
ホームランだ。
フェンスを越えていった打球は、球場の外まで消えた。
スタジアム全体が、一瞬の静寂のあと、地鳴りのような歓声に包まれる
「おお……すげえ……」
「こりゃあ、キャッチフレーズは『ドミニカの大砲』で決まりだな」
チームメートはもちろん、監督も皆が固唾を呑んで空を見上げていた。
あまりの技術に、ボクは言葉を失い、ベンチに戻ってきた彼を追いかけた。
「今の打球、すごく……君は実に凄いね!」
しかし、デロスサントスは無言のまま、ただ少しだけ肩をすくめた。
……あれ? もしかして日本語が通じてない?
ボクは困惑したが、手に持っているお手製の単語帳を見て瞬時に思い出した。
……彼の出身はドミニカ共和国。
ドミニカ。スペイン語圏の国で、野球の王国でもある。
同じスペイン語圏のメキシコで、何度も派遣されて野球をしてきたボクなら……きっと話せる、と思って単語帳を持ってきたのに。
すぐに忘れてしまうとは、ボクは実に馬鹿だな。
ボクは息を吸い込み、記憶の奥底から引き出したスペイン語を紡いだ。
「¡Eres realmente increíble!」
その言葉を聞いた瞬間、デロスサントスの硬かった表情が、驚きと安堵で崩れた。
「¡…! Hola, hermano…¿tú también eres dominicano?」
「¡Eso es! ¡Yo tambiénsoy dominicano y… un momento, ¡qué tontería! ¡Soy un bateador designado de treinta años, nacido, criado y con nacionalidad japonesa!」
「Ah, qué lástima. ¡Pero hablas español muy bien!」
「No es para tanto…」
彼は初めて、ボクに向かってクシャリと笑った。
デロスサントスとスペイン語で笑い合ったのも束の間、ベンチの端から中原の声が飛んだ。
「重音さん!ネクストですよ!準備して!」
「お、おう!わかってるよ!」
ボクは張り切って打席に向かった。
デロトサントスという後輩に、先輩としてのいいところを見せてやらないと……!
相手投手が放った外角低めに逃げるスライダーに、体勢を崩されて空振り。
「何やってんだ重音!帰れ!」
監督の厳しい声が響き、ボクは魂が抜けたような顔でベンチへ戻った。
すると、ほぼ死にかけているボクの隣から、クックック、と喉を鳴らす低い笑い声が聞こえる。
見ればデロスサントスが、肩を震わせて爆笑していた。
「……なんだよ君は!人の不幸は蜜の味ってか!?」
ボクが思わずムキになって日本語で怒ると、デロスはさらに楽しげに、「¡Tranquilo, amigo! ¡Ya saldrá la próxima!」と、スペイン語で何かを言い、ボクの肩をポンと叩いた。