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外側だけの仮面

1 - いい子の仮面

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2025年09月27日

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――私のことを、みんなは「いい子」だと言う。
 笑顔を絶やさず、困っている人には声をかけ、先生や先輩の頼みごとは断らない。そういう私を、みんなは「優しい」と言う。

 でも私は知っている。

 それは私自身の心から出ているものじゃない。ただ「そうしなければ、誰からも嫌われるから」やっているだけの、作り物の優しさだということを。

 私は小さい頃から、親に「可愛いね、良い子だね」と言われて育った。親戚に会えば「おとなしくて、気がきいて、親孝行な子だ」と褒められた。私は「そうしなければならない」と思い込んだ。

 本当は甘えたかったし、ワガママだって言いたかった。けれど、もしそれを口にしたら「がっかりした」と言われる気がして、怖かった。

 だから私はずっと「いい子」でいるしかなかった。

 そのうちに、友達からも「頼れる子」「優しい子」と見られるようになり、周囲の期待を裏切れなくなった。嫌だと言えない。助けを求められれば応じる。笑顔を浮かべ続ける。

 でも心の奥では、ずっとひとりだった。

 夜、自分の部屋に戻ったとき。

 笑顔も、言葉も、全部剥がれ落ちて、私はただ天井を見つめる。

 「私って、誰なんだろう」

 そう呟いても、返ってくるのは静寂だけ。

 教室の中で笑っていても、みんなの輪にいるのに、私は透明な存在のように感じる。彼らが求めているのは「私」という人間ではなく、「優しい役割」なのだと気づいてしまったから。

 ――居場所なんて、どこにもない。

 そう思うようになったのは、いつからだろう。

 朝、制服に袖を通すとき。鏡に映る自分の顔に「可愛いね」と誰かが言ってくれる。でもそれは、私自身ではなく、ただの外側に向けられた言葉。

 私は「可愛い顔のいい子」という仮面をかぶり、今日も学校へ行く。

 バイト先でも同じだ。

 「〇〇ちゃんってほんと優しいね」

 「やっぱり頼りになるなあ」

 私は笑顔で「そんなことないですよ」と返す。

 だけど心の中で、冷たく笑っている。――どうせ誰も、本当の私なんか知らない。

 スマホの画面に、SNSの通知がいくつも光る。

 「ありがとう!」

 「さすが〇〇!」

 そんな言葉が並んでいても、胸の中は少しも温かくならない。

 「ねえ、私のことを、本当に見てくれる人はいるの?」

 問いかけても、誰も答えてくれない。

 私はずっと、ひとりぼっちだった。

 「優しい子」という檻の中に閉じ込められて。

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