コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私
にとっての世界とは、彼女だったのだ。
私が彼女を想うとき、いつもそこには青い空があった。
この世で一番美しいものは、 彼女が愛していた海の色だと思っていた。
それは間違いではなかったけれど。
今はもうない青。
彼女は海の色と同じ瞳をしている。
それなのに今、こんなにも苦しい。
どうして?……
私は、彼女が好きだった。
誰よりも好きだった。
あの日見た夕陽よりも眩しくて、 あの日の空のように遠い。
そんな空を見上げているうちに、 少しずつ気持ちが落ち着く。
今はただ、見守ろう。
いつか、届くまで。
いつか、彼女が笑顔になるまで。
いつの間にか眠っていたらしい。
目を覚ましたら、まだ夜明け前だった。
ベッドの上に座り込み、ぼんやりと窓の外を見る。
遠くに見える山々の向こう側から、ゆっくりと光が広がっていくところだ。
いつも見ているはずの光景なのに、今日は何だかとても綺麗に見えた。
それはきっと、今朝が特別だからなんだと思う。
だって、こんなにも優しい光に包まれた朝の景色なんて、今まで一度もなかったんだもん。
しばらくすると、外は完全に明るくなった。