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わたくしにはずっと引っかかっていることがあります。

犯人はなぜ、この様なことを行なったのか。

一つ。盗んだものが、厳重に保管されている神器だということ。

二つ。それを何故、タクマ様の部屋へと隠したのか。

二つ目に関しては、私なりに考察があります。

犯人の目的は勇者を犯人にすること。

そう考えると、勇者パーティの誰かくらいしか盗むことが出来そうもない神器を狙った理由にも結びつきます。

犯行の難易度と、それを隠した場所から、誰がどう見てもタクマ様の犯行としたかった。

しかしそれだと、以前から私が重要視している動機がわからなくなるのです。

タクマ様は皆の英雄です。

それに嫉妬してという線も考えられますが、その様な人が周りにいなく、いたとしてもそんな器の小さな人に今回の犯行が出来るとは思えません。

私はずっと引っかかっています。

何か見落としていると。



「ナナリー。其方そなたには悪いが、タクマとの今後は無かったことになるだろう」

いくら尖塔から出ることが許されたからといっても、それは勇者パーティの皆様が力尽くの説得をしたから。

未だ嫌疑は晴れていません。

「仕方ないかと。私の身は国民の皆様の努力の上で維持されています。

国の方針がそうである以上、甘んじて受け入れます」

いつもの夕食の席。

そこに久しぶりにお父様が現れたかと思えば、そんなことを。

私が調査をしているのは、タクマ様とどうしても婚姻したいという我儘からではないのです。

純粋に、あの方に降りかかる理不尽を払拭したいから。その気持ち一つが、私の原動力です。

それは勇者パーティの皆様とおな……?

何でしょう…何か違和感が……

「済まない。父として娘の婚姻は、娘の心と考えを最優先にしたいと、常々思っていた。

だが、王として、それを認められなくなってしまったのだ」

「大丈夫ですわ。お父様。お父様のお気持ちはしかと胸にあります。

私も王族の端くれ。幼少の頃より、国の為に婚姻する日が来ることを覚悟しています。

そのお相手がタクマ様という、素晴らしいお方だったのは、望外の喜びでした」

「そうであるな……二人が城の花を仲睦まじく手入れしている姿は、何度も見た。あの光景は、国の豊かで明るい未来を想像させたものだ」

「なっ!!?見ておられたのですかっ!!?」

「はははっ!済まんな。だが、見ていたのは余だけではないのだ。皆が二人の未来を見つめておったぞ?」

恥ずかしい……

嫁入り前の女性が、年頃の男性と作業をしている姿を見られていたなんて……

っ!!!

「お父様」

「なんだ?」

「漸く知りたかったことがわかりました」

「?」

お父様は何の話か理解できないご様子。

「お父様のお陰です。こんな単純なことだったとは…」

「なんだ?……もしや、犯人が?」

「はい。やっと探していた動機がわかりました。犯人も恐らく」

証拠はありません。そんなものを残す人ではないですし、何とでも出来たでしょう。

「で、では!すぐにでも皆に!」

「いえ。それは駄目です。その場には私達と勇者パーティの方々のみで」

「何故だ?余は兎も角、ナタリーを危険に晒すマネは許容しかねるぞ?」

やはり陛下はお父様です。

その目では真実に辿り着けないでしょう。

何も知らないのですから。

「ご安心を。犯人は誰も傷つけたくないのです。その為に今回の犯行を」

「…?意味がわからんのだが?」

「お父様。私を信じてください。不出来な娘ですが、責任の一端は私にあるのです」

「…ナタリーに責がある?益々わからんが…わかった。余は父としても、王としても、娘である姫を信じておる」

良かったです。

わかってしまえば、誰も犯人を見つけたくないのです。

私も、その方に申し訳なく思います。

全て、人を想えばこそ。

私の責任は事実を公にすることではなく、それを受け止めることでした。

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