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第17話 最後の約束
「……あそこ」
静佳が窓の外を指差した。
全員が一斉に振り返る。
――けれど。
「……いない」
さとみが窓を開ける。
道路の向こうには、もう誰もいなかった。
「消えた……?」
ころんが呟く。
「いや」
蓮が窓の外を見る。
「逃げたんじゃない」
「え?」
「最初から、見られてることを知らせるために立ってたんだと思う」
「……」
湊音が静佳を見る。
静佳は、少しだけ震えていた。
「怖い?」
「……うん」
「そっか」
湊音が静佳の隣に立つ。
「じゃあ、今日は俺も怖いって言う」
「……え?」
「俺も怖い」
湊音は笑った。
「だから、一緒にいよう」
「……うん」
静佳も頷いた。
***
その日の夜。
心音、おさでい、蓮、そして二人の母親が集まっていた。
「もう、隠しておけません」
静佳の母親が言う。
「12年前のことを、全部話します」
湊音と静佳もそこにいた。
「……」
二人は黙って聞いている。
「12年前」
湊音の母親が話し始める。
「蓮くんのお父さんは、ある人物を追っていました」
「その人物が、あなたたち三人に近づこうとしていた」
「理由は分からなかった」
「だから私たちは、三人を離すことにした」
「……でも」
#琉歌の部屋
#STPRBL
#STPR様
#専用部屋という字読めますか?平仮名にするねせんようべや
静佳が聞く。
「なんで私と湊音まで離す必要があったの?」
「あなたたちが三人でいること自体が、相手にとって都合が悪かったからです」
「……」
「そして、あの日」
「相手は公園に現れた」
湊音が拳を握る。
「じゃあ、俺が事故に遭ったのは……」
「完全な事故ではありませんでした」
「……」
静佳の目に涙が浮かぶ。
「でも」
母親がすぐに続ける。
「湊音が静佳を助けたことだけは、誰にも予想できなかった」
「……」
「あなたは自分の意思で静佳を助けたのよ」
「だから」
湊音の母親が優しく笑う。
「あなたは何も悪くない」
「……うん」
湊音は小さく頷いた。
***
「じゃあ、蓮は?」
静佳が聞く。
「どうして一人だけ、もっと遠くに行ったの?」
蓮が答えた。
「俺の父さんが、俺を連れて逃げたんだ」
「……」
「でも」
蓮は二人を見る。
「俺はずっと戻りたかった」
「……蓮くん」
「何度も手紙を書いた」
「でも送れなかった」
「どうして?」
「二人を巻き込むのが怖かったから」
蓮は俯いた。
「だから、ずっと待ってた」
「二人が自分で真実を知れる日を」
静佳が涙を拭う。
「……遅いよ」
「うん」
「もっと早く会いたかった」
「……俺も」
静佳は少し笑った。
「じゃあ、今から取り戻せばいい」
「……え?」
「12年分」
湊音が笑う。
「三人分、いっぱい遊ぼうぜ」
蓮の目が潤む。
「……うん」
***
しかし。
まだ一つだけ。
解決していない問題があった。
青い腕時計の人物。
その夜。
蓮の父親から連絡が入った。
『もう大丈夫だ』
「……?」
蓮がスマホを見る。
『あの人物は、こちらで特定した』
『もう君たちに近づくことはない』
蓮がほっと息を吐く。
「……よかった」
ところが。
その直後。
別のメッセージが届いた。
『ただし――』
『一つだけ、気になることがある』
『青い腕時計をしていた人物は、本人ではなかった』
「……え?」
蓮の顔が固まる。
『誰かが、わざと同じ腕時計を使っている』
『つまり――』
『本当の人物は、まだ分かっていない』
「……!」
蓮はすぐに湊音へ電話をかけた。
しかし。
出ない。
静佳にも。
出ない。
「……まさか」
***
翌朝。
事務所。
「おはよー!」
湊音が元気に入ってくる。
「おはよう」
静佳も続く。
「……」
蓮は二人を見る。
「昨日、変なことなかった?」
「ないよ?」
湊音が首を傾げる。
「静佳は?」
「私もない」
「本当に?」
「うん」
蓮は少し安心する。
――その時。
「静佳!」
莉犬が駆けてくる。
「これ、落としたよ」
「え?」
渡されたのは、小さなキーホルダー。
「……これ」
静佳の顔が変わる。
「それ、昨日持ってなかったよね?」
心音が聞く。
「……うん」
静佳はキーホルダーを裏返す。
そこには。
小さな文字。
『約束を思い出して』
「……!」
湊音が奪うように見る。
「これ……」
蓮も見る。
そして。
顔色を変えた。
「……これ、俺たち三人しか知らない言葉だ」
「え?」
「昔、三人で作った合言葉」
「……」
静佳が記憶を探る。
『もし離れ離れになっても――』
『この言葉を見たら、必ず集まる』
「……」
静佳の目が大きくなる。
「『約束を思い出して』」
「うん」
蓮が頷く。
「それを知ってるのは……」
「私たち三人だけ」
湊音が呟く。
「……じゃあ」
三人は顔を見合わせた。
「誰が置いたの?」
***
その日の午後。
三人は、昔の公園へ向かった。
「ここだよな」
湊音が辺りを見る。
「うん」
静佳が頷く。
蓮は、古い木の下で立ち止まった。
「……ここ」
「何?」
「昔、三人で秘密基地にしてた」
木の根元。
そこには、古い小さな箱が埋められていた。
「……え?」
湊音が驚く。
「これ、まだあったんだ」
蓮が掘り出す。
蓋を開ける。
中には――
三人の小さな写真。
三つのキーホルダー。
そして。
一枚の紙。
静佳が読む。
『もし、この箱を大きくなった三人が見つけたら。
その時は、もう誰にも離されないで。
ずっと友達でいて。』
静佳は黙った。
湊音も。
蓮も。
三人で、その紙を見る。
「……約束」
静佳が小指を出す。
「うん」
湊音も小指を絡める。
蓮も重ねる。
「絶対」
三人で笑う。
その瞬間――
「……!」
蓮が顔を上げた。
公園の入口。
誰かが立っている。
青い腕時計。
「……!」
「蓮?」
「二人、下がって」
「え?」
「早く!」
三人が振り返る。
しかし。
その人物は、逃げなかった。
むしろ――
ゆっくり近づいてくる。
「……」
そして。
帽子を取った。
「……え?」
湊音が目を見開く。
静佳も。
蓮も。
「……父さん?」
そこに立っていたのは――
蓮の父親だった。
「驚かせてすまない」
「青い腕時計……」
静佳が呟く。
蓮の父親は自分の腕を見る。
「これか?」
「……!」
「これは、私が昔から身につけているものだ」
「じゃあ……」
湊音が聞く。
「12年前、公園にいたのも……?」
蓮の父親は静かに頷いた。
「私だ」
「……!」
空気が止まる。
「でも」
蓮の父親は続けた。
「私は、あなたたちを傷つけるためにいたんじゃない」
「じゃあ、何のために?」
静佳が聞く。
「守るためだ」
「……」
「事故を起こした人物は、私ではない」
「私が到着した時には、すでに事が起きていた」
「だから――」
彼は三人を見る。
「私はあなたたちを離れ離れにする決断をした」
「二度と狙われないように」
静佳は唇を噛む。
「……でも」
「はい」
「私たち、ずっと寂しかった」
「……」
「それでも、守ってくれたんだよね?」
「ああ」
「じゃあ……」
静佳は涙を拭う。
「ありがとう」
蓮の父親が驚いたように目を見開く。
「……ありがとう、ございます」
湊音も頭を下げる。
蓮も。
しばらくして。
蓮の父親は笑った。
「……三人とも、本当に大きくなったな」
***
そして。
12年前から続いていた秘密は――
ようやく終わりを迎えた。
事務所に戻ると。
「おかえりー!」
「どうだった!?」
「全部解決した!?」
みんなが一斉に集まってくる。
湊音が笑う。
「うん!」
静佳も笑う。
「もう大丈夫」
蓮も頷いた。
「……ありがとう」
ころんが首を傾げる。
「何が?」
「全部」
蓮が笑う。
「俺がいなかった12年間の分まで、今から一緒に過ごしてくれるんだろ?」
「当たり前じゃん!」
莉犬が笑う。
「もう仲間でしょ?」
「……!」
蓮の目が潤む。
「……うん」
「泣くなよー!」
湊音が笑う。
「泣いてない!」
「泣いてるじゃん!」
「うるさい!」
三人が笑う。
その光景を見て――
静佳の母親も。
湊音の母親も。
心音も。
おさでいも。
静かに笑っていた。
***
そして数日後。
夕方の公園。
湊音。
静佳。
蓮。
三人で並んで歩いていた。
「ねえ」
静佳が言う。
「何?」
「私たち、12年前に約束したよね」
「うん」
「大人になっても、ずっと友達って」
「した」
「じゃあ」
静佳が笑う。
「今度は、ちゃんと守ろう」
湊音が手を差し出す。
「もちろん」
蓮も手を重ねる。
「絶対」
三人の小指が、もう一度絡まる。
「約束」
――12年前。
離れ離れになった三人。
12年後。
もう一度、同じ場所で出会った。
そして今度は――
誰にも引き離されない。
***
その日の夜。
事務所では、いつものように大騒ぎ。
「湊音、走るなー!」
「待ってー!」
「静佳! 危ない!」
「大丈夫!」
「それ禁止!」
「……あ」
「言った!」
「もう!」
笑い声が響く。
心音が静佳を見て笑う。
おさでいが湊音を見て笑う。
そして蓮も、その輪の中で笑っている。
12年前は三人だった。
今は――
もっとたくさんの仲間がいる。
血の繋がった家族。
幼馴染。
新しくできた仲間。
そして、帰れる場所。
静佳はみんなを見渡して。
小さく呟いた。
「……ここ、好き」
「ん?」
莉犬が聞き返す。
「なんでもない」
静佳は笑った。
「……大好きって言ったの」
「え?」
「聞こえてたでしょ!」
「聞こえてない!」
「もう!」
みんなが笑う。
そして湊音が叫ぶ。
「静佳ー! こっち来て!」
「今行く!」
静佳が走り出す。
その後ろから蓮も走る。
「待ってよ!」
「蓮遅い!」
「二人が速いんだよ!」
「ほら、静佳!」
「うん!」
三人が並ぶ。
夕焼けの中。
12年前と同じように――
三人の笑い声が響いていた。
――END……?
……ではなく。
机の上に置かれた一枚の写真。
そこには。
三人の姿と、みんなの笑顔。
そして写真の端に、小さく書かれていた。
『これからが、本当の始まり。』
――物語は、まだ終わらない。
コメント
3件
読んだ……!!😭💕✨ もう、第17話でこんなに泣かされると思ってなかったよ…! “12年分を取り戻す”って湊音のセリフと、蓮が「戻りたかった」って本音を言えたシーン、静佳の「大好き」の呟き…全部エモすぎて心臓ぎゅってなった!! 最後の写真と「これからが本当の始まり」も、続きが気になりすぎる…!! 三人の笑顔がずっと続きますようにって心から思えるお話でした🌸 素敵な作品をありがとうございます!!