テラーノベル
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み お .
顔を洗うため、縋るように駆け込んだ男子トイレの鏡には
どう見ても格好の悪い、無様な自分の姿が映し出されていた。
顔が大きく腫れ上がっているような、致命的な傷こそ幸いにもなかった。
だが、冷水でどれだけ濯ごうとも
鏡の中の男の顔はひどく青白く、唇の端からは未だに生々しい赤が滲んでいる。
制服の白いカッターシャツには飛び散った茅野の、あるいは俺自身の血痕が斑点のように付着し
スラックスは床に激突した際の埃まみれで、見る影もなく皺くちゃに寄り集まっていた。
それでも俺は、痛む顎を押さえ
ハンカチを水で濡らして必死に血の汚れを拭いながら、一途に思った。
とにかく、少しでも清潔な状態にして、宇佐美のことを待つしかないんだ。
ここで身だしなみを理由に逃げ出すわけにはいかない。
今日のこの機会を逃し、彼に対する誤解を晴らすことができなければ───
俺はきっと、一生消えない後悔を背負って生きていくことになるだろうから。
その後
軋む全身の痛みに耐えながら、なんとか自分の教室へと戻った。
乱闘の凄まじさを物語るように、床には割れた蛍光灯の鋭利な破片が散らばっている。
それを慎重に避けながら、俺は一番奥の窓際の席へと腰を下ろした。
陽はすでに西の空へと大きく傾き、教室の中を狂おしいほどの茜色に染め上げている。
開け放たれた窓からは、遠くグラウンドで行われている部活動の
活気のある掛け声や、ホイッスルの音がかすかに響いてくる。
そのあまりにも平和な日常の音が、今の俺の張り詰めた孤独をさらに際立たせていた。
30分──。
1時間──。
時間がただ、無情に、残酷に過ぎていく。
ついに午後六時を告げる、下校を促す校内チャイムが静かに鳴り響いた。
これで、生徒たちの大半が完全に帰路についたことになる。
残された校舎は静まり返り、冷え切った空気だけが廊下を支配していた。
(やっぱり、来てくれないよな…あんな酷いことを言った奴の言葉なんて、信じられるはずが…)
諦めと絶望が胸を支配し、小さく息を吐き出した、そのときだった。
静寂に包まれた廊下の奥から
ペタペタと、聞き覚えのある少し遠慮がちな足音が近づいてくるのが聞こえた。
心臓が、ドクンと大きく跳ね上がる。
次の瞬間、静まり返った教室の扉が、ガラっと大きな音を立てて開かれた。
「せ、先輩……!」
弾かれたように振り向くと
そこに立っていたのは、紛れもない宇佐美だった。
夕日に照らされた彼の瞳には、あからさまで、隠しようのない驚愕の色が浮かんでいた。
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