紫くんメイン
恐怖症系のお話です
捉え方によっては紫嫌われだと感じる方もいるかもしれません
苦手な方は直ちに読むのを止めてください
・誤字脱字等はスルーして頂けると幸いです🙇🏻♀️⸒⸒
・何日間かに分けて書いているので、文章が曖昧な部分が多数あるかと思いますがご了承ください
自衛済みの方、以上を守れる方のみスタート
桃 side _
俺の長男は小さい頃からあまり体調が優れていないらしい。
らしいと言うのも、俺らは紫ーくんの症状を見たことがないため、あまり信じていないというのが本音だった。
日中はリビングにいることが多いが、夜は不必要なこと以外、部屋にずっといるようだった。
そのため、日中での家事は紫ーくん、夜の家事は赤が担当するのが我が家のルールとなった。
赤がバイトで遅くなる時は俺や青、橙や黄が分担して行うようにしようという規則だ。
母は俺らを産んだ2ヶ月後に交通事故で他界。
父は今のままじゃ経済的に家庭が危ないということで、現在隣町で一人暮らしをしながら大企業の社長として働いていた。
長男がまともに動けない中、家庭を築こうと言っても、到底無理な話だ。
ただでさえ食費や家賃で精一杯だと言うのに、更に学費、給食代等まで行くと、あまり手が届きそうにない。
だから、俺や赤は行きたかった大学を諦めて、
今ではバイトを掛け持ちしたりして、補っている。
ただ、最近弟らの中で疑問として上がっているのは、
何故次男と三男は一生懸命家族のために働いているというのに、長男は何もしていないのかということだった。
俺も1度そういう疑問が浮かび上がった事はある。
ただ、紫ーくんも体調が悪いのかなとか、忙しいのかなとか考えると、そういう疑問もすぐ消え去ってしまっていた。
けど、弟からは
『体調が悪そうには見えない』
『仮病を使っているのではないか』
などと言った声が上がっていた。
俺は”紫ーくんにも何か事情があるのではないか”と言おうとしたが、
紫ーくんの事情を何も知らない俺が、色々と言ってはいけないのではないかと思い、話せずにいた。
とりあえず赤がもうすぐ帰ってくるため、俺は”今日はここまでにしよう”と、話を無理矢理切り上げた。
青はまだどこか不満に思っているみたいで、
少し口を尖らせながら部屋に戻って行った。
俺はその場から立ち上がって、キッチンへと向かう。
スープが入った鍋に火をつけている間に、今日のメインである生姜焼きをレンジで温める。
生姜焼きが入った皿を机に置いた時に、玄関の方から聞き慣れた兄の声が耳に入る。
赤「ただいまー!」
桃「ん、おかえり」
赤「あれ、もう皆部屋に行っちゃった?」
桃「あー、青は行ったよ」
桃「橙と黄は多分お風呂」
赤「あー、了解」
赤「お、今日の夜ご飯は生姜焼き?」
上着を脱ぎながら、机に置いてある皿を覗き込む彼。
赤「ごめんねー、桃くんも忙しいのに、、」
桃「んー…俺は別に、」
忙しいというワードに対して、紫ーくんの顔が脳裏に浮かび上がる。
今まではこんなに紫ーくんのことを気にかけるなんてこと無かったのに、
現在では少し気を抜いていたら、スッと現れる彼の顔。
俺はそのことを変に思いながら、気を紛らわせようと
テレビを点ける。
「来週の日曜に開催される苺まつりでは──」
桃「….そういえば夏かぁ、」
赤「もう梅雨シーズンも終わったもんね、」
黄「っえ、夏祭りですか…!?!?」
桃「…うん、?」
お風呂から上がってきたばかりであろう姿の黄。
髪はまだ濡れたままで、軽くタオルで拭きながら
走ってきていた。
桃「せめて髪乾かしてから来い、笑」
黄「夏祭り行くんですか?」
俺のことはフル無視で、赤の方に身を乗り出す黄。
赤「んーー、でも俺も桃ちゃんも忙しいしなぁ…」
赤「..友達と行ってきたら、?」
黄「僕は皆と行きたいんです!!」
「ね、!橙にぃ..」
橙「えぇ、?まぁ…」
「紫ーくんとかも連れていきたいし、」
赤「….ビクッ」
その橙の発言に肩を震わせた赤。
少しだけ顔が青ざめているのが分かる。
赤「少なくとも兄ちゃんは行けないかなぁ、?笑」
若干笑い混じりに言う彼。
その声は震えていて、笑顔も崩れているのが分かる。
ただ、黄と橙はまだそのことに気づいていないようで、
残念そうに肩を落としながら、髪を乾かしに洗面所へと向かっていた。
桃「…..赤、?」
赤「ぁ、え…っ、」
赤「どしたの、笑 桃ちゃんももしかして夏祭り行きたかった..?笑」
桃「…..別に、?笑」
このことに気づいて欲しくなさそうな赤の表情を見て、今はあまり触れないでおこうと、少し濁し気味に返事をした。
昨日寝るのが遅かったせいか、目覚めはあまり良くなかった上に、時計を見るともう昼頃の時間だった。
ふと起き上がって上のベッドを見ると、珍しくただそこには少し乱れた布団があるだけで、
いつもの青の姿はなかった。
桃「…..おはよ、」
赤「っあ、おはよ…」
少し元気がない模様の赤。
原因はリビングにいる弟の話のようだった。
黄「っあ、桃にぃ…」
桃「なーんの話してんの、」
リビングには全員集合のようで、まだ日中だからか
紫ーくんも椅子に座っていた。
黄「毎年夏祭り….行けてないじゃないですか、」
だから今年こそは全員で行きたいなって、
皆で話してたところです!」
桃「….あー、」
昨日の赤の顔が頭に浮き出る。
あの不安そうな青ざめた顔。
紫ーくんをどうしても行かせたくない理由でも
あるのだろうか。
紫「俺はー…ちょっと作業とかもあるからな、ぁ..」
青「….また、?」
紫「…え?」
少しぽかんとしたような顔をした紫ーくん。
驚きながらも青の話をきちんと聞こうとしているところ
流石長男といった部分だろうか。
青「…この前だって、珍しく皆予定空いてたから
ショッピングモール行くっていう約束だったのに、」
青「…仮病とか使って行くの中止にするしさ、」
青「ほんとは僕達と行きたくないだけなんじゃないの、」
赤「っちょ、青──」
紫「そう….だよね、ごめんね..」
紫「今度こそ….ちゃんと兄弟揃って行こうね、」
消えそうな心地の悪い表情と微笑む紫ーくん。
そう言った紫ーくんの肩は若干震えていた。
何か紫ーくんにも理由があるのは分かっているのに、
心のどこかで青に少し共感してしまっている自分がいる。
いつもお出かけを中止にする原因は、紫ーくんだった。
けれど、そのお出かけに行く予定だった日、彼は何も忙しい雰囲気などは全く無く、いつも通りリビングでテレビを見ていたりという状況だった。
仮病だと思ってもいいのではないかというぐらい、
皆を惑わす程には材料が揃っていた。
そう思ってしまうのも無理はない。
結局あの後、空気が重いまま、それぞれ各部屋に戻ったりしていつものように過ごしていた。
皆部屋に戻っていく中、俺と赤はキッチンで今日の昼食の準備をしていた。
本当は紫ーくんの担当だが、ついさっき体調を崩してしまったようで、代わって赤と俺が作ることになったのだ。
赤の話によると、いつも紫ーくんが体調を崩すのは
いつも夕方から夜にかけての時間帯だから、
こんな昼間から具合を悪くするのは初めてだという。
ということは、紫ーくんの体調が優れていない所を
赤は見たことがあるのだろうか。
先程青が紫ーくんに対して色々発していた時、
赤はずっと俯いていた。
今だって、包丁を使っている危ない時というのにも関わらず、野菜を切る手が止まっている。
俺が赤の肩を叩いたり、呼びかけたりしないと
野菜を切る手が動くことは無い。
本当に危なっかしい奴。
できるなら今すぐにでも紫ーくんに
交代して欲しいぐらいだった。
けど、俺と赤、紫ーくん以外にまともに料理出来る人がいないから、
少し赤の方に目を向けながら、俺は自分の作業に取り掛かった。
ドンッ…
桃「っ、…?」
赤「ッ…ビクッ」
途端に2階から鈍い音が響く。
今1階に居るのは、俺と赤、部屋には橙がいるから集中出来ないと言ってリビングで勉強し始めた黄の3人。
黄も目を見開いてこちらの方を不安そうに見ている。
ドタドタッ …
と、大きな音を立てて階段から青が降りてくる。
青「にぃっ….ッちゃ、ん..!!」
声を荒らげて俺らの元へ走ってくる。
青「紫にぃッ….が、!!」
桃「…紫にぃ、?」
恐らく青の慌ただしさを見る限り、
あの音の張本人は紫ーくんだろう。
青に連れられてやってきたのは、階段を上がってから奥に見える紫ーくんの部屋。
そこは扉が微かに開いていて、近づいて行く度に
紫ーくんの激しい呼吸音と橙の声が聞こえる。
俺は状況を何となく察し、紫ーくんの元へと走る。
部屋には、橙の焦った声と青ざめた顔
その少し奥に紫ーくんが血の気の引いた顔をして横たわっていた。
橙「紫ーくッ…っ、紫ーくんっ..!!」
正直、何をしてあげたらいいか分からない。
とりあえず背中を擦ろうと思い、紫ーくんの方に
ゆっくりと近づいた。
紫「ッ…ビクッ、」
少し肩を震わせて、俺の方を怯えた目で見ている。
紫「ッや、…っ、」
紫「やだ、ッ…っ、!!」
急に口を開いたかと思えば、はっきり「嫌だ」という言葉を発した。
赤「….兄ちゃん、!!」
いつの間にいたのだろう。
部屋の入口には、何か白い箱を持った赤が
立っていた。
赤「兄ちゃん、俺…赤だよ、聞こえる、..?」
紫「ッ…っ、ぁ…コクッ」
赤「兄ちゃん息吸い過ぎ、」
赤「..もっと吐くことに集中して、」
紫「ッ..っは、ッ..ぁ”、っ..ゴホッ」
紫「…はぁっ、ッは、..ふぅ..っ、」
赤「….まだ安定してないね、」
赤「これ、吸える..?」
そう言って、赤はホースに繋がれたマウスピースを
紫ーくんの口元に当てた。
紫「ッ…っはぁ…すぅ、」
紫「っけほッ…ぁ、ッふぅ…」
俺と赤以外の俺含め4人は、部屋の入口辺りで棒立ち。
赤の手馴れている様子に驚いたのもあるが、
それよりも紫ーくんの突然の症状に吃驚したのだろう。
紫「ッふぅ……はぁ、」
紫「ごめんね、驚かせちゃったかな…笑」
と、ヘラヘラと笑って申し訳なさそうに謝る紫ーくん。
青「…..何でそんな笑ってんの、」
最初に口を開いたのは青。
そのことには紫ーくんも吃驚してるみたいで、
目を見開いたまま青の方を見ていた。
青「何、意味分かんないんだけど。」
青「もしこの場に誰もいなかったらどうするつもりだったわけ?」
スラスラと青の喉を通って出てくる
紫ーくんに対しての文句。
赤「ちょ、青、…っ」
流石にこれはいけないと思ったのか、
赤が間に割って入ろうとする。
青「ッ…それに、..っ──」
赤「…っ青、..ッ!!!」
青「….ッビクッ」
赤「それ以上はやめて、」
赤「紫ーくんのこと、見えないの?」
青が慌てて顔を上げると、目の前には
下唇を噛んで、肩が震えている紫ーくんの姿が。
青は「意味分かんない」と言い放って、部屋を出ていった。
紫「ごめんね、皆…集めちゃって、」
紫「桃くん達とか…料理の途中だったよね、」
紫「俺のことは気にしなくていいから、」
紫「全部青ちゃんが言った通りだと思うし…」
この人はどれだけお人好しなのだろうか。
青もあれだけ言ってたから、紫ーくん自身も結構傷ついているはずなのに、相手を傷つけるような言い方はしなかった。
どれだけ言われても、言い返さず耐えるだけ。
青が最後に言い放った言葉は、このような意味も
含まれた ‘ 言葉 ’ だったのだろうか。
俺には幾ら考えても分からないだろう。
暫く経って、皆各自部屋に戻っていった頃。
俺、紫ーくん、黄の3人がリビングのソファーに座っていた。
特に何か話をしていた訳でもなく、
ただ透けた空気が流れているだけだった。
俺も初め、部屋に戻ろうとしていたが、
青が部屋に鍵を閉めてしまっていて、声をかけても反応が無かったため、
リビングで過ごしざるを得ない状況だった。
きっと、青なりに反省しているのだろう。
それはちゃんと紫ーくんにも伝わっているようで、
2階をじっと心配したような目で眺めていた。
今ではさっきの辛そうな表情とは正反対に、皆成長したんだなぁ、なんて訳の分からないことを言っている。
黄も紫ーくんの方を見て、ぽかんとしたような顔をしていた。
と、そこで赤が2階から降りてきた。
すぐ傍には、涙でぐちゃぐちゃの顔をしている青が。
青「ッ…ごめ”、なさ”..ッ、ぃ”…」
ゆっくりと紫ーくんの元に歩いてきて、
俯いたまま謝った。
そのガラガラな声からは、どれだけ泣いたのかと
思うほど酷かった。
紫ーくんは一瞬驚いたような表情をしたが、
すぐにいつもの笑顔に戻り、温かい大きな手で
青の頭を撫でた。
青「う、ぅッ…っ、グスッ」
と、撫でられた瞬間に、青の瞳からは
さっきの倍ほどの涙が流れてきた。
紫「ぅえ、っ…ちょ、..ッ!?」
慌てた様子で青の顔を覗く紫ーくん。
…まぁ、あんな優しい手で撫でられたら
誰でも大号泣だろう、
それを自覚していない紫ーくんは、もう大慌て。
その他の皆は、青に共感したような表情で
2人のことを見つめていた。
紫「….橙くんが来たら、お話をしようか、」
その瞬間、空気が一変し、不穏な空気が漂う。
きっと、皆も話を聞くのは怖いだろう。
でも、紫ーくんの疲れを減らしたい、これから兄弟として過ごすためにちゃんと知っておきたい、という思いは皆同じだから、
怖くても、聞きたくなくても、
絶対これから先向き合わなくてはいけないことだろう。
そのことを皆分かった上での話だから、
目を背けられないのだと思う。
ここにいる赤と紫ーくんを除いた4人が、
きっとそう思っていることだろう。
それから数分後、橙が階段を降りてきた。
橙もこの空気を察したのか、近くの椅子に座って
じっと紫ーくんの方を見ていた。
紫「じゃあ….話そうか、」
紫ーくんが口を開いた直後、皆が唾を呑んだ音と
俺の煩い心臓の音が耳のすぐ傍で響いた。
___
紫ーくんから聞いた話は、想像以上の出来事だった。
当時、紫ーくんが6歳、赤が4歳だった時の話。
俺はまだ1歳で、母方の祖母に預けられていた。
まだ母が生きている時だった。
父、母、紫、赤の4人で地域の夏祭りに来ていた。
夏祭りが行われた所一帯は、人が多く集まっていた。
皆、逸(はぐ)れないように必死で、屋台や花火など
見てる暇がなかった。
手を繋いで歩くのも精一杯だという状況で、
ある広場で事件が起こった。
紫ーくんの隣にいた人が刺された。
世間でいう通り魔だ。
真隣にいた人が刺され、その血は紫ーくんの頬に
付着したということだった。
案の定、その人を刺した犯人は逃亡。
辺りにいた警察官3人に捕らえられ、逮捕となった。
まだ幼かった頃の紫ーくんにとっては
酷いトラウマとなっただろう。
それ以来、紫ーくんは酷く夜を嫌うようになり、日中しか家を出ることの出来ないという状況になった。
その時、幸い赤は他の人で埋もれて、
見えない位置に居たらしい。
赤も、紫ーくんの症状を見るまでは、
その時のことを覚えていなかったみたいだった。
紫「ごめんね、皆夏祭りとか行きたかったはずなのに…」
紫「5人で行かせても良かったんだけどね、」
赤「だからだめだって、その間に兄ちゃんが過呼吸起こしたらどうすんの..。」
橙「じゃあ夏祭り作ろうや!」
と、ここで橙が爆弾発言。
皆目を丸くして、ぽかんとした顔をしている。
橙「室内で出来る、屋台とか!」
久々に橙のこんなきらきらとした目を見た気がした。
最近はテスト三昧で、皆と楽しいことをする機会がなかった。
と、長男も次男も、その橙の表情を見て
反対せざるを得ない感じだった。
赤「出来るとこだけ…..やってみるかぁ、?笑」
という橙の提案で始まった室内夏祭りの準備。
初めは皆、あまり賛成派ではないようだったが、準備を始めていくうちに、皆張り切っている様子だった。
その姿を遠目で眺める、兄ちゃんと紫ーくん。
紫ーくんも、自分が手伝える範囲は、きちんとやってくれているようで、
皆作業に熱中しているからか、想像以上の期間で
準備を終えることが出来た。
と、あっという間に開催当日になり、珍しく青や橙は、張り切っているのか、朝の5時起きだった。
本番は夜だからね?とか笑いながら、
紫ーくんと赤は、皆のことを傍で見守っていた。
あの出来事があってから、皆紫ーくんを取り合うような形になり、朝からまた青たちとゲームに誘われていた。
黄は、楽しみすぎて寝れなかったのか、現在昼の12時にも関わらず、まだぐっすりと眠っているようだった。
少し時間が空いて、青や橙も疲れてきた頃、
近くの椅子に座って、赤と紫ーくんの2人で、
何か会話をしていた。
聞こえてきた言葉は、赤の「いい弟を持ったね」
なんていう言葉だった。
きっと、弟皆のことを話しているんだろうな、
なんてそんな適当なことを考えながら、スマホを触る。
今日の夜は騒がしくなりそうだ。
コメント
5件
えめっちゃ好きです( ; ; )ブクマ失礼します💧ྀི
騒がしくなるのはエエものよ…
久しぶりー! 最高すぎ👍🏻数日かけて書いたとは思えないほどめっちゃ文章力高すぎた(?)