テラーノベル
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放課後の教室。黒板の下に西日が差し込んで、机がうっすら金色に染まってた。
の「はーい、じゃあ今日の勉強会の主催者はじゃぱさんってことで〜」
じゃ「え、俺?」
の「えとさんに教えてもらったくせに、まあまあドヤってたよ?」
じゃ「それは……教え方がうまかっただけで……」
私が笑うと、じゃっぴは一瞬こっちを見て、すぐに目線をそらした。
う「てか、えとさん、最近すげー
説明うまくない?頭いいのバレてきてるぞ」
え「いやいや、それ言ったらうりの方が応用力すごいでしょ」
う「褒められると調子乗るけど、褒めてくれるのえとだけだからな〜」
え「また〜、じゃっぴもよく褒めてくれるじゃん」
う「いや、あいつの褒めは雑。俺の方がポイント押さえて褒めてるから」
じゃ「おい、勝手に変な勝負すんなって」
じゃっぴが笑いながら言ったけど、
その声がほんの少しだけ低くて、
わたしはふと、気づかないふりをしてみた。
—
そのあと、みんなで一緒に帰る流れになったけど、
わたしは忘れ物を取りに一度教室に戻ることに。
そこに、ゆあんくんが後からふらっと入ってきた。
ゆ「……あ、えとさんまだいた」
え「うん、忘れ物」
ゆ「……ちょっとだけ、話してもいい?」
その声はいつもより静かで、
窓の向こうでは校庭の影がだんだん長くなってた。
ゆ「文化祭のときから、ちょっと思ってたんだけどさ。最近のえとさん、なんか…ちょっと違う」
え「え、なにそれ、悪い意味?」
ゆ「ううん、全然。むしろ、すごく楽しそうっていうか」
ゆ「だから…なんか見てると、うれしくなる」
え「……それ、すごくやさしい言い方だね」
ゆ「言い方っていうか、ほんとにそう思ってるから」
彼はそれ以上、何も言わずにカーテンの端を指でいじった。
わたしは「うん」とだけ返して、ちょっとだけ笑った。
—
帰り道、みんながコンビニに寄ってお菓子を選んでるとき。
う「えとさん、これ絶対好きそうじゃね?」
え「わ、チョコバナナクッキー!正解すぎる〜」
う「ふっふっふ、俺は記憶力のかたまりだからな」
じゃ「えとさんの好みメモってんの、うりだけだと思ってた?」
え「え、じゃっぴも覚えてたの?」
じゃ「うん。前に一緒にスーパー寄った時、これ見て“迷って結局買わなかったやつ”だったでしょ」
う「まって、こわ。なんでそんな記憶してんの」
じゃ「えとさんの話、結構覚えてるよ。…なんか、聞き逃したくないし」
それを聞いた瞬間、心臓がほんの少しだけど、早くなった気がした。
え「……そっか。うれしい」
—
夜。グループLINEに、のあさんからのメッセージ。
《来週、勉強会どこにする?》
う《カラオケもアリ》
じゃ《いや、それ勉強にならん》
ゆ《図書館は…静かすぎるか》
え《来週なら、わたしの家いけるよ》
の《行きたい!行きたい!》
その一言に、すぐスタンプがポンポン飛び交って、
また次の予定が決まっていく。
なんでもない日常が、すこしずつ、少しずつ、変わっていく気がして。
でも、誰もそれを焦ってはいなくて。
だから、今はこのままでいいのかも。
すこし近くなって、でもまだ名前の呼び方ひとつでドキドキする──
そんな、きらきらした放課後だった。
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