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#現代ダンジョン
夜鐘
997
#学園
大正
5,022
裏五条
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監獄ダンジョン・カルケルの中央制御室が存在していた場所で、何か焼け遺ったものはないかと捜索活動をしていた防衛部隊。
その指揮官を務める久坂剣友のもとに凶報がもたらされた。
状況を日引春香Aランク探索員と五楼京華上級監察官から聞いた久坂だったが、どうしても言わずにはいられない事があった。
「五楼の嬢ちゃんを疑う訳じゃないけどのぉ。そりゃあ、本当に間違いないんか? 六駆の小僧がやられたっちゅうんは、いくらなんでも想像できんで?」
『残念ですが、事実です。厳密に言えば逆神は倒された訳ではなく、不意を突かれて異界の門に押し込まれたため生存は確実です。ですが』
「なるほどのぉ。アトミルカが封印の処置を取った以上、こっちに戻って来るっちゅうんはいつになるか分かりゃあせん、と」
『ご理解が早くて助かります。久坂殿、大変心苦しいのですが……』
五楼が珍しく言葉を選ぶ。
当然である。
現状、逆神六駆と言う最強のカードを失い、アトミルカは大量の戦力を補充した。
その状態で、防衛部隊に「撤退せよ」と命令を出す事ができない事実は、五楼京華の胸を痛めていた。
「言わんでもええで。想像はしちょらんかったがのぉ。こうなる想定は一応しちょった訳じゃけぇ。ワシらに出来る事を、命がけギリギリ手前で頑張るだけじゃわい」
『申し訳ありません。こちらも、打てる手を全てかき集めているところですので。しばらくの間で結構です。どうにか現有戦力だけでアトミルカの相手を頼みます』
久坂は「了解じゃ」と答えて、通信を終えた。
「あー。なんちゅうたらええか。莉子の嬢ちゃん、冷静になってくれぇや」
久坂はまず、チーム莉子に配慮した。
彼女たちにとって逆神六駆の消失は相当にショッキングな出来事で、特にリーダーの莉子にとっては考えられない事態。
かと言って、ここでチーム莉子の士気まで消しては下策も下策。
これから始まる戦いで、チーム莉子は絶対に欠かせないパズルのピースなのだから。
「……そうですか。はい。じゃあ、六駆くんが戻るまで、わたしたちが頑張らなくちゃですねっ!」
だが、久坂の心配をよそに、莉子の反応は意外と冷静だった。
「お、おお? 平気なんか? いや、平気なのは助かるけどのぉ」
「平気です! 六駆くんは時々うっかりミスをするので! そんな時だからこそ、わたしが! わたしたちがしっかりしなくちゃです!! ね、みんな!!」
リーダーが前を向くのに、それに倣わないチーム莉子ではない。
「六駆くんの事だから、異世界でイドクロアたっぷり拾ってくるにゃー」
「みみっ。もしかすると、現地の人と仲良くなってるかもです。みみみっ」
「わたくしたちだけでもやれるって事をお見せする良い機会ですわね!!」
「うんっ! みんな、がんばろー!! おー!!」
久坂はそんな彼女たちを見て、目を細める。
若い世代の成長を実感するこの瞬間こそ、老兵にとっては1番の贅沢。
「久坂剣友! 報告がある!」
「おう。どがいした、55の」
「山嵐助三郎が回復した! しかも、前よりも元気になっているらしい!!」
久坂は「ほうか。そりゃあ良かった」と言って、さらに続けた。
「不謹慎じゃがのぉ。……割とどうでもええ報告じゃったわい」
「確かにそうかもしれん!!」
この師弟も結構ドライである。
が、55番は「さらに報告がある!」と言った。
「福田弘道オペレーターが、アトミルカの海上拠点を発見したらしい!」
「そりゃあ朗報じゃのぉ! じゃが、海上かい。まったく、いやらしいところに陣を張っちょるのぉ」
「そこから部隊が出撃したらしい! どうやら、先ほど交戦した5番が率いているようだと、福田弘道が言っていた!」
「若いのは元気じゃのぉ。さっき戦ってから、まだ1時間しか経っちょらんのに」
5番は10番が率いた先発隊の残存兵力に加え、本隊を従えてカルケルに迫っていた。
彼らの『噴射玉』の移動速度ならば、10分以内に到着するだろうと本部の計算が出ている。
「よぉし、分かった! まずは手近なとこから片付けるけぇの! こっちは人手不足なんじゃ! 向こうから来てくれるっちゃあ、助かると思おうで!!」
「確かにそうかもしれん!!」
チーム莉子は捜索作業を中断し、海岸エリアへと移動する。
そこには既に川端一真監察官と加賀美隊が迎撃態勢を取っていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
5番は部隊の最後尾を飛んでいる。
その隣には、部隊の最高位ナンバー・14番。
彼は5番に質問した。
「よろしいのですか? まだお体が完全に回復されていないのでは?」
「そうだな。7割と言ったところか。だが、遊んでいる訳にもいかない。3番の報告によれば、計画は順調らしい。ならば、ここで私が手間取ってみろ。あとであの技術屋に何を言われるか。私はあの男の自慢話とピクルスだけはどうしても好かん」
「そ、そうですか。では、我々はどのように展開すれば?」
「適当に目に付いた的を上空から攻撃しろ。どうせ監察官の相手は貴様らでは無理だからな。相手を見定めて、なるべく反撃されんように攻撃だ。数の有利を失いたくはないから、可能な限り落とされるな」
5番は「死に物狂いで戦え」とは言わないが、「命を守って危険なら撤退せよ」とも言わない。
現実主義者の彼にとって、部隊の兵士は仲間である前に1つの駒。
盤上でそれを指揮するのが自分の務めであると自覚しており、そこに情が介在する余地はない。
「報告します! 海岸付近に10人規模の迎撃隊を確認しました!」
「そうか。では、14番。お前が部隊に指示を出せ。私は一度少し離れた地点に上陸し、そののちお前たちでは手が出せない相手を始末する」
「了解しました。ですが、5番様がおひとりでですか!?」
5番は無表情で「バカを言うな」とだけ答えた。
それでも5番の身を案じる14番の視線に負けて「やれやれ」と続ける。
「既に、脱獄チームから3人ほどが【転移白石】で地上に向かうと報告が来ている。腹の立つことに、そのうち2人は私と同格かそれ以上だそうだ。ならば、敵の防衛隊がどれほど手練れ揃いでも遅れは取らんよ」
納得した14番は、先頭へと飛び去って行った。
5番は「あの男は戦闘向きじゃないな。戦場では指揮官を慮る必要などないのに」と呟いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
カルケル第11層では、3番が【転移白石】の準備をしていた。
煌気座標は、もちろん5番。
持参している煌気探知機で5番のカルケル上陸を確認した3番は、2番に報告した。
「問題ありません! 煌気座標が固定されました!」
2番は「よし」と答えて、選抜した者に戦支度を整えさせる。
「では、10番。お前にはこの2人を付ける。実力はお前を上回っているが、上官の命令を聞けぬヤツに用はない。臆せず命令を下せ。囚人の2人も、異存ないな?」
地上へ向かうのは10番。
さらに、そこに加わるのは。
「某は何の文句もない。良い刀を頂きました。これでまた、多くの人間を斬る事ができる」
煌気刀による17件の辻斬りによる殺人、および殺人未遂でウォーロスト送りになった姫島幽星。
「お、オレも、言う事は聞く。薬の材料を、たくさん貰ったおかげで、ふひっ、いい薬がいっぱい調合できた。ふ、ふひっ」
イドクロア製の違法薬物の製造、および流通の罪で同じくウォーロストに送られた、ピータン・スリッピー。
「では、行って来い。健闘を祈るぞ、10番」
「はっ! お前たち、行くぞ!!」
【転移白石】によって新たに3人の悪意が、防衛部隊に襲い掛かるべく地上へ転移していった。
一方、異世界・ウォーロストに落ちた3人はどうなった。
極寒の地で響き渡るのは逆神大吾の悲鳴か、絶命の叫びか。
コメント
1件
第389話、読み終わったよ〜!😭💕 六駆くんがいない中でも莉子ちゃんたちが前向きで、もう感動で泣きそうになった…!!「わたしがしっかりしなくちゃ」って言う莉子ちゃん、めっちゃ成長してるしチームの結束力がエモすぎる😢✨ そして脱獄囚たちが地上へ向かう展開、ヤバすぎるでしょ!?特に姫島幽星とかピータンとか、ガチで危ない奴らが揃ってて戦慄した… 最後のウォーロストの描写も気になりすぎる!次の話が待ちきれないよ〜!🔥