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「透子さん。樹が選んだ女性があなたでよかったわ」
そしてREIKA社長が改まってそう声をかけてくれる。
「きっとあなたたちは運命的に結ばれてる相手同士だったのかもしれないわね」
そして優しく微笑みながらそんな嬉しい言葉も伝えてくれる。
「こちらこそ。樹さんに選んで頂いて感謝してます」
樹が出会ってくれて好きにならせてくれたから、私は今ここにいる。
「私と母さんはお互いやりたいことを優先して、離れる幸せを選んだ。樹も同じ道を歩んでしまわないかと最初は不安になっていたのだが、もうそんな心配はいらないようだな」
「大丈夫。オレ達は絶対何があっても離れないから。例え離れたとしてもきっとオレたちも親父と母さんと同じように想い合えてるだけで幸せでいられると思う」
「ハイ。一緒にいれても、離れてしまっても、私も樹さんの存在が変わらずあれば、ずっと想い合えてるその絆だけで幸せだと思います」
社長が心配してかけてくれる言葉に、樹も私も戸惑うことなく答える。
「そうか・・。まったくお前たちは・・。そんなとこは私たちを真似なくてもいい。これからはお前たち二人で一緒に側で支え合いながら幸せになりなさい」
それを聞いて社長は少し呆れるように笑いながら、温かい言葉をかけてくれた。
「ハイ。必ず幸せになります」
樹が力強く伝える。
「あの・・一つだけお聞きしていいですか?」
私はずっと気になっていたことを聞きたくて、社長に声をかけた。
「何でしょう」
「会社の屋上。あの場所に樹さんに連れて行ってもらったんです」
「あぁ。あの場所は私のお気に入りの場所でね」
「ハイ。とても素敵な場所で。それで・・あの屋上のフェンス越しに見えるある場所が気になって・・」
「・・・あぁ。もしかして気付かれましたか?」
社長は私が何も言わなくても、すでに言いたいことを察したように返答する。
「あの場所から見える景色は私にとって特別でね。ずっと変わらずそこに在り続ける景色が私にはずっと支えで力をもらえる存在だと言えば、もうわかって頂けますかね?」
「はい。素敵です。とても」
答え合わせのヒントをくれる社長のその表情は、とても優しくて穏やかで嬉しそうで。
「私もあのREIジュエリーの看板を見つけた時から、ずっと憧れです。私もずっと変わらずに輝き続けられるそんな女性になるのが理想です」
「そうですか。あれを見つけてしまうなんて凄い方だ。あなたならきっと叶えられるでしょう」
やっぱりそうだった。
社長はずっとあの場所でREIKA社長を想い続けていた。
「REIジュエリーってうちの看板・・?もしかして、会社を立ち上げた時からあるあの看板のこと?」
そして、その本人であるREIKA社長が気付く。
「あぁ。ちょうどあの看板がうちの屋上からよく見えてね。君が頑張っているんだなとあの場所から見つけた時は嬉しくてね。それから何年経っても変わらずあのまま存在してくれてることで、随分救われたよ」
「そう・・。ちゃんと見つけてくれてたのね。どうしてもあの場所がよかったの。あなたの少しでも側に存在していたかった。私の存在を忘れてしまわないように。私のあなたへの想いをあの看板に込めて。ずっと変わらずあの場所で存在したかった」
ずっとその変わらない想いはどこまでも美しくて輝いていて。
何年経っても、たとえ離れても、きっとその想いはずっと繋がっていて。
ここまでずっと言葉に出来なかった想い。
だけど言葉にすると、更にその想いは確かなモノになって更に大きくなる。
確かな確信へ、確かな愛しさへとカタチを変える。
長年かかって確認し合えたその想い。
私と樹もこんな素敵な想いをずっと繋いでいけるようにと、また強く願う。
例え誰に何を言われても、お互いのその想いだけ信じていれば。
きっといつかまたその想いが重なる時が来る。
「透子。すごいね。ホントに二人そうだったんだ」
そんな二人を見て、幸せそうに笑う樹。
今まで樹の中できっとずっと抱えてきた思い。
それを意識しすぎたせいで、何度も苦しくなったその思い。
だけど、すべてはただ想い合う気持ちと共にそれは存在していて。
本当はその苦しさと幸せが背中合わせに存在していた。
少し見方を変えれば、もっと言葉にし合っていれば、きっとすぐに気付けたこと。
だけど、きっとお互いがお互いを想い合っているからこそ、言葉に出来ない。
少し不器用なその想いは、ようやく今光を見つけた。
誰も犠牲になることもなく、今は好きな事をやり続けていて輝き続けている。
離れたことで手にした幸せ。
離れたからこそ輝くことが出来た幸せ。
その幸せを気付けた今、きっと樹はもう心配ない。
これからはもう大丈夫。
心から笑顔で幸せだと言える日々を、これからは一緒に樹と二人で過ごしていく。
これからはその幸せだけをずっと噛みしめて。
やっと。二人で幸せになれる。
これから一緒にずっと。