~🦖said~
今日は珍しく、昔からの友達と飲みに行くらしい。
ウキウキで準備している所悪いけど、正直行かせたくない。
「わざわざ夜に会わなくたって良くない?」なんてボヤいたら、「お互い忙しいから」って言われた。そうだけどさ…。
複雑な気持ちで、見送るために玄関まで行くと、「帰りは迎えに来てほしい」って頼まれた。お望みとあらば、どこまでも♡
~⚡said~
不貞腐れている🦖に呆れ、数年ぶりに会う友達との差し飲みに、少しだけ高揚しながら待ち合わせ場所へと向かう。
数年だけしか会っていなかったはずなのに、少しだけ雰囲気が変わった様にみられる友との会話は、昔と内容はほとんど変わらなかった。
~飲み屋にて~
「そういえば⚡、恋人いるって言ってたよな?どんな人なん?」
それとなく薄っすらと🦖の存在を匂わせていたからか、酒が進むにつれて、この話題が出ることは覚悟していた。
ただ、同性だ。とは伝えていなかったし、切り出すのにも勇気がいる。こいつに言っても引かれないだろうか。そんな考えが過ぎって、中々言葉にできない。
しばらくの沈黙の後、口を開いたのは友人だった。
「そういえば言ってなかったけど、俺恋人出来たんよ。」
唐突のカミングアウトに少々驚きながら、じっと耳を傾ける。
「そいつさ、仕事出来て、誰にでも優しくてさ、めっちゃいいやつなんよ。この間も、俺のミスなのに一緒に最後まで仕事してくれたし。」
嬉しそうに語るところを見ると、少しだけ羨ましい…。なんて思った。
「それでさ、俺の恋人男なんよ。」
「へー……。え?!」
突然の急展開に、目を丸くして友人の顔を凝視した。
「やっぱりそういう恋愛って理解されるのムズイんかな?どう?」
驚いてる俺と違って、さも当然かのように淡々と話を進めている。
「ちょ…ちょっと待った。なんでそんな冷静なん?」
「さっきから言いにくそうやなーって思っとったけど、同性やったら紹介したらあかんの?好きな人語ったらええやん。」
友人の意外な言葉に、つい目頭が熱くなって、慌てて上を向く。
「変なとこで気使うの、変わっとらんな。変なこと言う奴おったら、俺がどつきに行ったるから。」
やはり、持つべきは友達の様だ。こんなに理解があって、心強い友人がいたら、例え嫌な事があったとしても、すぐに忘れられそうだ。
「俺、お前と友達でよかった。ありがとな。」
思わずお礼を言うと、数年前と何も変わらぬ笑顔で楽しそうに笑った。
~🦖said~
数時間後、待ちわびていた⚡からの着信に、ワンコールもせずに出ると、完全に酔っている声と、その隣で楽しそうな声が聞こえてきた。
「🦖~?迎えきてぇ…。歩けへ~ん。」
殆ど呂律の回っていない口調で話す⚡が心配で、お店の場所を聞き出そうにも、うまく聞き取れない。
「もしもし。彼氏さんっすか~?」
突然電話口の相手が変わったかと思ったら、意外にもチャラそうな口調に、更に焦りが増す。
「お前、⚡に手ぇ出したら殺すから。」
迷わず牽制すると、笑い声と共に、意外な言葉が返ってきた。
「笑わせないでくださいよ。俺、彼氏いるんで。そっちこそ、⚡の事泣かしたら殺すから。ていうか、⚡があんたの事しか眼中にないの分かってるでしょ。早く迎えに来てあげてください。待ってるんで。」
一方的にそう言ったかと思ったら、すぐに電話が切れてしまった。
急いで⚡の待つお店に向かうと、カウンターに寄りかかるようにしてウトウトしている⚡と、その横で⚡を見守る男が並んで座っていた。
俺の存在に気が付いた⚡は、蕩けそうなくらいふわふわした笑顔でにこやかに手を振る。
「お待たせ。楽しかった?」
「俺の友達は最強やで!」
投げかけた答えにはなっていなかったが、当の本人はすごく楽しそうなので、適当に相槌を打った。
「初めまして。⚡の友人の昌(あきら)です。さっきは挑発してすみませんでした。⚡の彼氏がどんな人なのか、試したくて。」
「初めまして。🦖です。⚡思いの優しい方で良かったです。理解してくれる方は中々少ないので。」
軽い話をして、店を後にした。
~⚡said~
「ええ奴やったやろ?」
家に帰る途中の夜道、酔いが覚めてきた頃ふと思った事を口にした。
「そうだね。でも、やっぱり他の人と飲みに行く時は、潰れる前に電話して。さっきの電話、ほんとに焦ったから。」
心配と嫉妬が混ざったような口調に、思わずきゅんとした。
「今度からそうするな。」
そう答えると、ほっとしたように笑顔になったと思ったら、急に立ち止まった。
「どうしたん?」
🦖の顔を見ようと見上げると、そっとキスが降ってきた。
思わず固まると、苦しいくらいに抱きしめられた。
「…どこにも行かないで。」
消え入る声でそう呟いた🦖が、少しだけ、小さく見えた。
明日は二人とも休みだったはずだ。酔っている今なら、本音を思う存分ぶちまけても良いだろう。
帰ったら、どれだけ🦖の事しか眼中にないのか、語り明かしたいと思う。
おそらく寝かせてはくれないだろうけど。
コメント
1件
この話しめっちゃ好みでした! 最高です⤴︎︎︎⤴︎︎︎