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🎧短編「言わないままで」
夜。
部屋の明かりは、少しだけ暗い。
ソファ。
二人並んで座っている。
距離は、近い。
触れてはいない。
でも。
前より、ずっと近い。
テレビはついてるけど、誰も見てない。
琉夏「……眠」
ぼそっと呟く。
冬星「寝れば」
琉夏「ここで?」
冬星「別にいい」
短いやり取り。
少しだけ間。
そのまま、体を預ける。
ほんの少し。
肩に、寄りかかる。
一瞬。
(……あ)
でも。
もう、離れない。
何も言われない。
冬星も、何も言わない。
ただ、そのまま。
静かな時間。
琉夏「……重くね?」
冬星「別に」
即答。
少しだけ笑う。
しばらくして。
冬星「それ」
琉夏「なに」
冬星「飲みかけ」
テーブルの上のペットボトルを指す。
琉夏「あー」
そのまま取って、飲む。
当たり前みたいに。
一瞬。
冬星「……間接」
ぽつりと呟く。
琉夏「今さらだろ」
言いながら、少しだけ目を逸らす。
冬星は、何も言わない。
でも。
少しだけ空気が揺れる。
沈黙。
でも、嫌じゃない。
むしろ。
落ち着く。
琉夏「……なあ」
冬星「なに」
少しだけ迷う。
でも。
琉夏「これさ」
言いかけて、止まる。
“なんなんだろうな”
その言葉は、飲み込む。
代わりに。
琉夏「……楽だな」
ぽつりと落とす。
冬星が、少しだけこちらを見る。
冬星「そう」
短い返事。
でも。
少しだけ、柔らかい。
冬星「お前も」
一言、付け足す。
それだけで、十分だった。
しばらくして。
冬星が、少しだけ体勢を変える。
そのまま。
ほんの少しだけ。
頭が、触れる。
一瞬。
でも。
どかない。
(……まじかよ)
心臓が、うるさい。
でも。
離れない。
この距離が。
ちょうどいいと、分かってるから。
冬星「……寝た?」
琉夏「起きてる」
即答。
少しだけ沈黙。
冬星「……ならいい」
それだけ。
意味は、分からない。
でも。
分かる気がする。
夜は、静かに続く。
触れているのに。
名前は、ない。
でも。
ほとんど、同じだった。
言わないまま。
ここまで来てしまった。