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翌日、教室に着くや否や新田が私の元へやって来る。
「琴里、昨日の男、一体誰なんだよ?」
「はあ? そんなの誰だっていいじゃん。ってか、新田には関係ないでしょ?」
相変わらず自分勝手な新田に苛立ちを感じた私は相手にせず席に着く。どこまでも粘着質で嫌になる。
「彼氏?」
「…………」
「見た感じ、だいぶ年上っぽかったけど、お前、遊ばれてんじゃねぇの?」
私が黙っているのをいい事に好き勝手言ってくる新田。
分かってる、こんな奴、相手にしなければいいって。
だけど、律の事を悪く言われたら黙っていられなくて、ついつい言い返してしまう。
「うるさいな! 新田には関係ないって言ってんじゃん! 律は彼氏だよ! 年上だよ! 私の方が好きなの! 遊ばれてなんかないから!」
怒りが頂点に達した私はそこが教室だという事も忘れて怒鳴り声をあげた。
「ちょっと、何事?」
すると、騒ぎを聞きつけた麻紀が駆け寄ってきた。
「いや、ちょっと……」
「もう、また新田が何か言ったの? 大丈夫? 琴里。新田の言う事なんて気にしない方がいいよ?」
「うん……ごめん、私ちょっと気分悪いから一限目サボる」
居ずらくなったのと一人になりたかった私は麻紀にそう告げると、予鈴が鳴るのも構わず教室を出た。
そして、行き場か無かった私は屋上へやって来てくると、手摺に寄りかかりながらぼんやり景色を眺めていた。
「……新田のヤツ、本当ムカつく……」
さっきの出来事を思い出すと、再び怒りが込み上げてきた。
“遊ばれてんじゃねぇの?”
新田のその言葉が、胸に突き刺さる。
(遊ばれてるどころか、子供扱いしかされないし)
何だか無性に悲しくなった私は気がつくと律に電話をかけていた。
「もしもし?」
何度目かのコールで律が電話に出る。
「あ、律? 今、大丈夫?」
「ああ、別に大丈夫だけど、つーかお前今授業中じゃねぇのかよ?」
「…………」
「サボったな?」
電話の向こうで苦笑している律の顔が想像出来る。
「うん……ちょっとね」
いつになく言葉少なげで元気の無い私を不思議に思ったのか律は、
「何があったのか分からねぇけど、次の時間からはきちんと授業受けろ。な? 放課後、迎えに行ってやるから」
優しい声でそう諭してくれる。
迎えに行くとか、今まで一度も言われた事なんてなかったのに、こういう時にそんな事を言うなんて、本当に狡い人だ。
律の優しさと気遣いが嬉しくて、思わず笑みが溢れた。
「わかった。頑張る」
「良い子だ」
電話越しの声が優し過ぎて、何だか泣けてくる。
(電話だけじゃ、足りない)
もっと話していたいけど、これ以上声を聞いていると今すぐ帰りたくなっちゃうから、
「そ、それじゃあ、放課後ね!」
ちょうど一限目の終わりを告げるベルが鳴ると同時に、私は電話を切った。