⚠一次創作
GL
ほんとに少しだけファンタジー要素があります
重ため
長いです
正統派です
一番の親友が死んだ
交通事故だった
私と同い年の高校生で底抜けに明るい、簡単にいえば”陽キャ”と呼ばれるような人だった。
大勢人がいるのに静寂が広がり、偶に誰かのすすり声が聞こえる。線香の香りが広がっているこの空間は、親戚が少ない私にとって初めての光景だった
葬式が終わり、参列者が彼女を一目見に行く
私もそうしようか迷ったが、なんだか今彼女の顔を見る気分にはなれずに帰路についた
微妙に熱い空気と少なくなった虫の声が夏の終わりがけを知らせる
そういえば、私が彼女に出会ったのもこのくらいだった。
当時私は中学生、学校に馴染めず成績も運動神経も悪い私はただ退屈な時間を過ごすだけの学校生活に飽き飽きしていた
趣味はあるもののそれだけ、特に長けた才能もなく時間を費やしていく日々。
そんな毎日のある日、一人帰っているとふと思い立った
「…あ、そうだ。」
「死んじゃお。」
思いついてからは早かった
昔友達がたくさん居た頃によく遊んでいた公園にいく
その公園の一番頑丈そうな木に制服のネクタイをかける
なんとなく結んだにしては上出来だ。手である程度引っ張っても取れないことを確認して、鞄に詰めていた教科書を台にしてそれに首をかけた
(……ああ、やっと……)
(終われる。)
「待って!!!」
聞きなれない声だった。
気付けば私は彼女に抱きつかれて止められていた
「……は、…?」
首からネクタイが外れ彼女に抱きつかれたまま倒されている状況
私が混乱しているのにそれ以上に何故か泣いている彼女
「だ、誰…?」
「っ…だめだよ、っ!!しんじゃ駄目!!!絶対くるしいって!!あたし知ってる!!」
「い、いや……まず誰なんですか、…貴女……。」
「今誰とか関係ある?!」
「ええ…、」
私とは対象的な彼女に困惑しながら、彼女をなだめる
「う、うぅ……」
「もう泣かないでくださいよ…。私なんか悪いことしたみたいじゃないですか…。」
「してるよ!!あたしびっくりしたんだから……。」
そういう彼女の背中を軽くポンポン、と叩いて落ち着かせる
「…落ち着きましたか」
「うん…。」
まだ軽く鼻をすする音を立てている彼女に少し呆れながら問う
「…まず、誰なんですか?、てか、なんでわざわざ止めにきてくれたんですか…?」
そう聞くと、彼女は目を擦りながら私から軽く離れて対面の体制になる
彼女は私と同じ制服で、私より少しだけ身長が高く童顔でツインテールの髪は夕焼けに照らされてらてらと金色に光っていた
(…綺麗な髪…。)
その姿は、何となく昔本で見た女神と似て見えた
そう思っていると、彼女が口を開く
「ら…ってぇ…、女の子が今にも死んじゃうみたいな顔して公園にいるからぁ…、大丈夫かな?って見てたらほんとに死んじゃいそうだったから…。」
「……ふふ、」
そういう彼女がなんだかおかしくて、少し笑いが込み上げる
「え?!あたしなんかおかしかった?!」
「…ふふ、いえ…、なんか不思議な人だなって、」
「えー?!」
そんな会話を少しし、彼女があっ!と声を上げる
「どうしたんですか?」
「いや、今何時?!」
「今…、18時ですけど、」
「やば!!お母さんに怒られる!!ごめん!あたし帰るね!」
そう言って彼女が立ち上がる
「あ…、はい、…」
鞄を持ってあわあわとしている彼女の背中を見る
そうしていると彼女は支度が終わったのか、鞄を肩にさげ、「じゃーね!」と言って公園の出口へ向かった
(…もう、帰っちゃうんだな…、)
数秒息をとめ、考える
なんだかここで終わるのが嫌で、私は気付けば叫んでいた
「…あっ、!!あの!!」
「えっ?」
「な、名前…っ!!」
「…名前?」
困惑する彼女に駆け寄る
そうすると、彼女は理解したのかにこっと笑って言った
「あたしは⸺」
「セイカ!セイカって言うんだ!」
ネメシスの白昼夢
と、と、と足音が響く
どちらかというと田舎で静かで殺風景なこの道は彼女と出会うより前の私を表現しているようだった
ふと脚が止まる
横を見ると、見慣れたあの公園があった
「…………。」
なんとなく足を踏み入れる
あの頃と全く変わらないこの光景は、嫌というほどに彼女との記憶を思い出させた
あの木は金木犀を実らせている
そういえば、金木犀は一週間で散ってしまうらしい。
その儚さや色は、なんとなく彼女と重なって見えた
「…」
風が吹く
少し冷たい風に振り返る
「……え、…?」
本当に、信じられなかった
『…えへへ、もー、なんて顔してんの!幽霊でも見たみたいなさ、』
「…は、…?」
振り返ったそこには”彼女”がいた
見間違えようがない、中学の頃とは違う長い髪を下ろして前髪を上げた漫画のキャラを具現化したかのような見慣れた姿の彼女がそこにいた。
「は、…?!な、なんで、…、?!」
『いひひ、ほんと変な人なんだから』
「いやいや!!なん…、えっ、?、なんでここに…だって、セイカは!!」
『…ねぇ、』
彼女の一言に黙らされた
普段とは違った落ち着いていて真面目なトーンで彼女は呟いた
『…、ごめんねえ、』
「……!!」
その言葉に、今まで不思議と出なかった色んな感情の雫がぼろぼろと落ちる
『……、あたし、しんじゃった。』
「…うん。知ってる、」
『……交差点でね、小さい子が渡ってて、途中で赤信号に変わっちゃってね』
「……うん…、」
『そしたらよそ見してたトラックが走ってきて、』
「……、うん、」
『危ない!って思っちゃって、』
「……。うん」
『…あはは、悪い癖だね、…飛び出しちゃったんだ。』
少し嗚咽が漏れても、涙は止まらなかった
そうだ。そうだった。
彼女はあのときも、飛び出して私を守ってくれた。
「…っ、……。セイカ…、」
『…うん、』
彼女に少し近づく
「……わたし、……、」
「セイカと離れたくないよ………。」
『……。あたしも。』
彼女が私を抱きしめる
抱きしめられた感触は無いが、なんだかとても暖かく感じた
「……ねぇ、セイカ……。」
「わたしも、そっち行っていい…、?」
私が言うと、彼女はふふ、と微笑んで呟いた
『駄目。』
「…え、?」
「⸺ん!!ーーさん!!」
「…え、……、」
聞きなれない声で目が覚めた
目を開けると、知らない天井
「起きましたか…!よかった…。」
「あ…、あの…」
私が混乱していると、看護師のような人が言う
「ーーさん、公園で倒れていたんです、誰かが救急車を呼んでくれたみたいで…、」
「…?誰かが…、?」
「そうなんです!確かに連絡はされたんですけど救急車が駆けつけたら誰も居なかったらしく…、」
「……誰も、いなかった…。」
「…あ!すみません、起きたこと伝えてきますね、」
「…あ、ありがとうございます」
そう返事をし、看護師さんの後ろ姿を見送り、起き上がって携帯を取る
携帯には、彼女とお揃いでつけていたキーホルダー。
「…、また、守ってくれたんだ…。」
少し視界が滲んでしまった
「…っ、、………。」
「…でも、…でも……。」
「私も、守りたかったなぁ……。」
コメント
1件
初めて一次創作で綺麗なGLを書いた気がします。金木犀、綺麗ですよね