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悲壮感漂う俺と不機嫌満載の歩。これ以上の最悪な再会の仕方はないだろう。
信じられないという表情を浮かべて、なにかを口にしようとした歩を見、俺は眉間に深いシワを寄せてみせる。
「……おまえ、なにをやってんだっ?」
「は――?」
「俺が仕事をしてるとき、どんなに疲れていても不機嫌な対応してるところを、おまえは見たことがあるのか?」
言いながらつい、いつものクセで頭を叩いてしまった。だけど威力は半減してやる。
「痛っ! あの……どんなときでもタケシ先生は、ちゃんと患者さんに笑顔で向き合ってる」
「だろう? わざわざここを選んで来てくれたお客に対して、ありがとうございますの意味を込めて、きちんと接客しなきゃならないんだよ。たとえどんなに疲れていてもだ! おまえ一番人気だからって、天狗になってんじゃないのか?」
胸の中に渦巻くイライラのせいで、言わなくてもいいことまで告げてしまい、思わず口元を押さえた。そんな俺の様子に、歩はいつものへらっとした笑みを浮かべて、じっと見下ろす。
「タケシ先生、もしかしてわざわざ来てくれたのって、俺の人気ぶりを見に来たの?」
「っ……ああ、そうだよ。すごいじゃないか、呆れちゃうくらいに人気者だな。ほら、早く行ってやれって。もちろん、笑顔を忘れるなよ! バカ犬がっ!」
無理やり笑顔を作り、大きな背中を押して店の中に入れてやると、女のコたちが歓声を上げた。それに対して歩は、俺の言ったとおりにきちんと笑顔を振りまきながら、ひとりひとりに声をかける。
「ゴメン、待たせちゃって。今、順番にオーダーを取っていくから」
「歩くん、うちらが先だよ! コッチから!」
「ちょっと、こっちが先だってば」
「一緒に写真撮ってー!」
歩に強請られる、たくさんの言葉を振り切るように、背を向けて立ち去った。
素直になるって決めたのに――イライラした気持ちをぶつけてしまうなんて、なにをやってんだよ俺……。