ーあなたが愛してるのは私じゃない。とっくに、知ってますから
彼女は、そう言い笑った。
ーーー昭和×年.
10年ちょっと。
ずっと片想いしていた女子が居た。
その子は、何だかほおっておけないような雰囲気で、無邪気で__…幼なじみ…
おさげをしていた女子。
紅く.綺麗な着物を身にまとい……
良家へと嫁いでいった女子。
どうしてあの時止められなかったのか
もし、気持ちを伝えていれば__…
何か、変わったのだろうか?
ーーーー
大人になったら略奪でもしてやろうか。
なんて思っていた少年時代から、早数年。
結局、私の縁談も決まってしまった。
目の前に居るのは、少しツリ目できの強そうな女性。
髪は後ろで団子にしており、紅い綺麗な簪をさしている。
ああ、くそくらえ。
何かあるたびに、女子のことを思い出してしまう。
もう私の縁談は決まったことだし、彼女はとっくに嫁いでいる。
きっと、今は幸せなんだろうに
縁談相手と過ごした夜も、朝も。
心の隅には常に女子が居たように感じる。
あぁ、久しぶりに彼女の母へと写真を送っていたのだったがな。
凄くべっぴんで、可愛い子供と共に映っていた。
もう女子では無い。1人の、女性と成っていた。
あの晩、縁談相手は、上の空である私を見て、くすりと笑った。
ーーーーとっくに、知ってますから。
その一言が痛かった。
ちくりとガラスに刺されたような苦しさがあった
________銃声が行き来し、視界が揺らぐ今でも
胸の中には、幼馴染が居た。
縁談相手の名は、思い出せもしなかった。
顔すらも。
“あの言葉”だけはガラスのように突き刺さっているというのに。
どうして、思い出せぬのだろうか
どんな風に、笑っていたのだろうか
縁談後10数年居たものの何も覚えていない私を
彼女は怨むのだろう。
あぁ、自業自得だ。
____後悔というものは
終わりがない。