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そう言われて、
「たぶんやけど自室におるはず。」
とゾムさんが指定した部屋に尋ねてみる。
自分が貸してもらっている部屋とはまた違って、なんと言うか、でかい。
幹部特権、やったかな。
ショッピさんがそんなことを言っていた気がする。
「失礼します。」
誰がおるかまでは教えてもらえなかったから、とりあえず粗相や失礼がないように恐る恐るドアをノックする。
「、、、?」
おらんやん。
え、いやまて。
もしやシャオロンさんみたいにまた上に居たり、、、?
と顔を上に向けてみるも
「居ない、、」
そもそも誰の部屋かもわからんのに、ジロジロみるのもどうなのかとは思うが、まぁええやろ、、と考えないでおいた。
目を凝らしても見つからず、おかしいなと周りをぐるぐる見渡していると
「人様の部屋の前で何してんねん」
後ろから声がした。
咄嗟に振り返ることなんて、出来んかった。
振り返らなくてもわかる。
誰だなんて訊く声で、
その主が、
ゾムさんが勧めた人物が、
わかりきった。
「ろぼろ、さん、」
僕は後ろを向いたまま、呟く。
「なんや、勝手に部屋の前に突っ立って、、探し物でもしとんのか?」
「いえ、そういうわけでは」
え?
うそやろ?
ゾムさんが言っていたのはロボロさんってことやんな、?
つまり僕はこれから
これから命の恩人に体術教えてくださいって乞わなあかんのか、、、?
それは失礼、いや、わからん、でも大丈夫なんか?
そうやって、一気に不安が襲ってくる。
僕が1人で何も言えずにいると、ロボロさんは僕が振り返る前にすたすたと横を通り抜けて──
「……入れ。」
え、入れ、って。
思考が止まったまま固まる僕を、ロボロさんは後ろ目でちらりと見た。
「はよせぇ。廊下で突っ立っとる方が怪しいわ。」
「あっ、はい、、?」
慌てて後ろを追いかける。
部屋の中は整然としていて、綺麗にしてあった。
資料とか、筋トレ系の器具はたくさんあるが、それ以外の無駄なものが一切ない。
なんというか、人柄そのままの空間って感じ。
ロボロさんはテーブルに座り僕を見る。
「で。なんや。」
「えと」
「言うだけ言うてみ。」
「体術を、僕に教えて欲しいんです。」
言った瞬間、空気が揺れた。
いや、怖い。
ただ、それ以上に腹の底が熱くなる。
ロボロさんは僕をしばらく見つめ
ふっと鼻で笑った。
「まぁ、ええわ。暇ではないけど、鍛える価値はある。」
「っ……!」
「ただし。」
喜びの気持ちをすっと牽制するように、ロボロさんは言う。
そしてロボロさんは僕の前に歩いてくる。
足音は静かなのに、近づくたび圧が重くなる。
「教える以上、手加減は一切せん。途中で投げ出すなら今帰れ。」
「投げ出しません。」
即答やった。
迷いは一つもなかった。
ロボロさんに教えてもらえるのはもちろん、
もとよりやる気やから。
「ほんならまず──」
その瞬間、
バンッ!
僕の視界が、大きく揺れた。
「うわっ……!?」
気づけば壁に背中をつけていた。
なにをされたのかもわからん。
触れられた感覚すら無い。
ロボロさんは近くで腕を組んでいた。
「いまの、なんで押し返せんかったかわかるか?」
「……、全然……」
「せやろ。」
ため息ひとつ。
「お前、戦闘中の展開への頭の周りは早いねん。
でも、“いきなり襲われたとき”のための体勢の構築が甘い。
重心も浮いとる。
そのままやと、ゾムシャオどころか俺の小指一本にも勝てん。」
小指一本……。
心に刺さるけど、反論の余地がない。
ロボロさんは僕の腕を軽く持ち上げ、
「これが今のお前の構え。」
次に、僕の腕を少し下げ、肘の向きを変え、足の位置をほんのわずかに直した。
「で、こっちが“形”や。」
その瞬
体の安定感が全然違った。
「……え……?」
「力じゃない。体の軸や。」
ロボロさんは僕の背に手を当て、ほんの少し押した。
さっきと違い、びくともしない。
「形を知らんやつが強くなれるわけない。」
静かな声なのに、嘘みたいに胸に刺さる。
ロボロさんは背を向け、窓の外を見ながら言った。
「レパロウ。」
「はい」
「教える以上、逃げんな。今日から毎晩、体術の基礎叩き込む。立ち方、歩き方、呼吸、全部一からや。」
(全部……)
ゴクリと喉が鳴る。
ロボロさんは振り返らずに、ただ一言。
「強くなりたいんやろ」
その言葉だけで、胸が熱くなって。
迷いも怖さも全部溶けた。
「……はい。」
ロボロさんはちらりと、横目で僕を見て。
「──覚悟、見せぇ。」
「もちろんです。」
そう一言、強い意志で言う。
「よし、とりあえずその構えで1時間立っとけ。」
「え?」