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時間は過ぎ、気づけばもう夜になっていた。
楽し過ぎて、いつまでもワイワイと話し込んでしまったせいだ。
本当にたまにしかない機会だから、先生達とのこんな交流もたまにはいいなって思った。
私達はお別れの挨拶を交わして保育園を出た。
弥生は、1人違う方向に歩き出した。
きっとどこかで相手の人が待ってるんだろう。
「好きな人に会える」って、心弾ませる少女のような表情を浮かべてる弥生を見ると、複雑な気持ちになった。
その背中を見送ってから、雪都を背中におぶってくれてる理久先生と2人、マンションに向かった。
良かった、少し涼しい風が吹いてる。
夜の星も見えて、静かな夜だ。
「彩葉先生。疲れてないですか?」
「理久先生こそ。夏祭りであんなに頑張ってたのに、雪都をおぶってくれて……ごめんね、疲れるよね」
「とんでもないです。今、雪都君の体温が背中に伝わってきて……何だかすごく嬉しいです」
「理久先生って、本当に優し過ぎるよ。そんなにみんなに優しくしてたら、気持ち、疲れちゃうよ。私は理久先生とは友達なんだから、そんなに気を遣わないで」
「彩葉先生」
「ん?」
「あまり時間ないですし、今しかないと思うから言いますね」
「えっ?」
「……」
黙る理久先生。
どうしちゃったのかな、急に。
「先生? 大丈夫?」
「あのね、彩葉先生……」
理久先生は、雪都をおぶったまま私のことを見て話し出した。
「さっき話してた、近くにいるのに遠くに感じる人ってね。うちの保育園の先生の中にいるんです」
「あっ、うん。そう……だよね。さっきの話しぶりでそうかなって思ってたよ」
「そ、そうですか……」
「うん、わかるよ。だって、うちの保育園、可愛い先生がたくさんいるもんね」
「いえ……僕にとって、可愛いと思える先生はたった1人だけです」
たった1人だけ……何だかすごいな、その言葉はあまりにも魅力的で人の心を惹き付ける。
よっぽど好きなんだね、その人のこと。
「そっか、理久先生みたいな素敵な先生に好かれて幸せだね、その人。告白するの……かな? だったら私、絶対応援するから」
「告白しますよ」
「うん。何だか私までドキドキしてきちゃう。上手くいくといいね」
「……じゃあ、今、します」
「えっ……」
理久先生のその切なげな瞳は、真っ直ぐ私を捉えてる。
そのせいで、否応なしに心拍数が上がり出した。
「僕の好きな人は……目の前にいるあなたです、彩葉先生」
嘘……
嘘だよ、そんなこと……
突然過ぎて何も言葉が出てこない。
体も固まったままで動けない。
どうしよう、息が……上手く吸えないよ。
「驚かせてすみません。でも、どうしても気持ちを伝えたくて。僕は、あなたが雪都君を1人で一生懸命育ててる姿にいつも心打たれてます」