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理久先生、私、ちゃんと先生の顔、見れないよ。
静かな夜の空間で、心臓がいっぱい音を出してる。
この心音、理久先生に聞こえてるかも知れない……
「僕は、雪都君が可愛いです。雪都君みたいな子どもが欲しいって言いましたけど、そうじゃなくて、雪都君のことを自分の子どもとして育てたいって……そう思ってるんです。彩葉先生、僕は、あなたと雪都君と3人で……家族になりたいんです」
家族……
それって……
「理久先生、ごめんなさい。私、すごく驚いてます。想像もしてないことが起こって、ちょっと頭が混乱してて」
「そう……ですよね、いきなりですみません」
「ううん……」
「僕は、ずっと彩葉先生だけを見てきました。あなた1人だけを」
今、理久先生の気持ちをキチンと理解することはできないけど、でも……その言葉は、私の胸の奥まで深く響いた。
「ありがとう。そんな風に言ってくれて嬉しいよ。でもね、家族になるってことは、雪都の人生を見守るってことだよ。一生だよ。そんな大変こと……理久先生にはさせられないよ。先生にはもっと別の人が……」
それって……私がマリエさんに言われた言葉だ。
嫌だったのに、同じことを言ってしまった。
「僕には別の人なんて必要ないです。僕が好きなのは彩葉先生だけだから」
「理久先生……」
「雪都君の人生を僕が死ぬまで見守ることは、僕の幸せでもあります。彩葉先生と雪都君と一緒にいられることが僕の夢なんです。一緒に保育園をやって……ずっとずっとあなたと雪都君の笑顔をすぐ近くで見ていたい」
あまりにも真剣な想いに触れ、すごく戸惑った。
正直、まだ信じられない。
だけど、その気持ちはやっぱり……嬉しかった。
理久先生の思い、泣きそうな顔を見てたら本気だってわかるから。
でも……今、この場で理久先生の誠意を受け入れることはできない。
理久先生のこと、嫌いじゃない。
もちろん、雪都は理久先生が大好きだし。
だけど、私の心の中にはずっとずっと慶都さんがいる。
雪都にとって、私にとって、1番幸せな選択っていったい何なの?
「理久先生。私の頭の中にあること、一旦、いろいろちゃんと整理して考えたいの。少し時間をもらえたら……嬉しい。わがまま言ってごめんね」
理久先生は、首を横に小さく何度も振った。
「僕には謝らないで下さい。もちろんちゃんと待ちます。でも、最後に1つだけ……プライベートな質問をさせて下さい。気に障ったら許してくださいね」
「あっ、うん……」
「雪都君のお父さんは……今日、夏祭りに来ていたイケメンさんですよね?」
直球の質問に、一瞬ドキッとした。
申し訳なさそうに唇を噛み締める理久先生。
「あっ、えっ、あの……」