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「むむむ…。」
ここにきて何分たったのだろうか。
ドアの前に立ち、睨んでいる私は他の人から見ると不審者同然だろう。
あーあ、帰りたくねぇなぁ。
公園行ったら環喜たちいるかな。あーでも、あいつ今日塾か。
入る以外に道は無いみたいだ。
1呼吸着くと、家のドアを開け中に入る。リビングからは親と妹の微笑ましい会話が聞こえてくる。
「ただいま。」
親からの返事は無い。
平和で、日常的で、幸せな家庭。
人望や運動神経に恵まれ、何不自由なく暮らしてきた妹と、”それ”を産んだ親。
この家庭は輝かしく、誰が見ても完璧だと言えるだろう。
普通以上、特別未満と言ったところだろうか。
きっと、我が家は幸せだ。
私が居なくても。
小さい頃から愛想が良く、皆から可愛がられてきた妹とは違い、
無愛想で治安の悪そうな容姿の私は愛されなかった。
2年前、兄が亡くなってからはまともに私と話さないし、夕飯も自分の分だけ用意されていない。
小さい頃までは寂しかった。
今まで守ってくれていた兄貴が亡くなり、親の目は妹にばかり。
妹は欲しいものがあったらなんでも買って貰えたが、私は決められた小遣いでやりくりしている。
育ててくれた事には感謝している。
まぁ、親達は自分たちの誤りを理解してないし、私がそれなりの態度をとっていることにも怒りを抱いている様だ。
最近になってネットや教室という居場所を見つけた私はそこまで気にしなくなった。
勝手に言ってればいい。
今の私は悪口だって批判だって怖くない。
そう強気になって自分の部屋へと向かった。
がちゃり、とドアが開く。
「ただいま、ゆう兄、しょうさん。」
と兄の写真と推しに挨拶。
「夏兎愛、帰ってきたなら挨拶くらいしなさい。」
と、親が2階に上がってきた。
「何言ってんだよ。したやん」
「父さんは嘘をつくように育てた覚えはないぞ。」
キッと親が私を睨む。
「あんたに育てられた覚えなんて更々無いね。てか、話してたから態々気使ってやってんだろ。な?お前から産まれた子とは思えないくらい優秀じゃないの?」
その瞬間、
大きな音が鳴り、頬が燃えるように熱くなった。
「っ…いって…」
「そんな奴に育てた覚えはない!お前は失敗作だ!この恥知らずめ!」
◣ 失敗作◥
この言葉がどれだけ私にダメージを与えたか。
「うるせぇ!自分の責任全部子供に押し付けやがって!さっさと出てけ!クソ親父!」
親を蹴り飛ばし、ドアに鍵をかける。
ドアの外でまだ何か言っているが、もう済んだことだ。
腹減ってねぇし、しょうさんの配信見て寝よう。
そう思い、アプリを開きポストする。
『たまきち起きてる?そーいえば
スシローの新作くそ美味かったよ。
ケーキも新作でてたし。
てーいんさんまじ客多すぎて大変そーだった。んじゃ、おやすみ』
鏡を見て自分の頬に手を当てる。
触られただけで不快だ。
自然と涙が零れる。
「ゆう兄…みっちー…たまきち…巻汰…春夏…」
最近はうずまくって泣くのが日課になってる。へんなの。
そう思いたいのに、
寂しくて、辛くて、慰めて欲しくて。
お願い、
きづいて。