テラーノベル
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長すぎると全く更新が無くなってしまうので、当分はこれくらいの文量になると思います
「すまなかった」
暴走から一週間ほど経ったある日、スマイルさんが一人で僕の実験室に来た。
「いえ、気にしないでください。それより、その…」
「アキラの態度が気になったんだろ?」
「はい…長いこと一緒にいましたけど、怒っているところなんて見たことがなかったので…」
「あいつは子供相手に怒ることはそう無いからな。実のところ、俺も何故そこまで必死なのか、理由を知らない」
スマイルさんも知らないで怒られたってことか。あの様子では記憶もなさそうだし、説教をされたとしても、覚えてはいないんだろう。
あなたが好きです
思い出し、顔が赤くなってしまった。そういえば僕、あの時さりげなく告白してしまったよな?スマイルさんは覚えてるのか?
(でも、覚えてないのにわざわざ僕から伝えて思い出してしまったら…は、はずかしい…)
「ピヤノ?聞いてるか?」
「あ、すみません…もう一度お願いします」
「アキラが、もう一つ渡したいものがあるから東に来てほしいって」
「東?南じゃないんですか?」
「なんでも、シャークんに保管を任せてたらしい。これも前任玄武が遺したものだと」
それと、アキラはこの後俺と重要な会議があるから渡すのはシャークん。とスマイルさんが付け足した。
「分かりました。なら、今から行ってきますね…シャークんさん、サボって隠れてないといいな」
「大丈夫。アキラが釘刺してたから」
「来たか」
東に着くと、すぐにシャークんさんと出会えた。しかし、渡したいものはここにはないらしく、雑談しながらついて行くことになった。
「まさかスマイルがあんな暴れ方するとはな」
「やっぱり、皆さんも初めてなんですか?」
「うん。人里に降りようとしたこともないし…そもそも、周期がこんなにズレ込むこと自体初めてで、正直俺らも戸惑ってる」
周期…僕が一人前になってから、先祖返りである二人の主治医となった。そのため、二人に出す薬も、身体の状態も、先祖返りに関係することなら本人達よりも詳しいと自負している。
(記憶が正しければ、本来の周期は二週間後。少なくとも僕が担当になってから一日たりともズレなかったのに、なぜ)
「俺、アキラの方にもなんか異変あるんじゃないかって思ってる。だから、近々診てやってくんね?アキラのこと」
「はい。任せてください」
「着いた」
そこは人里から少し離れた小屋だった。中は物が少なく、しばらく使われていなかったのか埃っぽい。
「ここは?」
「前任青龍の書斎。前任玄武が亡くなる前、二冊の本を預かってここの本棚に保管してあるんだ」
よく見ると、本棚の一角だけやけに綺麗で、うっすらと水の膜で覆われているのが分かる。
「その二冊の本が僕に渡したいものなんですか?」
「そう。一冊は俺らも持ってる本」
シャークんさんが膜を解除し、小説ほどの大きさの本を渡してきた。
「闢邪神話?」
「もう一冊は…」
今度は分厚い本を渡された。しかし
「…錠前がついてますね」
「でも、解錠のための鍵がここに」
シャークんさんは何か思いついたようで、両手を僕に見えるように差し出してきた。その左手には小さな鍵があり、大きさから考えて、この本の鍵だろう。
「それ、日記らしいんだよね。で、ピヤノ。俺の手に鍵あるね?」
「?はい。ありますね」
「確認したね?ちゃんとあるね?」
「なんなんですか。早く渡してください」
「これに魔法をかけます」
シャークんさんは鍵を持っている左手に右手を添え、何かをふりかけるような動きを始めた。しかしすぐに手が離され、左手の上には
「え?!シャークんさん、鍵どこにやっちゃったんですか!」
「お探しの鍵は、これかなぁ!」
シャークんさんが右手を開いた。そこには、確かに左手にあったはずの鍵が握られていた。
「マジック〜!」
「ええー、すごい!」
僕は称賛の拍手を送る。種も仕掛けも分からなかった。この場には水はないため、水を操ってというのはないだろう
(第一、それなら僕も感じ取れるはず)
僕が真剣に仕掛けを考えていると、シャークんさんが僕の手にその鍵をしっかりと握るように渡してきた。
「ほら。世界に一本だけの大事な鍵。ちゃんと持ってなよ」
「ありがとうございます。あの、ここで開いてみてもいいですか?」
「いいんじゃない?あの人も気にしないだろうし、親父はここに近寄らないし」
僕は錠前に鍵を入れ、少し回す。カチャリと音が鳴り、錠前が外れた。
「では、開きますね…!」
2月15日
今日から日記を始めてみようと思う。今ではあの子たちも一人前となり、私と共に仕事をこなしてくれている。彼らの子供達を見ていると、私の跡取りについて、つい思いを馳せてしまう。やはり朱雀が言うように、若かりし頃の女遊びで、どこかの女性に子供が出来てしまっているかもしれないな。
今日は、書斎の窓辺から綺麗な花が見える。
2月16日
スマイルが怪我を負って外から帰ってきた。妖魔の瘴気に侵されたのか、いつもより目が朧気だった。薬を煎じて飲ませたが、効果があるかは分からない。
今日は花を見る余裕が無かった。
2月17日
今日は墓参りも兼ねて秘密基地に来た。あの花がよく咲いている。去にしを向けば、いつも見える小さな花も、この場所には沢山咲き誇っている。いつか、この日記を読んだ私の子にも見つけてほしいものだ。
2月18日
■■の秘密。■■の■■。私はいままで何をしていた。彼らに■■を、■■の存在をどう伝えればいい。こんなことなら、■■■■の■■など、■■■■なければよかった
あの花は、■■だ。
2月19日
・・・
■月■■日
■■■が訪ねてきた。なんでも、私に関する■■を見たという。私は■に頼み事をした。どうか、私の
「シャークんさん…」
「…」
その日記は、所々何かに塗り潰されたように見えなくなっているのに、その塗り潰している墨は、生きているかのように蠢いていた。
「あの人、少し特殊な戦い方をしてたんだ」
「というと?」
「武器が筆で、墨汁を使ってた。妖魔を黒く塗り潰してたんだ」
「じゃあ、前任には墨を操る力がある?」
僕は改めて日記を眺める。角度を変えても、逆さにしても、その墨は書かれた内容を守るように動いた。
「最後の日以降は白紙ですね。これはいつのことなんでしょう」
「さあな。塗り潰された言葉、文字数で考えてみるか?…ん?待てよ」
シャークんさんは僕の闢邪神話を開いた。
「シャークんさん?」
「…あった」
人は何故生きるのか。生きるために知恵を使い、欲するがあまりに死を迎える。
そんな人間を見捨てない神がいた。天災、疫病、あまりに多くの苦を背負い、神に恵みを乞う人間を憐れに思った神は遣いをやった。しかし、その遣いは大変怠惰で、人間を救う気などなかったのだ。人は怒りを禍ではなく遣いに向けた。いつしか遣いは人間に害をなす邪となっており、初めの禍は金烏を盗み、玉兎を幽閉したことだった。人は光のない世界を彷徨い、昼夜の知らない子供が産まれていった。金烏を知る老人は神に祈り、子孫も真似るように祈った。その声は神に届かず、傲慢な遣いを止める術を持たない人間は、諦めるようにその世界に甘んじた。それを破ったのはとある幼子だった。幼子は寝ている遣いに近付き、盗まれた金烏を解放したのだ。それに気付いた遣いは、この地に呪いをかけた。それは、村から出ると死ぬ呪いだった。人間は戻った光に歓喜し、盛大に祝った。幼子を英雄として崇め、伝記を記し、外にも知らせようとした。しかし、呪いを知らない数多の人間が死に至り、遣いの理不尽を痛感した。元々持っていた物が戻っただけ。だというのに、取り戻したら代価を払うことになるとは誰が考え付いただろうか。そんな遣いにも限界が来た。形がある以上、死からは逃れられない。最期の瞬間、誰にも気付かれないよう自身を四つに分け、欠片を隠した。独り最期を迎えた遣いは、誰にも見られず朽ちたのだ。遺された欠片は美しく、人間を魅了する輝きを持っていたが、誰にも知られずに砕けていった。
今日も戻った金烏が去り、玉兎が顔を出した。
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#なんでも許せる人向け
❅雪華❅
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