どう言葉で表現したらいいのだろう・・・・
アリスの頭に最初に浮かんだのはそれだった
広すぎるぐらいの母屋の正面ドアを、明が開けた瞬間異様な匂いが漂って来た
玄関には靴が散乱していて足の踏み場もなく
形が見えないが多分下駄箱であろう横に、ゴルフバッグが立て掛けてあって、そこにはドロドロになった男物の靴下が、かけられている
もちろん洗っていない
異臭を放っているのはこの靴下と、廊下まで転がっている靴のせいだろうだろう、現時点で下駄箱はその機能をまったく発揮していない
母屋の中は薄暗く、玄関のすぐ横がキッチンになっていて少し覗いてみた
やはりここも足の踏み場が無く、色んな物が地層のようにアリスの胸丈まで積みあがっている
「こっちだよ~~!あ・・ありすぅ~」
明がどこからか自分を呼んでいるが、どこにいるかわからない
とにかく靴は脱がずに、アリスはえいっと母屋に足を踏み入れた
ゴミ屋敷と化している、散らかり放題、荒れ放題だ、とても人が二人住んでいるとは思えなかった
やけに長いテーブルが、リビングかキッチンか、わからない部屋の真ん中を占めていて、その上には雑多なものが散乱している
所々にある汚れた皿が目に入らなければ、誰かがここで食事をしたことが信じられなかった
「まぁ・・・・どうしましょう・・・・」
最初の衝撃の波がいくらかおさまってくると、不安な気持ちがどっと押し寄せた
アリスは本当に不思議の国に迷い込んで来た気分だった、ゴミの国だ
リビングまで見渡す限りの、隅という隅にはゴミの山が出来ている
古い新聞紙、空になった空き缶、おびただしいペットボトルの山、汚れた洗濯物、本、スナック菓子の袋
、訳の分からない箱、アルミパック、物・・・物・・・物・・・
家の中身をすべて床にぶちまけてひと混ぜした後、それらを足でよけて歩くための道を作ったといった様子だ
ここまでの凄まじい散らかりようは、アリスは生まれて初めて見た
そのゴミの中から明がひょっこり現れた
「ハイ!アリス!結束ロープ」
途方に暮れるアリスに笑顔で明が、アリスの所望している結束ロープを差し出した
もしかしたら北斗さんは、これを私に見せたく無かったのではないのかしら
いつもキチンとしていて、物おじしない、逞しい完璧な私の旦那様の北斗さんのイメージが、アリスの中で一気に崩れた
「ねぇ・・・アキ君・・・・最後にお兄さん達がお掃除したのって・・・いつ? 」
「お掃除って何? 」
「ダメだこりゃ 」
アリスはおでこをペシンッと自分で打った、なんだかおかしくなった。やっぱり北斗さんも人間なんだ
もしかしたら彼は一生懸命アリスの前で、無理をしているのかもしれない
一旦心が決まると、アリスは周囲の散らかりぶりをざっと目であらためた