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おねつ
今日は朝から、莉犬の様子がなんだか変だった。
熱っぽい頬に、ぐずぐずの鼻声。眠気も強いのか、ずっと俺にぴったりくっついて離れない。
「しんどいの?おねつかな」
「……んーん……ちょっとだけ、さみしいの」
そんなことを言いながらも、抱っこされるとすぐに目を閉じて、こてんと寝てしまった。
──でも夜。
ぐずぐずが爆発した。
「やだっ!くすり、のまない!」
「ふく、きがえないのっ!」
「ねるのも、やだぁ!!」
ちっちゃな手でぺしぺしソファを叩いて、目にはぽろぽろ涙。
「莉犬、しんどいなら寝なきゃ、つらいままだよ」
「やなのっ、やなのっ……」
やっとのことで、泣き疲れて眠った莉犬。
俺も、なんだかだるくて、リビングに布団を敷いて寝てしまった。
【莉犬視点】
──翌朝。
キッチンからいつも聞こえるお水の音が聞こえない。
「……さとちゃん?」
布団にぐったりと横たわってるさとちゃん。
顔は真っ青で、呼吸もなんか弱いかも、
俺のおねつうつしちゃった、?
「……ごめんな……ちょっと……ムリだ……」
「さとちゃん……?」
呼んでも、返事がこない。
不安で仕方なくて部屋をうろうろ歩く。
でも、さとちゃんは動かない。
「……やだ……やだやだ……さとちゃん……」
寂しくて、不安で涙がでちゃう。
でも起こさないように声を殺して涙をとめるの。
そんなとき、さとちゃんのスマホを発見!
なーくんに、たすけての電話。
スマホのボタン、まだまだ覚えられてないけれど、さとちゃんのためにがんばる。
「なーくん……」
『莉犬くん!?どうしたの?』
「……さとちゃん、ねんねのまんま、起きないの……」
『大丈夫、大丈夫。なーくん今すぐ行くから。玄関のロック、開けられる?』
【ななもり。視点】
──ピンポーン。
チャイムを鳴らすと、ふらふらの莉犬くんがドアを開けてくれた。
「……さとちゃんに、いくの……」
「うん、でも、莉犬くんは大丈夫?」
莉犬くんは返事をせず、靴を履こうとふらふらしゃがんだ。
でも、うまく立ち上がれず、手をついたまま固まってしまう。
「……歩けるもん」
「……わかった、無理はしないで」
俺はそれ以上、触れない。
そっと隣にしゃがんで、莉犬くんが崩れても大丈夫なように待っていた。
少しして、莉犬くんの膝ががくんと折れる。
俺が支えようとしたけれど、莉犬くんはびくっと震えて、肩をすぼめてしまった。
「……抱っこしない、の」
「ごめんごめん、びっくりしたね。おててだけ借りてもいい?」
莉犬くんは少し迷ってから、そっと指先を俺の服の袖に引っかけた。
──そのまま、俺は莉犬くんと並んで歩いて、リビングへ。
さとみくんの横に座らせると、莉犬くんはすぐに布団にしがみついた。
「さとちゃん……しんどいの、…」
「うん。しんどそうだね、」
俺は、背中を撫でたりはしない。
ただ、そばにいて、ゆっくりと見守る。
莉犬くんは膝を抱えて、すんすんと鼻をすすりながら、少しずつ力を抜いていった。
あまりにもしんどそうなのでそっと莉犬くんを抱えて寝室へ。
でも、下ろしたあと、莉犬くんは少しピクリと反応して、目をそらした。
「触っていい?」とは聞かず、俺はただ、ゆっくり背中を支えるだけにした。
恐らくだるくて抵抗する力もないのだろう
莉犬くんはぎゅっと袖を握ったまま身を任せていた。
「お薬飲もうか?」
「やだ……やだの……」
「着替えようか?」
「や……」
「ちょっと寝よっか?」
「やああああ……」
イヤイヤが止まらない。
「うんうん、やだね、しんどいね、なーくんがいるから、大丈夫」
その言葉に、莉犬くんの体からすこしだけ力が抜けた。
「……なーくん……やさしいの」
ぽそっとそうつぶやいたあと、
莉犬くんはぐしゃぐしゃの顔で、眠るように目を閉じた。
コメント
2件
最高です…!