テラーノベル
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「 夏 の果 」
もとぱ
大森side
夜の音は昼よりも残酷だ。
小さな音もよく響くし誰の目もないから言葉が 簡単に凶器になる。
帰宅して玄関のドアを開けた瞬間、空気が冷たく変わる。
「 また勝手にどこかいってたの 」
台所からの母の声
怒ってるわけじゃない。ただ何かを吐き捨てるかのような、そんな声音。
「 …学校 」
そう答えただけで足音が近づいてくる。
次の瞬間 頬を打たれた。
力は強くなかったけど、勢いでバランスを崩して壁にぶつかる。
「 嘘ばっかり。あんたが何考えてるかなんて
全部見えてるんだから。 」
言葉は止まらない。
食器がテーブルに叩きつけられる音。窓の隙間から入る車の音。テレビのくだらない笑い声。
全部、僕を責めているようだった。
風呂場に逃げて、扉を閉める。
蒸した空気と鏡の中の自分。
カットバンが剥がれかけてて、その下の痣は前より濃くなっていた。
「 …なんで、まだ生きてるんだろ……、」
ぽつんと漏れた声に自分でも驚くくらい冷たさはなかった。
ただ、静かな確認のような言葉だった。
最近、若井と会う時間だけが呼吸できるような気がしてた。
彼とラムネを飲んだ日、あんなに喉が冷たくてしみたのに嫌じゃなかった。
あの青い瓶と、ビー玉の音。
彼の「またな」って声。
嘘でも、「好き」と言えば、それで少しだけ距離を取れる気がしていた。
本当の気持ちを知られるのは怖いから。
でも、彼はそれでも側にいてくれる。
「 またラムネ、買いに行こーな 」
その言葉を思い出すたびに、胸の奥が痛くなった。
好きだよ、若井。
でもぼくはきっと君の望む形では誰も愛せない。───
#4.「 夜の音 」
んー、不穏… 今度共依存のお話とか書いてみようかな
コメント
1件
ねぇ、好きっ、 なに、天才すぎじゃない、⁇ 言葉が綺麗過ぎるし、こういう展開大好物だし、 omrさんの気持ちめっちゃ丁寧に表現されてるし、 続き楽ちみ過ぎて、やばいっ!!🫣