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第参話【その相手】
その人は、話し始めた。
淡々と、落ち着いた様子だった。
「彼奴は、人の形をしている、――人間だ」
は?、と思った。
人を殺すなんて、人間でも。
絶対に許せない。
それが、自分の両親だから、だが。
「彼奴は、完璧といえる人間だった。
…………人殺しになってしまうまでは。」
「ケーサツ学校?…………お前が?」
「ああ」
そいつは、将来有望な奴だ。
どこに行っても敬い続けられるだろうに、
なぜ、そんなところを選ぶのか。
「………、人を守る仕事が…」
「……、お前にはいい、と両親に言われてな」
こいつは、完璧人間なのだが、
’’親に選ばれて’’しか道を選ばなくなっている。
「そうか。…お前の好きにしろ」
高校も、上を目指して入ったわけではなかった。
両親が、「ここならいいだろう」といったからだった。
俺は、自分で上を目指して入ったというのに。
「………、まあな。」
彼奴は、一発で警察になれる試験を合格し、
本当に警察官になった。
そして、彼奴は’’どんな難事件でも解決する’’、
警察官であるべき姿になっていった。
**
「久しぶりだな」
そう声をかけられた。
彼奴の、その姿は、
血に染まっていた。
「ッ!?おい!!それ、大丈夫かッ?!」
「……?ああ、これか?…
大丈夫、―――返り血だ」
そう、彼奴が答えたとき、
俺の思考は止まった。
「―――――は?」
いや、なんで此奴は、
返り血を浴びている?
彼奴は、’’指図された’’のか?
「両親からこれからお前は好きにしろって言われたからな。
……………………、これが、俺の好きにする、だ」
好きにした結果がこれか?
じゃあ、まだ。
【あのままでよかったのに。】
**
彼奴が殺したのは、夫婦だった。
あれは事件になった。だが一生解決なんてされることもない。
’’彼奴が、一番上にたったから。’’
そして、時効が成った。
だからもう、解決されることはない。
「………、それが、ほんとのこと、だったんですね」
俺は、やっとのことで言葉を絞り出す
でも、その顔《ひょうじょう》は絶望に歪んでいる。
その奴を殺しなんてすれば、いやそんなそぶりを見せたら、
どうなってしまうのかはだいたい予想がつく。
じゃあ、もう仕方がない。
「ああ。そうだ」
そう返事される。
「…じゃあ、自分はもう行きますね」
でも、やるしかない。
それを決めたのは自分自身なんだから。