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こっちの方が気まずいんですけど。
「こんなの……忘れたくても無理じゃん」
見送った元カレの後ろ姿を目で追いながら、はぁ……と小さく溜め息が溢れてしまう。
あとどのくらい時間が経てば、この想いが冷めるんだろうか……と遣る瀬無い気持ちになるばかり。
「仕事仕事。働いて忘れよ」
スーツの下衿を両手で軽く掴んでキュッと直して、気持ちを入れ直す。
こうして自分に言い聞かせないと前に進めないなんて私らしくないけど、今はこれが最強だと思ってる。
それしか方法が見つからないからーーー
***
結婚式に人気の季節は、主に秋。5月も比較的に天候や気温が穏やかもあって予約が入りやすいく、特に大安の土曜日はすぐに埋まる。
だからこの時期、私の仕事も忙しい。
「おめでとうございます!」
挙式を終え、チャペルから出た新郎新婦を階段両端からフラワーシャワーと共に祝福の声を掛けると、『ありがとうございます!』とキラキラ眩い笑みを向けてくれる。
幸せそうなその笑顔が見たくて、私達プランナーは日々真っ直ぐに向き合っているし、この為にやってきてるんだって幸せに感じる。
それは本当なのに、どうして今はこんなにも切ないんだろうーーー
「みんな、お疲れ様」
式が全て終わり来客も見送って後片付けも終了した後、スタッフを集めて私はいつものように声を掛ける。