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夕食を終え入浴も済ませても、寝るまでの時間を有効に活用する為生徒たちは勉強に勤しむ。
夜は自習のため、教室では各々が自由に机に向かっていた。
外は森に囲まれていて、とても静かだった。
時折聞こえる虫の音が心地よく、集中して取り組むことができた。
「そろそろ消灯時間なので部屋に戻ってくださーい」
時計が0時を回る頃、教師がそう言った。
生徒たちがぞろぞろと教室を出ていく。
「雪乃。行くよ」
美希が声を掛けるが、雪乃はノートに視線を落としたまま「もう少ししたら行く」と返した。
「一緒にいようか?」
「ううん、大丈夫。美希は先に寝てて」
心配そうにこちらを見る美希に、雪乃は笑ってそう促す。
渋々といった感じで、「遅くならないようにね」と言い残し美希は教室を出ていった。
雪乃は薄暗い教室で1人、教科書とノートを広げてシャーペンをクルクルと回す。
勉強なんてしてこなかったから、やり方が分からなくて難しい。
この学園に転入できたのも、春翔が鬼のように一から勉強を叩き込み、試験に出そうな所の山を張ってくれていたから。
生きていくための最低限の教養はある。
でも私が得たのは、任務遂行のための一般人には不必要な知識ばかり。
公式なんて知らないし、定められた文法なんて意味がわからない。
作者の気持ちなんて、尚更。
はぁ、とため息をついてペンを口元に当てていると、何かの気配がした。
チラッと教室を覗いたのは、チラーミィだった。
「ちらぁ?」
不思議そうにこちらを見て、トコトコと近付いてくる。
そして雪乃の机の上に乗り、尻尾をパタパタと振った。
「…どこから来たの?」
雪乃は首を傾げる。
「ちらちらぁ♪」
チラーミィは楽しげに笑う。
誰かのポケモンだろうか。
野生なら放っておいてもいいが、迷子なら届けてあげないと。
ひょいっと抱き上げ、膝に抱える。
チラーミィは何の警戒もなく嬉しそうに鳴く。
そしてふわふわの尻尾で雪乃の頬を撫でた。
「ちらぁ」
それはとても心地よくて、何故だか凄く落ち着いた。
まるで不安を拭い去ってくれるかのように、チラーミィは頬を撫で続けた。
コツコツコツ
そんな中、誰かの足音が廊下に響いた。
「チミィ?」
チラーミィに続き、ひょこっと誰かが雪乃のいた教室を覗き込んだ。
「げ」
「うわ」
教室を覗いたのは、チーノだった。