平凡な自分が嫌だった。
勉強も、運動も、何もかもが平均で。
スリルのない生活をだらだらと過ごす日々だった。
ある日、いつものように街をぶらぶら歩いていると、一人の人間が声をかけてきた。
「あのぅ、すみません」
「はい?」
髪をツインテールにした、女の子だった。
ツインテールだなんて、街中でやっていたら人の目を引くのに、この子はその髪型がとても似合っていて、
当たり前のように感じた。
「これ、試してみませんか?」
そう言って、女の子が差し出したのは一つの林檎。
「え、何ですかこれ」
「ふふ。『転生林檎』ですよ。名前の通り、これを齧る度に他の人間に転生できるんです」
「はァ?」
何を言っているんだ。この人は。
頭がおかしいのか?
女の子の顔を思わず二度見したが、彼女は変わらない可愛らしい笑みを浮かべていた。
その時の私は、きっと心のどこかでスリルを欲していたのだろう。
「買います、ソレ」
私は、如何にも胡散臭い売人から、その『転生林檎』とやらを買った。
普通の見た目の林檎だ。
でも、見つめれば見つめるほどに何か不思議な好奇心に駆られるような気がした。
(まぁ……、暇つぶしに食べてみるか)
ただの林檎だったら、その時はその時だ。
私はそっと林檎を齧った。
体に電流が走った。
コメント
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やばいなんかもう好きです、、(?)