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魔族の歴史において、
決して逆らってはならない存在がある。
それが魔神である。
魔神とは種族の名前であり、同時に称号でもある。
もとは魔族として生まれた者が、ある条件を満たし、
存在そのものを変質させた時──
その者は魔族ではなく、魔神という別の種族になる。
それは進化であり、
そして、もはや元には戻れない変質でもある。
魔神は一人で国を滅ぼせるほどの力を持つとされており、
実際に、歴史の中でいくつもの国が彼らによって消えたと記録されている。
魔神は、およそ1500年前に初めて確認された。
そして現在に至るまで、
魔神は常に9人だけ存在している。
この九人は総称して、
**宝淵九帝**と呼ばれる。
淵とは、底の見えない深淵。
帝とは、支配者の意味を持つ。
それはすなわち、
魔族という種の頂点に立つ九つの存在を指す言葉である。
宝淵九帝は、定期的に一堂に会する。
この集まりは、
**魔宴会議**と呼ばれている。
目的は、近況報告、情報交換、
そして魔神同士の交流である。
世界を揺るがす存在同士の会議でありながら、
その場は意外なほど穏やかであると伝えられている。
ただし、いくつかの決まりが存在する。
顔を隠すことは禁止されていること。
互いを本名ではなく、コードネームで呼ぶこと。
本人の許可なく個人情報を明かさないこと。
魔宴会議の最中に大規模な争いを起こさないこと。
これは秩序のための、最低限の約束である。
宝淵九帝のそれぞれには、
宝石に由来するコードネームと、
強さによる序列が与えられている。
現在の九帝は、以下の者たちである。
第一位 ルベリオス(龍魔族) 約530年前
第二位 サフィニオン(龍魔族) 約530年前
第三位 シトリオン(龍魔族) 約530年前
第四位 エメルヴィア(龍魔族) 約520年前
第五位 アレギア(龍魔族) 約160年前
第六位 ローザリル(悪魔族) 約150年前
第七位 アメリオス(霊魔族) 約140年前
第八位 アンヴァル(霊魔族) 約120年前
第九位 クオーツィア(悪魔族) 約100年前
この序列は絶対ではないが、
彼らの力関係を示す一つの指標とされている。
また、上位に龍魔族が多く、獣魔族が存在しないのは、
龍魔族が4つの魔族の分類の中で最も強く、獣魔族が最も弱いためと言われているが、
詳細は定かではない。
魔神は、誰もがなれるわけではない。
その条件は次の二つ。
一つは、
現在の魔神のうち誰か一人を倒し、その座を奪うこと。
もう一つは、
魔神の誰かが死んだ時、他の魔神二人以上の推薦を受けること。
このどちらかを満たさなければならない。
つまり魔神になるとは、
力で奪うか、認められるかのどちらかである。
魔神となった者には、大きな変化が起きる。
本来、生物が持つ固有スキルは一つだけだが、
魔神になると、固有スキルが二つに増える。
生まれ持ったスキルは、血筋や環境に影響され、
本人の性格を形作るとされている。
だが魔神となって得るもう一つのスキルは、
その者の人生、性格、思想、信念、願い──
そうした存在そのものを反映して生まれる。
そのため、
魔神の力は非常に個性的であり、同じものは存在しない。
もう一つの変化として、魔神はほぼ老いることがなくなる。
だがその代償として、
すべての魔神は宝石病を宿す。
彼らは死の時、必ず宝石になる。
宝淵九帝のコードネームが宝石の名である理由は、
この運命に由来すると言われている。
それは力の象徴であり、
同時に、逃れられない終わりの象徴でもある。
魔宴会議には、もう一つの存在がある。
**法執傀**と呼ばれる人形である。
法執傀は感情を持たず、
ただ命じられた役割を果たす。
魔神を迎えに行くこと。
食事を用意すること。
会議の秩序を保つこと。
そのすべてを行う。
この人形は、
初代の魔神たちの固有スキルを組み合わせて作られた存在であるとされている。
なぜ作られたのか。
誰が命じたのか。
それを知る魔神は、
もはや誰も残っていない。
魔神とは、支配者ではない。
守護者でもない。
ただ、そこに存在しているだけで
世界の均衡を変えてしまう者たちである。
そして今日もまた、
宝淵九帝はどこかで静かに存在し続けている。
その終わりが、
すでに宝石として定められていることを知りながら。