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kn「………」
今日の朝の教室はいつも以上に騒がしかった。
珍しく何もしてこない奴らも、高くて五月蝿い声で笑い合っている。
そこら中から聞こえてくる会話に耳を傾けてみれば、今日は転校生が来るだとかなんだとか。
そんな、薄っぺらい内容だった。
しかもうちのクラスなんだよ、なんて、無駄に騒いで。
面倒くさいことになりそうだな、と思いつつ、教室の後ろの方に追加された新しい席に目を向ける。
と言っても、それは俺の席の後ろ。
転校生が来るだけでも面倒くさいのに、席が近いだとか、もっと面倒だ。
「はーいみんな、席について」
教室に入ってきた先生の声で、クラスメイトが席に着く。
こういう時だけ、従順。
「もう知ってる人もいるかもしれないけれど、今日は転校生が来る」
その先生の言葉で、一気に教室中が沸く。
男か女かどっちかな、とか。
噂によると男らしいよ、とか。
かっこいいかな、イケメンなのかな、とか。
正直どうでもいい。
俺には関係がない。
少なくとも、こんな俺に絡んでくる馬鹿はいない。
「それじゃあ入ってきていいぞー」
そしてまだ五月蝿い教室に、1人の男が入ってきた。
「………」
kn「………」
しんと静まり返った教室。
同じ制服を身に纏った転校生は、背が高くて、白くて、綺麗な青色の目をしていた。
クラスメイトはその姿を見て、どう思ったのだろうか。
どうせ、かっこいいとでも思ったのだろう。
人は所詮そんなものだ。
br「朱星久玲空(あかぼしくれあ)で〜す」
br「えーっと、好きなことはゲームと寝ること!」
br「よくぶるーくって呼ばれてる!」
br「…よろしくね!」
kn「……………」
初めてには見えない程に慣れている。
そう思った。
普通、転校してくると学校中で騒がれて緊張するはず。
でも彼は、逆にリラックスしているようにさえ見える。
ニコニコしていて、柔らかい雰囲気を放っている。
俺とは真反対の人間だな、なんて。
「それじゃあ朱星の席は、葵瀬良(きせら)の後ろの窓際の席な」
br「は〜い」
「質問だとかは休み時間に済ませておけ」
緩くHRが終わり、後ろの席に転校生が座る。
もう、これだけで居心地が悪い。
チャイムと同時に、クラスメイトが一斉に立ち上がる。
その瞬間、全員がこちらに向かってくる。
俺は静かに席を立ち、教室を出た。
何が起こるのかなんて、わからないわけがない。
朝の吐き気がまだ奥に残っている。
まさかこんなにイレギュラーなことが起こると思わなかった。
重荷が増えた様に感じる。
この箱のことを何も知らない、呑気な転校生。