案の定、俺の席は転校生に群がった奴等で埋もれていた。
なんなら誰かが座っている。
いつもは俺の席なんか近寄ろうともしないくせに。
適当に窓の外を眺めながら、チャイムが鳴るのを待つ。
クラスメイト達の隙間から見える転校生は、ずっと笑っていた。
どうせ、転校生も彼奴等に付いて行くのだろう。
kn「…………」
やっぱり面倒だ。
br「あ、そこの君〜!!」
kn「…………」
br「お〜い?」
「ちょ、お前やめとけって」
br「え、なんで?」
「だって彼奴、…外されてんだぞ」
kn「ッ…」
嫌な予感はしていたが、転校生は俺の事を呼んでいたらしい。
そのクラスメイトの一言だけでわかってしまう。
実際に彼奴以外の口から出されるのは初めてだった。
「そうだよ。あの子と関わったら、自分も無視される」
br「ふ〜ん。そっかぁ〜」
さっきと変わらない雰囲気で相槌を打つ転校生の感情は、どこか感情と思考が読み取りづらかった。
br「まぁ、みんな席戻ってよ!チャイム鳴っちゃうし」
「えぇ〜、そんなこと言わずにさ〜」
「まだ時間あるから良くない?」
br「でも次の授業の準備とか…あと、ここの人口密度やばすぎて暑いんだよね〜w」
「誰かさんと違って人が群がるな」
無意識に一歩群れから離れた。
此奴が転校生に絡まない訳がないと思ってはいたけれど。
聞きたくもない声が、聞こえる。
br「君は?」
「俺?俺は___。」
br「___くんね。覚えておくよ」
「お前ぶるーくとか呼べって言ってたっけ?よろしくな」
br「うん。よろしく」
「っていうか彼奴の近くとかお疲れだわw」
ここから先は聞いてはいけないような気がした。
きっと、俺の名前が出てくる。
聞きたくなくて離れても、此奴の声は大きい。
どこにいたって耳に入ってくる。
本人に聞かせたい、という意思もあるのだろう。
もっとトイレだとかで時間を潰せばよかった。
br「…誰のこと?もしかして、僕の前の席の子?」
「そうそう。きんときっつーんだけど」
br「きんとき?それってあだ名?」
「まぁそんな感じ。本名とか覚えてないわ」
「ひっどwクラスメイトの名前覚えてないの?w」
「お前だって大概だろw」
br「…僕はみんなの名前覚えられるように頑張るけど、間違えちゃったらごめんw」
その時、チャイムが鳴った。
転校生に群がっていた奴等は全員自席に戻っていく。
そしてさっきまで人で溢れていた場所も、今はもぬけの殻の様になっている。
空いた自席に座ると、1つ、視線を感じた。
それが誰からのものだなんてわかりたくもなかった。
きっと、最後の言葉には意味がある。
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