テラーノベル
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朝の光が、部屋の障子から柔らかく差し込んでくる。
滉斗がふと目を覚ますと、すぐ隣に、元貴が安らかに眠っていた。昨夜の出来事がフラッシュバックし、滉斗は胸の奥が熱くなるのを感じた。
元貴が、ゆっくりと瞼を開く。滉斗と目が合うと一瞬、元貴の顔に困惑の色が浮かんだ。
しかし、すぐに昨日のことを思い出したようで、みるみるうちに頬が赤く染まっていく。
「…ひ、滉斗…なんで、まだいたの…?」
元貴の声は、いつものハツラツとしたものではなく、少し恥ずかしそうに震えていた。
滉斗は、そんな元貴の様子が愛おしくて、思わずクスッと笑ってしまった。
「元貴、昨日のこと、覚えてないの?」
滉斗がそう尋ねると、元貴は慌てて顔を背けた。
「覚えてるに決まってる…! あんなに格好悪いところ、見せちゃったんだから…!」
元貴の言葉に、滉斗は首を横に振った。
「格好悪くないよ。俺は、元貴のそういうところも知ることができて、嬉しかった」
その言葉に、元貴は再び顔を上げる。昨日の絶望的な瞳とは全く違い、今は少し照れたような、それでいて、どこか安心したような光を宿している。
「…そう、なんだ」
元貴は、そう呟くと、再び顔を赤らめて布団に顔を埋めた。
滉斗はそんな元貴を見て、微笑んだ。
これまでは、いつも元貴に翻弄されてばかりだったけど、これからは、俺がこの人を支えていきたい。
その決意が、滉斗の心に静かに、そして確かな熱として灯っていた。
その日から、滉斗は頻繁に元貴の部屋を訪れるようになった。
元貴が一人で過ごす時間を、少しでも減らしてあげたい。その一心だった。
ある日、書類仕事に追われる元貴の隣に、滉斗は、黙って座っていた。
「……ねぇ、滉斗」
元貴が不意に、滉斗に問いかけた。
「なんでずっとここに居るの…」
その言葉に、滉斗は穏やかに微笑んだ。
「元貴が一人でいると、寂しいだろうなって思うから」
滉斗の言葉に、元貴は、一瞬驚いたように目を見開いた。
そして次の瞬間、みるみるうちに顔を赤く染め、まるで困った子供のように「うぅ…」と唸りながら書類を机に置き、慌てたように立ち上がった。
「べ、別に寂しくないし!…ううん、そうじゃなくて!もう、いい加減にしてよ!」
元貴はそう叫ぶと、なぜか滉斗の周りをウロウロし始める。そして、まるで追い払うかのように、ちょんちょんと滉斗の肩を指でつついた。
「もー、滉斗がいると気になって集中できないんだから!…ほらっ、あっち行って!」
元貴は、耳まで真っ赤にしながら、そう吐き捨てると、滉斗を部屋の外に押し出すように、そのまま玄関に向かう。
「え?元貴…?」
滉斗は、突然の元貴の行動に、ただ呆気に取られ、混乱する。
(え?何が?なんで集中できないの…?)
元貴が必死に目を逸らしている意味も分からず、ただただ戸惑うばかりだった。
元貴は、そのまま滉斗の背中を無理やり押し、廊下へと追いやる。襖を少しだけ開けた隙間から、困ったような、でもどこか安堵したような複雑な表情で、滉斗をちらりと見る。そしてそのままバタンと勢いよく閉めてしまった。
(成程…四六時中側にいられるのは、迷惑なのか…)
滉斗は、閉ざされた襖を呆然と見つめながら、元貴の矛盾した行動の意味を、必死に探ろうとしていた。
すると、その様子を見ていたのか、向かいの廊下から、組員たちが数人ニヤニヤしながら滉斗に近づいてくる。
「よう、もしや若頭の逆鱗に触れたか?」
「若頭、お前と二人きりだと仕事にならないんだろうな。」
組員たちは揶揄うようにそう言って、滉斗が反論する前に、楽しげに笑いながら去っていった。その言葉に、滉斗の脳内でカチリと何かが嵌まる音がした。
(…もしかして、照れてる…?)
閉まった襖の向こうの元貴を想像しながら、「いやいや…」と自分の思考を否定する。
一人残された廊下で、元貴の可愛らしい一面と、それを見て楽しそうにしている組員たちの存在に、どこか安堵したように微笑んだ。
そして、その夜。
滉斗が帰ろうとすると、元貴はいつものように玄関まで見送りにきてくれた。その顔は、昼間のムキになっていた表情とは違い、どこか寂しげに見えた。
「明日も、来てくれる…?」
元貴が不安げに、切実な眼差しで滉斗を見つめる。
滉斗は、その言葉を聞いて、元貴がまだ心の中に孤独を抱えていることを知る。
「うん。もちろん」
滉斗は優しく、でも力強く頷いた。
「ん、…ほら。おいで」
そして、元貴の不安を全て拭い去るように、黙って腕を広げた。
元貴は、それに何も言葉を返さなかった。じっと滉斗の顔を見つめ、少しだけ躊躇った後、恥ずかしそうに、愛おしそうに、滉斗の胸に飛び込んできた。
滉斗は、そんな元貴を優しく抱きしめ、元貴の頭に顎を乗せた。
「…もし寂しくなったら、いつでも言ってね」
滉斗の言葉は、ただの慰めではない。それは、元貴という存在を心から大切に想い、守りたいと願う、滉斗自身の静かな決意の言葉だった。
元貴は何も言わずに、ただ滉斗の胸に顔を埋めた。その背中は、もう震えてはいなかった。
元貴チャーンが意識し始めちゃってますね👀
コメント
7件
若頭チャーン 意識し始めちゃったんだ〜?😏 そして滉斗?^^ 君はもっと意識してもいいんだよ?? だがしかし……!この鈍感さが可愛いんだよなぁぁ この作品のおかげでテスト勉強頑張れるまじありがとう
かわいいかわいいかわいい😭😭😭😭😭
かわいぃぃぃぃい、、、、いいいやぁぁっぁ まじでやばい ちょっと❤️さんが弱いところ見せたからそれをリードしてあげる💙さんの姿が見えてきて、、、もうほんとに、、、すき、、 はじめのお肩苦しい❤️さんがこんな照れ屋だなんて、、ギャップ萌えでやばいです ありがとうございます!!!