テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
💛ちゃんがさらっといつもの💛ちゃんを演じてるのが、自然過ぎて🤣 器用だけど、自分に不器用そうな2人が好きです❣️
なぜ、死にたいと思う時期があるのか。
生まれた時からそうだった。逆に、なぜこの世に満足できる状態になれるのか。感情の波が、振り幅が全く理解できない。誰かが自分の状態として言うのはまだ良い。「病んだ〜」とか「病みそう」とか。でも、人に「病んでるね」だとか言われるのが大嫌い。
「死にたい」 「辛い」 「寂しい」 「認めて欲しい」
…こんなのが通常だ。
どんなに楽しい事をしても、どんなに好きな事をしても、結局心の奥底でしょーもな、と嘲笑している自分がいる。報われるなんて思わない。
だから、せめて。
せめて、生まれてきた意味を見つけるため、俺は十分な熱量をもった者たちと音楽活動を始めた。順調のはずだった。数年活動した後、1度だけもっと前進するために活動休止とメンバーの脱退を挟んだが、さらに大きくなったミセスは止まらなかった。どんどん自由に、どんどんメジャーになっていく。楽しかった、けれど。
でも、やっぱりあの状態は抜け出せなかった。
◇◇◇
「ねえ、元貴くんって病んでるでしょ?ちょっと私には貴方の愛が重いかなって…。別れようよ」
あーあ。
何度目だっけ。
目の前の相手は気まずそうに丁寧に伸ばした爪を気にしている。俺はため息をついて、頷くと荷物をまとめてそそくさと出ていった。
バタン、とドアがしまった音が響く。
淋しくて、誰かにそばにいて欲しくて、制作期間の間一緒に居てもらった。それだけだった。無神経に育ったヤツらはいつもこう言ってくる。もちろん前置きはした。俺重いよ、束縛しちゃうけどいいの、そんなの頭に入っていない様だった。お前から来たくせに。本当に、どいつもこいつもステータス程度にしか考えてなくて、薄っぺらいなあ。恋に恋してんじゃねえの。
じゃあ俺がそんなヤツらに付き合ってあげる理由はなんだろう。ふと振られたばかりの自宅で、作曲用のパソコンの前に座り1人考える。
…そうか。俺は愛が知りたいんだ。
愛されて、みたいんだ。
親や友からの愛情とも違う。その人のために生まれてきた、と思えるくらいの愛を知りたいんだ。同じ量で愛されてもみたいのか。ふと活動休止を挟む前の曲を聴いてみると、無意識にほぼ全部愛について歌っていた。これを知れれば、俺はやっと心から生きたいと思えるかもしれない。
でも、どうすればいいんだろう。
吹き込まれたような、適当に意気込んだ生命の色を持っているようなやつとはもう付き合いたくない。俺の事を恋愛関係なく思いやってくれていて、仕事の理解があって、それでいて笑顔が素敵な人。そんな人がいいな。探し求め始めて、気がついたことがある。
ぴったりの人材を大分前に見つけているじゃないか。
初めて俺は自分から恋をしようと思った。
◻︎◻︎◻︎
「涼ちゃんはさ、買い被り過ぎて後悔したことある?例えば恋人とかに」
「んー?珍しいね、どうしたの急に。もしかして振られちゃったとか?」
音楽番組の出演があり、若井が席を外して2人で楽屋で休憩中、唐突に君はそう聞いてきた。
元貴からはよく恋人の気配を感じるが、今まであまり長続きしなかった。分かるようになったのは明らかに落ち込んだような、寂しそうな表情が増えたのに気がついた時からだった。自分の気持ちを自覚した最初の頃は顔も知らない相手にモヤついていたが、最近はどうせすぐ別れるだろうと意識すらしなくなっていた。
「……。関係ないでしょ。で、どうなの」
ふざけて聞いただけなのに明らかに機嫌を悪くする。と同時に破局を確信した。触れてほしくないのね。うーん、正直俺は付き合った事はないんだけど、それに元貴の恋愛対象は女性だろうし。適当にいつものキャラを演じ、なりすましで事なきを得ることにする。
「あんまりないかなぁ。なんなら僕が逆に買い被られちゃう方だと思うな」
頭に手を置き、ドジっ子のようにえへへと苦笑いをする。納得したように元貴はそっか、まあ涼ちゃんだもんねと感情が読めない顔で頷く。こいつ本当に失礼だな、お前から誘ってきたくせに。でも、波風立たないよう酷いなあとかそんなに?とかやんわりと返す。ふとこちらを見て、神妙に彼は呟いた。
「俺はね、無駄に失望しない為には付き合うまでに、その人のことを知ることが大事だと思うんだよ。そうしたら変な期待とかしなくない?」
「確かにね。仲良くなる期間は大事だね」
「そうそう。相性とかもあるし」
成程。ところで、さっきからどうしたのだろうか。たまに視線が下に行ったり手いじりをしていたり、ソワソワしているようだ。意を決したのか、君はこちらを見据えて、
「涼ちゃん、俺達もう十分仲良いよね?」
なんて言ってくるもんだから、益々訳分からなくなる。う、うん、まあこんなに一緒にいるとね、と微妙に頷いてみれば、ほっとした表情になった。どういう意味だろうか。
「じゃあ、涼ちゃん。俺と付き合わない?」
◻︎◻︎◻︎
読んでくださりありがとうございます!
この作品、不器用過ぎてイライラしてしまうかもしれません。笑あまりそういうことがないよう裁量に気をつけます。VIPは大森さんがある種のラブソングと仰っていたので、なんだか納得して内容を思いつき書き始めて、初めて連載でR指定を付けることになりそうです。慣れていないので緊張はとてもしていますが…汗
次も是非読んで頂けると嬉しいです。