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__《グリード城》__
「サクラ様、キールです」
「入ってよろしいですわよ」
キールはサクラ王女の部屋に入り扉を閉める。
「ちゃんと誰にも言わず、1人で来たのかしら?」
「はい」
「よろしい」
騎士の訓練中、直接キールはサクラ王女から秘密で直ぐに部屋に来る様に言われたので休憩と偽り訓練を抜けてきたのだ。
「急がせた私が言うのもどうかと思うのだけど……少し臭いがキツいわよ」
「すいません……」
一応タオルで拭いてきたが臭いまでは気が回らなかった様だ。
「今度、レディに会う前は気をつけるのですわよ」
王女は【シクランボ】のティーを一口飲む。
「……」
「本題に入りますわ……まずは質問に答えて」
「はい」
「今回の件、アナタはどう思ってますの?」
「……」
勇者召喚の件は内密に行われている。
だが流石に生贄の数が数だけにグリード城の中の者たちには隠し通すのが無理だ。
「………………正直な所、心が痛みます」
なのでキール達騎士は暴れる罪人などの輸送を手伝わされていた。
罪人だとしても何も知らずに生贄になる者達を運ぶのは辛いものだ……
「それだけ?軽い罪の者や何も悪い事をしていない奴隷に対してもですか?」
「…………はい」
キールは奥歯を噛み締め俯く。
だが仕方ないのだ……王が命令したのだから……
「いいえ、貴方は何も解っていない馬鹿よ」
「はい?」
「止めれる力を持ち、止めれる場所に居たのに止めなかった大バカ者よ!」
「し、しかし!王の命令ですよ!この国の!」
「……」
サクラは黙ってキールを見つめる。
「…………私は覚悟を決めました……貴女が私を責めるために呼んだのなら私は全てを受け入れます」
「そ?“覚悟を決めた”“全てを受け入れる”……ね」
「……」
王女はキールに近付きリストを渡す。
「これは?」
「裏で手に入れた今回の“生贄リスト”よ……罪人と奴隷の名前は私の方で削除してるから良く目を通しなさい」
罪人と奴隷を抜けば残るのは“志願者”……彼等は自ら生贄になるので騎士達は派遣されておらず、教会に全て任せている。
「……!」
だがそこには“知った名前”がどんどん出てきた。
「これは!クバル村の…………まさか!」
キールの悪い予感が的中するのはすぐだった……
「っ!!!!」
「見逃すわけないですわよね」
そこに書かれていたのはキールの妻の名前。
「ば、バカな!!妻にはまだ幼い私との娘が居るんです!その娘を置いて生贄に志願するなど!」
「調べた結果、教会は祈りに来た人達を老若男女問わず呪いによって洗脳して生贄に志願させているみたいですわ」
「バカな!!!!!」
「それもお父様の指示だそうよ」
「っ!!!!!」
キールは後ろを向きドアノブに手をかけたが____
「言っときますが、今から行っても間に合いませんですわ」
「それでも!」
「アナタは覚悟があると言った!!!」
「っ!」
「全て受け入れると!」
「で、ですが!私の妻は!!」
「だから貴方はバカだと言っている!」
「っ……」
「何も知らずに、命令だからと何も考えず!感情を抑え付け!疑問に思っても仕事と割り切り日々死人を運び続けた!貴方の妻だから何なの?さっきも言いましたわよね!覚悟はあると!」
「わ……私は……」
キールは足の力が抜けその場で崩れ、目から涙が溢れる。
「私は……俺は……」
サクラ王女は優しく……そして冷たくキールの頬に手を当てゆっくりとまとわりつく様に甘い言葉を出した。
『あなたの妻を奪った王に復讐をしない?』
「!?」
サクラの真紅の目とその言葉はキールの心にねっとりとまとわり付いていく____
「わ、私は……王に……忠誠を……」
『娘さん……ユキちゃん?だっけ?』
「!?」
『実はユキちゃんだけ助かったのよねー?もぬけの殻になった村に顔を真っ赤にして餓死寸前だったのよ?』
「む、娘はどこに!」
『さっきの答え♪……私聞いてないかも?☆』
「っ………」
『どうやら交渉成立ね♪握手しましょ♪』
差し出された小さな女の子の手をキールは握った。