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エコ

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ラムネ
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第1話:無自覚
ギルドの査定窓口に、ズシリと重い黒光りする材木が置かれた。カウンターの向こうで羊皮紙を繰っていた年配の査定人が、目を見開いて硬直する。
「嬢ちゃん、これは……まさか、黒樹の材木か?」
「はい、そうですけど。これって売れますか?」
リナが当然のように頷くと、男の顔からサッと血の気が引いた。差し出された木肌を震える指先で撫で、喉を鳴らす。
「も、もちろん売れるさ。それより、これをどこで手に入れた……?」
「?……黒樹の森です」
「黒樹の森だと……!? 冗談言うな! あそこは足を踏み入れた奴が一人として生きて帰ってこねぇ『死の領域』だぞ!」
怒号に近い声が買い取り所に響き渡り、周囲の冒険者や商人たちが一斉にこちらを振り返った。査定人は額に冷や汗を浮かべ、黒い材木とリナの顔を交互に見つめている。
(……え。みんなあそこに入ったことないの? ただの森なのに)
リナは背の背嚢を少し担ぎ直し、不思議そうに首を傾げた。
「普通に生えてましたよ。燃えないから、おやじ――ガウルが薪に向かないって嫌がってたやつです」
「薪……っ!? こいつを薪にしようとしてただと!? このレベルの極上耐火材、王都の防具職人が喉から手が出るほど欲しがる高額素材だぞ! お前、マジで生きてあの森から戻ってきたのか!?」
「はい。たまに剛腕猿とか灼鉄竜が暴れて邪魔でしたけど、素材はちゃんと持ってきました」
「灼鉄竜……ッ!?」
査定人は声もなく口をパクパクと開閉させ、まるで目の前に化け物でも現れたかのように腰を抜かしかけた。
(……なんか、変なこと言ったかな。おやじの教え通りにやってるだけなのに)
自分の感覚と世間の異常な温度差に戸惑いつつも、リナはフードを目深にかぶり直し、背の竜骨弓を静かに引き寄せた。
「で、買い取ってくれますか? 安く買い叩くなら、他の店に行きます」
「か、買い取らせていただく! 頼むからうちで売ってくれ!!」
男は弾かれたように金貨の袋を引っ張り出し、ガタガタと手を震わせながらカウンターに積み上げ始めた。かつて「役立たず」と追いやられた都市アルテ・ヴァルで、リナ・アッシュの規格外な噂が広がり始めていた。
コメント
7件
「薪にしようとした」って発想がまず規格外すぎる(笑)。黒樹の材木とか灼鉄竜を「邪魔だった」で片付けちゃうリナの無自覚っぷりが絶妙で、査定人の腰抜かし加減との温度差に思わず声出して笑いました。この世界の常識と彼女の感覚のズレがどう展開していくのか、すごく気になります。ガウルって師匠も只者じゃなさそうですし…。続き、楽しみにしてます!