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最強無敵連合のマフィアパロです。・最強無敵連合とは。
少数精鋭の9人で構成された、マフィア界でも名の知れた最強のファミリー。
一人ひとりが幹部であり、もちろん実力を持っているので圧倒的な連携と戦闘力で敵なしとされている。
ボスであるニキのカリスマによって結束しており、
その絆の強さと統率力が“最強”と呼ばれる理由。
・ニキ👑…最強無敵連合のカリスマボス。ナルシスト気質だけど本当に強く、全員が惹かれてついてきた存在。仲間思いすぎて無茶をしがちでよく怪我する。しろせんせー(ボビー)のことは特別に大切に思っているが、最初は無自覚。
・しろせんせー👾…ニキの右腕であり最も忠実な存在。冷静な判断力と高い戦闘力を持つが、ニキが関わると一気に感情が崩れる。ニキを何より愛しており、守るためなら手段を選ばない重めの独占タイプ。
・その他7人…戦闘・情報・医療などそれぞれの分野で組織を支える存在。
ニキのことを「守るべきボス」であり「大切な仲間」として慕い、
しろせんせーのことは「ニキを最優先にする危うい存在」と理解しつつも信頼している。
さらに、しろせんせーの想いとニキの特別さには全員気づいており、
面白がりながらも見守っている。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
夜の街は静かだった。
ただ一つの建物を除いて。
⸻
薄暗い会議室。
長机の一番奥に、ニキが座っている。
足を組んで、頬杖をつきながら。
「……で?」
軽い声。
でもその一言で、空気が張り詰める。
「敵対組織が動いてるらしいよ」弐十が静かに言う。
「規模はそこそこ。けど――」キャメロンが資料を見つつ話す。
「雑魚でしょ」
最強無敵連合のボス、ニキが被せるように言う。
誰も否定しない。
否定できない。
⸻
最強無敵連合。
たった9人。
でも――敵なし。
「俺らに喧嘩売るとか、センスないよな」
ニキは少し笑う。
その顔は余裕そのもの。
「でもニキニキ、今回はちょっと動き変だよ?」りぃちょが少し不思議そうに言う。
「変?」
「うん、なんかニキニキのこと“狙ってる”感じ」
その言葉で、ほんの少しだけ空気が変わる。
「……ニキ」
低い声。
アンダーボスでニキの右腕のしろせんせー。
ずっと、ニキの右側に立ってる。
腕を組んで、静かに全体を見てる。
「今回は俺が前出る」
「えー」
ニキが露骨に嫌そうな顔をする。
「なんで??」
「お前出たら怪我するやろ」
即答で答える。
「しないって」
「する」
間髪入れない返し。
「いや俺ボスなんだけど」
「知っとる」
「カリスマなんだけど」
「それも知っとる」
「じゃあ俺が行くでよくない?」
しろせんせーは少しだけため息をつく。
「……ニキ」
少しだけ声が低くなる。
「守らせろや」
その一言で、空気が一瞬止まる。
他のメンバーは全員、心の中で思う。
(出たよ、いつもの…)
ニキは少しだけ目を逸らす。
「……別に守られなくても」
小さく言う。
でも。
「俺が嫌やねん」
しろせんせーが被せる。
ニキとしろせんせーの視線が合う。
逃げられない。
「お前が傷つくん」
低くて、静かで。
でも重い。
「……はいはい」
ニキが少しだけ笑ってごまかす。
「じゃあ任せるわ、ボビー」
その呼び方。
少し柔らかい声。
しろせんせーの目がわずかに揺れる。
「……任せとけ」
会議はそれで終わった。
⸻
廊下。
他のメンバーが散っていく中、
ニキは一人で歩いてた。
「ニキ」
後ろから呼ばれる。
振り向く前に、腕を掴まれる。
「ちょ、ボビー?」
そのまま、壁際に軽く押される。
「……なに?どうしたの?」
しろせんせーは、少しだけ距離を詰める。
「ほんまに出る気やったやろ」
「まぁ、状況による」
「出すか」
「いやだからボス――」
「関係ない」
被せられる。
「俺はお前が一番大事。」
一瞬、言葉が止まる。
「組とか、敵とか、全部どうでもええ」
「ニキが無事ならそれでええ」
距離が近い。
近すぎる。
「……重いって」
思わず笑う。
でも、しろせんせーは笑わない。
「知っとる」
そのまま、少しだけ顔を近づける。
「やけどやめん、やめれんのよ。」
心臓がドクンと鳴る。
「……ほんと、厄介だなぁ」
「今さらやろ」
少しだけ、沈黙。
「……怪我すんなよ」
ニキがぽつりと呟く。
今度は、しろせんせーが止まる。
「…お前もな」
目が合う。
どっちも、同じこと思ってる。
守りたい。
そのバランスが、少しだけ歪んでる。
⸻
その夜。
例の敵のアジト。
銃声が響く。
しろせんせーは迷いなく撃ち抜く。
一切の躊躇なし。
「……ニキに手ぇ出そうとした時点で終わりや」
冷たい目。
⸻
最強無敵連合の本部では。
ニキは一人、窓の外を見ていた。
「……大丈夫だろ」
自分に言い聞かせるように呟く。
でも。
無意識に、手を握ってる。
(……怪我すんなよ、ボビー)
その願いはきっと届いてる。
⸻
例の組織との抗争が終わり数ヶ月後…
その日は、珍しく外に出てた。
『ボスが一人で出歩くなって何回言えばええんやろなぁ』
朝、ボビーに言われた言葉を思い出す。
『一人で行く意味ある?』
『あるある、たまには息抜き』
『護衛つける』
『いらんって』
結局、押し切った。
いつものこと。
「……まぁ、大丈夫だろ」
軽く呟いて、路地を抜ける。
表通りは人が多い。
だからあえて裏道。
青い空。
人々が賑わう声。
遠くの車の音。
(平和だな)
一瞬、そう思った。
でも
角を曲がった瞬間、違和感に気づいた。
(……人の気配、まあまあ人数多くね)
足を止める。
ほんの一瞬。
次の瞬間、後ろから風を切る音。
「っ!」
反射的に体をひねる。
その横でキラリと光るのはナイフ。
ギリギリで避ける。
「へぇ、さすがボス」
知らない声。
前を見ると、三人。
後ろにも、気配。
(囲まれてる)
「……面倒くさ」
小さく息を吐く。
「やっぱ護衛つけときゃよかった?」
軽く笑ってみせる。
内心は、冷静。
人数は……6、7人。
武器あり。
(まぁ、いけるか)
一歩踏み出す。
でもその瞬間。
視界の端で、何かが動く。
(……煙?いや、)
次の瞬間、白い煙が一気に広がる。
「っ、ガスか」
鼻と口を押さえる。
でも遅い。
(これ、まずいな……)
視界が揺れる。
体が少し重くなる。
「力任せじゃ勝てねぇよ、ボス」
声が遠くなる。
(ちっ……)
無理やり一人、殴り飛ばす。
「まだ動くのかよ」
もう一人、蹴る。
でも。
足に力が入らない。
(やっぱ、ガス強いな)
視界がぼやける。
最後に見えたのは――
複数の影。
気づいたときには、椅子に縛られてた。
「……あー、やられたか」
頭が少し重い。
手足は完全に固定。
部屋はコンクリート。
窓なし。
電気は一つ。
(地下か)
「目覚めたか」
目の前に、男。
「最強無敵連合のボス様がこのザマかよ」
「油断しただけだろ」
いつもの調子で返す。
でも。
(完全に囲まれてたな)
単純な戦力じゃなくて、
“捕まえる前提”の動き。
(情報漏れてる?)
考えてる間にも、時間は過ぎる。
「仲間でも呼ぶか?」
男が笑う。
ニキは少しだけ口角を上げる。
「呼ばなくても来るよ」
その言葉は強がりじゃない。
確信。
⸻
同時刻、最強無敵連合の本部。
「……ねえ、ニキニキ遅くない?」
りぃちょがぽつりと呟く。
「連絡もないね」
キャメロンがスマホを見ながら言う。
ファミリー全体に違和感があった。
「位置情報は?」
弐十がキャメロンに聞く。
キャメロンが端末を見る。
「……え?」
「どうした?」
「切れてる」
空気が凍る。
「は?」
「さっきまで動いてたのに、急に」
沈黙。
「……拉致じゃろ」
シードが静かに言う。
その一言で、全員の顔色が変わる。
「場所割れる?」
「最終地点までは」
「十分じゃ」
椅子が音を立てる。
しろせんせーが立ち上がる。
その目。
完全に、怒ってる。
「……どこの組織や」
誰も軽口を言わない。
言えない。
「場所的に、この前抗争したとこかも…」
キャメロンが再度スマホを見ながら言う。
「……あぁ」
理解した瞬間。
「潰す」
低く、はっきり。
「全員準備せい」
その声は、もう普段のしろせんせーじゃない。
「ニキに手ぇ出した時点で終わりや」
空気が、完全に戦闘に切り替わる。
最強無敵連合。
たった9人。
でも――
“ボスを奪われた”時点で。
それはもう、ただの組織じゃない。
ファミリー全員、ブチギレてる。
そしてその中心にいるのは――
「……待っとけ、ニキ」
ニキの右腕、しろせんせー。
今までで一番、危ない顔してる。
⸻
突入の合図は、なかった。
「行くぞ」
その一言で、全員が動いた。
扉が蹴り破られる。
鉄の軋む音。
その直後に鳴り響く銃声。
視界に入る敵は、全部“障害物”。
撃つ。
倒れる。
進む。
「右側クリア!」
弐十が銃を構えながら言う。
「前潰した!」
シードがマシンガンを持ちながら言う。
「裏口封鎖したよ〜」
りぃちょは前線にこそ出ないが、誰もできないサポートをする。
連携は完璧。
迷いも、躊躇もない。
でも――
その中心。
しろせんせーだけが、異質だった。
「……邪魔や」
声が低い。
冷たい。
撃ち方が違う。
頭を撃ち抜く。
急所だけじゃない。
確実に“殺しにいってる”。
「せんせー飛ばしすぎじゃろ」
シードがしろせんせーの横に立ちながら言う。
「黙っとれ」
短い一言。
でも、温度がない。
(……これはまずい)
誰もが思う。
でも止めない。
止められない。
⸻
奥へ。
奥へ。
血の匂いが濃くなる。
「……おるな」
扉の前。
一瞬の静寂。
次の瞬間、蹴り破る。
ドンッ!!
中にいた敵が振り向く。
「っ!!」
でも、遅い。
撃つ。
一発で沈む。
その奥。
「……ニキ」
椅子に縛られた姿。
血。
動きが鈍い。
その光景を見た瞬間。
“何かが完全に切れる”
「……誰や」
声が、かすれた声が出た。
奥に立っていた男が笑う。敵組織のボス。
「ようこそ、最強無敵連――」
最後まで言わせない。
撃つ。
肩。
腹。
足。
わざと急所を外す。
「っ、が……!!」
倒れた男の胸ぐらを掴む。
「……お前か」
殴る。
骨の鈍い音。
もう一発。
血が飛ぶ。
「あいつのどこ触った」
また殴る。
何度も。
何度も。
「せんせー!!」
誰かの声。
でも、届かない。
視界には、“敵”しかいない。
「よくもニキに手ぇ出したなぁ!!」
声を張り上げた。
殴る。
蹴る。
叩きつける。
相手はもう抵抗する力もない。
それでも止まらない。
「せんせーやめろ!!」
弐十に腕を掴まれる。
振り払う。
「離せや!!」
目が完全にイってる。
「殺す……!!」
また振り上げる拳。
その瞬間、複数人で押さえ込まれる。
「もうやめて!!」
「もう終わってる!!」
「せんせー落ち着いて!!」
りぃちょ、キャメロン、はとねが押さえながら言う。
それでも暴れる。
「離せやあああ!!」
床に叩きつけられても、なお抵抗する。
「ニキが……!!」
声が震える。
「ニキが……っ」
その瞬間。
「……ボビー」
かすれた声。
全員が止まる。
振り向く。
ニキ。
意識が、かろうじてある。
でも――
「……っ」
そのまま、崩れた。
完全に、力が抜ける。
「ニキ!!」
押さえられていた力を振りほどく。
駆け寄り、抱き上げる。
軽い。
ありえないくらい。
(こいつ、こんな軽かったか…?)
「……おい」
反応がない。
呼吸が浅い。
血が止まらない。
「……嘘やろ」
手が、声が震える。
「おい、起きろや」
「ニキ!!」
返事がない。
「18号!!」
18号がすぐに駆け寄る。
「運ぶ!!今すぐ!!」
ニキをストレッチャーに乗せる。
でも――
しろせんせーは離さない。
「……離して」
18号が言う。
「無理や」
「処置できないよ」
「……死ぬんか」
その一言で、空気が凍る。
18号が強く言う。
「死なせないためにやるの!!」
数秒。
ゆっくり、手が離れる。
「……死ぬな」
小さく呟く。
「絶対死ぬな」
その声は、命令でも脅しでもなくて。
ただの、願いだった。
⸻
最強無敵連合の本部。
数時間後。
医療室。
機械音だけが響く。
ベッドに横たわるニキは動かない。
意識不明。
重症。
「……峠はまだ越えてない」18号
つまり――
“まだ危ない”
しろせんせーは、ベッドの横にいる。
座りもしない。
ただ、立ってる。
「……ニキ」
返事はない。
「……起きろや」
声が、掠れる。
「お前、カリスマやろ」
少しだけ笑う。
でも。
目は、壊れてる。
「こんなんで終わるなや」
手を握る。
冷たい。
「……俺」
言葉が詰まる。
「お前おらんと」
続かない。
「……無理や」
初めての弱音。
「……戻ってこい」
その願いは――
まだ、届いてない。
⸻
医療室は、静かだった。
規則的に鳴る機械音だけが響く。
ピッ、ピッ、ピッ――
しろせんせーは、ずっとそこにいた。
何時間経ったかもわからない。
座ることもなく、
ただ、ベッドの横に立って。
ニキの手を握ったまま。
「……ニキ」
何回呼んだかも、もう覚えてない。
返事はない。
動きもしない。
「……起きろや」
声が掠れる。
「お前、こんなんで終わるやつちゃうやろ」
少しだけ笑う。
でも、それは完全に崩れてる笑いだった。
「……なぁ」
握る手に、力が入る。
「俺、ちゃんと守る言うたのに」
喉が詰まる。
「……守れてへんやん」
ぽつりと落ちる。
「……なんでやねん」
視界が滲む。
「なんでお前なん」
震える声。
そのとき。
ピクッ
わずかに、指が動く。
「……っ」
一瞬、息が止まる。
「……ニキ?」
目を凝らす。
もう一度。
わずかに、動く。
「……おい」
顔を近づける。
「ニキ…?」
ゆっくり。
ほんの、ほんの少しだけ。
まぶたが、動く。
「……っ!!」
「ニキ!!」
声が震える。
ゆっくり、目が開く。
ぼやけた視線。
焦点が合わない。
「……ボ……ビー?」
その一言で。
張り詰めていたものが、全部、崩れた。
「……っ」
声が出ない。
「……っ、あ……」
喉が詰まる。
そのまま、額をベッドに押し付ける。
「……よかった……」
震える声。
「……よかった……っ」
涙が、落ちる。
止まらない。
「お前……っ」
ぐしゃぐしゃのまま、顔を上げる。
「どんだけ心配させんねん……」
声が崩れる。
「……死ぬか思ったやろ……っ」
ニキは、ぼんやりしたままそれを見る。
「……泣いてんの?」
かすれた声。
「泣いてへん」
すぐ答える。
でも涙は止まってない。
「……嘘つけ」
少しだけ笑うニキ。
その表情を見た瞬間。
また、涙が溢れる。
「……ほんま、やめろや……」
手を強く握る。
「もう、こんなん二度とすんな」
震える声。
「次やったら……」
言葉が詰まる。
「……俺、壊れる」
静かに落ちる本音。
ニキは少しだけ目を細める。
「……もう壊れてるだろ」
その軽口に。
思わず笑ってしまう。
でも同時に、また涙が出る。
「……ほんま、アホやな」
そっと、ニキの手を額に当てる。
「……戻ってきてくれて、ありがとう」
その声は、優しくて。
でも、どこまでも重かった。
ニキはゆっくり目を閉じる。
「……寝る」
「ちゃんと起きろや」
「起きるって」
少しだけ笑う。
そのやりとりが。
“生きてる”証みたいで。
しろせんせーは、もう一度だけ強く手を握る。
二度と離さないみたいに。
⸻
目が覚めてから、数日。
ニキはまだベッドの上だった。
点滴、包帯、固定具。
体を少し動かすだけでも、痛みが走る。
「……暇」
ぽつりと呟く。
その瞬間。
「動くな」
即座に声が飛んでくる。
「いやちょっと体勢変えただけだろ」
「それがあかん言うとる」
ベッドの横。
しろせんせー。
ずっといる。
本当に、ずっと。
「……ボビーさ」
「なんや」
「仕事は?」
「これが仕事や」
即答。
「いや絶対違うだろ」
「ニキ見とくほうが大事や」
真顔。
(重……)
でも、どこか安心する自分もいる。
そのとき、ドアが開く。
「ニキニキー!大丈夫ー?」
りいちょが心配そうに駆け寄ってくる。
「顔色は悪くないね」
キャメロンが安心したように言う。
他のメンバーもぞろぞろ入ってくる。
「やっと喋れそうじゃの」
「無茶しすぎなんだよ」
「ほんと心配したんだからね」
シードが笑いながら言い、弐十、キルシュトルテが呆れたように言う。
一気に賑やかになる。
「いやー、さすがに今回はやばかった」
ニキが笑う。
その瞬間。
「笑うな」
低い声。
全員、ピタッと止まる。
しろせんせーが、ニキの横に立ってる。
「腹に響くやろ」
「いやそんなレベルじゃ――」
「響く」
言い切る。
空気がちょっとだけ張る。
(出た、過保護モード)
全員が思う。
りぃちょがニキに近づこうとする。
「ニキニキ〜ちょっと触っていい?」
その瞬間。
スッ
しろせんせーが間に入る。
「やめとき」
「え、なんで!?」
「まだ安定してへん」
「いや触るだけじゃん!?」
「ダメ」
即答。
りぃちょが不満そうに頬を膨らませる。
「過保護すぎでしょ〜」
「当たり前やろ」
一切ブレない。
「……ニキ」
しろせんせーが少しだけ屈む。
「しんどないか?」
「別に」
「ほんまに?」
「ほんとだって」
じっと見られる。
逃げ場がない。
「……ちょっとだけ」
「ほら見ろ」
すぐに体勢を整えられる。
クッションを直されて、毛布をかけ直される。
「いやそこまでじゃ――」
「黙っとけ」
優しいのに、強引。
(なんだこれ……)
少しだけ、恥ずかしい。
でも。
「……ありがと」
小さく言う。
その瞬間。
しろせんせーの動きが止まる。
「……なんや急に」
少しだけ目を逸らす。
でも耳が赤い。
「いや普通に」
「……調子狂うわ」
小さく呟く。
そのあと。
他のメンバーが話しかけようとするたびに。
「長話すんな」
「近づきすぎ」
「疲れるやろ」
全部、止められる。
「せんせーうざい!!」
りぃちょが頬を膨らませながら言う。
「うるさい」
「いや独占欲やばすぎでしょ」
キャメロンが呆れたように言う。
「今さらじゃなーい?」
弐十が笑いながら言ってきた。
シードが少しだけ笑う。
「……まぁ、気持ちは分かるがの」
その言葉に、しろせんせーは何も返さない。
ただ。
もう一度、ニキの手を軽く握る。
「……もう離さん」
小さく、でもはっきり。
ニキは少しだけ目を見開く。
「……へ?」
「二度と同じこと起こさせへん」
真っ直ぐな目。
「お前は俺が守る」
重い。
でも、揺るがない。
「……ほんと重いな」
そう言いながら。
手は、振り払わない。
むしろ。
少しだけ、握り返す。
その事実に気づいてるのは――
しろせんせーだけだった。
⸻
それは、ほんの些細な瞬間からだった。
「ニキくん、だいぶ顔色戻ってきたね」
「そろそろ歩けるんじゃない?」
キャメロン、キルシュトルテが安心したように言う。
医療室のベッドの上。
ニキは背もたれに寄りかかって座っている。
「まぁ、ちょっとぐらいなら――」
「ダメ」
被せるように即答。
しろせんせー。
今日も定位置。
「いや“ちょっと”って言ったじゃん」
「その“ちょっと”で倒れたやろ」
「倒れてねぇって」
「倒れかけた」
「細かっ!」
でもそのやり取り。
完全に“いつもの距離”。
(……いや、近くない?)
りぃちょが内心で思う。
そのとき。
ニキが少し体勢を崩す。
「……っ」
次の瞬間。
ガシッ
しろせんせーが即座に支える。
「言うたやろ」
距離が、近い。
近すぎる。
ほぼ抱き寄せてる。
「いや今のは普通にバランス――」
「黙っとけ」
そのまま、ゆっくり元の体勢に戻す。
手は離さない。
(……え?)
りぃちょとキャメロンの目が合う。
(今の、普通じゃなくない?)
シードは、静かに見てる。
(あー……なるほどの)
そのあとも。
「水」
ニキがぽつりと言うと。
「ほら」
すぐにストロー付きで差し出される。
「いやそこまでしなくても」
「むせるやろ」
「むせねぇよ」
「むせる」
そう言いながら、軽く背中を支える。
(距離!!)
完全に介護レベル。
でも違う。
“ボスとアンダーボスの関係以上”の何か。
そして決定打。
「……ボビー」
ニキが少しだけ小さい声で呼ぶ。
「なんや」
「ちょっとだけ、手」
一瞬、全員の動きが止まる。
「……痛い?」
「いや、なんか落ち着かなくて」
その瞬間。
しろせんせーの表情が、変わる。
「……ほら」
当たり前みたいに、手を差し出す。
ニキがそれを掴む。
自然すぎる。
迷いがない。
沈黙が流れる。
「……え、ちょっと待って?」
「え、なに今の」
「いやいやいや!!」
「……これは」
他のみんなが困惑したように言う。
全員の視線が集まる。
でも当の二人は。
「……落ち着く?」
「まぁ、ちょっと」
普通に会話してる。
手、繋いだまま。
(確定じゃん)
りぃちょがキャメロンの腕を掴む。
「ねぇこれさ」
「うん」
「付き合ってるよね?」
「付き合ってるね」
弐十も頷く。
「付き合ってるねー」
はとねも小さく笑う。
「やっとかって感じ」
18号はため息。
「遅いのよ」
キルシュトルテが静かに言う。
「もしかしてこれ本人たちだけ気づいてないパターンじゃない?」
シードがふっと笑う。
「……まぁ、ええんじゃない?」
少しだけ、優しい声。
その空気の中で。
ニキがふと顔を上げる。
「……なんか静かじゃね?」
「いやあいつらがうるさいだけ」
しろせんせーが普通に返す。
そのやり取りも。
距離も。
全部が。
もう完全に。
“恋人”だった。
そして誰もが思う。
(これ、もう言わなくていいやつだ)
でも。
(絶対そのうち自覚して騒ぐ)
未来も、全員見えてる。
⸻
ニキの怪我が治ってから、数週間。
本部の空気は、完全に元に戻っていた。
……いや、正確には。
“戻ったように見えてるだけ”
「ニキニキ〜!」
「お、元気そうじゃん!」
りぃちょと弐十が言う
いつもの日常。
でも――
「ボビー、隣いい?」
「当たり前やろ」
自然に、隣に座る。
距離ゼロ。
(はい確定〜)
りぃちょとキャメロンが目で会話する。
そして。
「ねぇニキニキ」
「ん?」
「せんせーといつから付き合ってるの?」
「……は?」
ニキが固まる。
「いやいやいやいや」
「え、違うの?」
キャメロンが不思議そうに言う。
「違うだろ!?」
「でもあの距離感で?」
「普通じゃないよね」
弐十、キルシュトルテが言う
一斉に詰められる。
「いや普通だって!」
その瞬間。
「どこがやねん」
しろせんせーが横から冷静にツッコむ。
「いやお前も否定しろよ!?」
「なんで」
真顔。
「なんでって……!」
言葉に詰まる。
その様子を見て、全員が確信する。
(あ、これもう時間の問題だ)
⸻
数日後。
取引現場。
ニキも復帰して、軽い顔出しだけの予定だった。
「無理すんなよ」
しろせんせーが小さく言う。
「大丈夫だって」
そのやり取りも、もう自然。
そのとき。
「しろせんせーさん、ですよね?」
女の声。
振り向くと、取引相手の関係者らしい女性。
距離が近い。
妙に。
「……なんや」
「ずっと気になってて〜」
腕に、触れる。
その瞬間。
「……っ」
ニキの中で、何かが引っかかる。
(……なんだこれ)
モヤッとする。
視線が勝手にいってしまう。
近い。
触ってる。
笑ってる。
(……いや、別に)
関係ない。
はずなのに。
「……ボビー」
気づいたら、呼んでた。
しろせんせーが振り向く。
「なんや?どうしたん?」
「ちょっと来て」
無意識に言ってしまった。
そのまま腕を引く。
女の手を、外させる形で。
「……ニキ?」
「話ある」
低い声。
自分でもびっくりするくらい。
⸻
そのまま少し離れた場所へ。
「どうしたん?」
「……ああいうの、やめろよ」
「は?」
「近すぎ」
しろせんせーが固まる。
「……誰に言うとる?」
「お前に決まってんだろ」
ムッとした顔。
しろせんせーの口元が、少しだけ上がる。
「……それ、どういう意味や」
「どういうって」
言葉に詰まる。
(なんでこんなこと言ってんだ俺)
でも、止まらない。
「……触らせんなよ」
完全に“独占欲”だった。
「……ニキ」
一歩、近づかれる。
「それ、自覚ある?」
「……は?」
心臓が、跳ねる。
「俺に独占欲出しとるで」
「違……」
否定しようとして、止まる。
(違く、ない……?)
さっきの感情。
全部。
「……っ」
言葉が出ない。
その様子を見てしろせんせーが、完全に確信する。
「……もう逃がさんで」
「え」
そのまま、腕を引かれる。
壁際に追い込まれる。
距離が、一気に詰まる。
「お前、気づいてへんだけで」
「ずっと俺のことが気にしてる」
「……そんなわけ」
「ある」
「やから」
少しだけ、息がかかる距離。
「ちゃんと自覚せぇ」
心臓がうるさい。
逃げ場、ない。
「……俺は」
しろせんせーが、まっすぐ見る。
「最初から、お前しか見てへん」
その言葉。
重くて、真っ直ぐで。
逃げられない。
「ニキ」
名前を呼ばれる。
「好きや」
静かに。
「ずっと」
時間が止まる。
ニキは、少しだけ目を伏せる。
頭の中に浮かぶのは――
守ってくれたこと。
そばにいたこと。
離さなかった手。
全部。
「……っ」
小さく息を吐く。
そして。
「……知ってた気がする」
顔を上げる。
「でも、気づかないふりしてた」
少しだけ笑う。
「だって重いし」
「今さらやろ」
「それな」
少しの沈黙。
「……俺も」
言葉を選ぶ。
「お前が他のやつといるの、嫌だった」
「さっきのでわかった」
まっすぐ見る。
「だから」
少しだけ照れながら。
「……いいよ」
「俺も、お前がいい」
その瞬間。
しろせんせーの表情が、崩れる。
「……ほんまに?」
「何回言わせんだよ」
そのまま、強く抱き寄せられる。
「ちょ、苦し――」
「無理」
離さない。
「もう離さへん」
その声は、嬉しさと執着が混ざってる。
少しだけ抵抗して。
でも。
「……まぁ、いいけど」
結局、受け入れる。
⸻
数分後。
戻ると全員がいた。
そして。
「……で?」
「どっちから?」
「告白した?」
ニヤニヤが止まらないりぃちょ、キャメロン、はとねが聞いてくる。
「……うるさい」
ニキが顔を逸らす。
その隣で。
しろせんせーが当たり前みたいに肩を抱く。
「付き合うことになった」
一瞬の静寂。
そして。
「やっぱり!!!!」
大騒ぎ。
「遅すぎ!!」
18号がやっとかみたいな表情をして言う。
「知ってたけどね」
「おめでと!!」
キルシュトルテ、弐十が笑顔で言う。
シードも、少しだけ笑う。
「……幸せになれや」
ファミリーができる前からニキと一緒にいたシード。
みんなより前に出会っていたシードは思うことがあるのであろう。
その言葉に。
ニキが少しだけ笑って返す。
「ありがと」
その隣で。
しろせんせーは、もう一度だけ強く引き寄せる。
「……絶対離さへん」
今度は、ちゃんと“恋人”として。
最強無敵連合のボスと、その右腕。
そして――
誰にも邪魔できない関係になった。
コメント
2件
こういうパロだいすき、😭😭💕 ありがとう結婚しましょう