ある日の夜中、寝癖のついただらしない男が、配信中の文字が映ったモニターの前であくびをする。
「ふぁあ。始まったか?」
滑落日向。
自称天才のマッドサイエンティスト。
二浪してしまい、二十五歳で大学を卒業。
その後上京し、バイトをしながら、アパートの加村親子の隣の部屋で、一人暮らしをしている。
加村には、いつも夜中うるさいと注意されているが、どっこいどっこいである。
好物は、加村のグラタンとカップ焼きそば。
「さーて今日ご紹介するのはこちら!ででん」
No.1新-幸運爆弾
「新-幸運爆弾でーす!この前の旧型は、ほんの少し失敗しちゃっただろ?だから改良に改良を重ね、ついに完成したんだ」
滑落は、ドヤ顔で自慢げによく分からない機械物体を、両手で抱え、モニターに映るよう胸まで上げた。
「まぁ、昨日は旧型と同じなんだがな。こいつの後ろにあるチェーンを抜いて、床に落とすと、衝撃で爆発する。そうすると幸せが舞い込んで来るってわけ。」
説明を続けるたびに、滑落の声のトーンは上がっていく。
「はいはい。それでは!これから部屋を出て、実験と行きますか。」
長いコードで繋がれたパソコンを、開いたままの202号室のドアの前に設置し、爆弾を手に持った滑落は、カメラに向かって右の口角を上げた。
「それでは行ってみよう!」
チェーンを引き抜いた爆弾を、その場に落下させた。
中心部の緑のランプは、チカチカと周囲をミステリアスな空間へと変えていく。
そろそろ爆発しそうな頃、201号室のドアが勢い良く開き、パジャマ姿の加村が、機嫌悪そうに出てきた。
「ち、ちょっと加村さん!今配信中なんです!」
「その配信ってやつがうるさいんだよ!息子が起きちゃうでしょうが!って、なんだこれ!」
今にも爆発しそうな爆弾を見た加村は、目を丸くし、ドアに背をピタリとくっつける。
「ばん」
しかし、爆弾はとてもショボい音を立てて爆発した。
「あ、あれ?」
2人は、恐る恐るひびの入った爆弾をのぞき込む。
すると、爆弾の側面が抜け、ポッカリ穴が開き、中から大量のキャンディーがこぼれ落ちた。
「滑落、何これ?」
「あっ、えっと。俊真くんにどうぞ」
続く
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