TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

にきりちょ




仮病

暴言、罵倒表現1部あります

伽羅崩壊注意










「 りぃちょ 」

「 もう撮影始まるんだけど 」




電話越しでも感じ取れるほどの怒りを

放つニキニキに、俺は言葉が出なかった


いや、出せなかった。既に息はしずらくて

鼓動早く胃もなんだか苦しい




「 また休むん ? お前 」


「 どーせ仮病なんだろ 」



「 … ごめんなさい 、 」


「 胃が痛くて 」



「 今日のスケジュール台無し 」


「 もうちょい反省しろや 」




怒声を永遠と浴びせられるこの環境に

段々と力が抜け耐えられなくなる


俺の所為で撮影が水の泡になって、皆の

貴重な時間を奪って、自分は休んで


罪悪感で今にも潰れそうな俺には誰も

気付くわけもなく時間だけが過ぎる




「 ごめん 、 なさい … 」


「 ニキニキ 、 ごめんなさい 」



「 謝って済むと思うなよ 」


「 もういいわ 、 お大事に 」




そう言ってさっさと通話を切られる

また、迷惑をかけちゃったな


こうなってしまったきっかけは、

アンチを意識し始めた事だと思う


毎日のようにつく批判のコメント

何度消しても次の日にはそこにある


大抵の事なら傷つかない、跳ね返すという

イメージを背負ってるからこそ


誰にも助けを求めなかった

自分の弱さを、さらけ出せなかった




「 っんぐ" 、 うぁ 、 」


「 ごめ 、 なさ 、ぁ … 」




ただ壁に向かって謝る事しかできない

愚かな俺を、誰が見てくれるんだろうか


もう、正直消えてしまいたい

きっと誰も、俺の事なんか見ていない

血色の悪い自身の頬を伝う涙を

ぐし、と少し雑に拭う


身体は以前より痩せた。食欲も睡眠欲も

何もかもがなくなってきているから 


そんな自身の身体でさえも汚らわしい

弱ったらしい自分をもう見たくない




「 … にき、にき 」


「 さっきは … ごめん 、 なさい 」




そう一言、メールを送信する

これを見たら多分、余計に怒るだろうけど


でも、心の底から反省はしてる、

ごめんねニキニキ


大丈夫だよ、こんな神様の駄作

さっさと壊してあげる















「 … あー怖い 、 なにこれ 」


「 これで全部本当に 、 終われるかな 」




俺の家はマンションで、屋上は子供達が

遊べるような小さなスペースがある


子供では簡単に乗り越えられない柵を

俺はいとも容易く乗り超える




「 … ニキニキと 、 話したい 」




携帯の電源を入れ固定してある彼の

プロフをさっと押し電話をかける


出てくれるかな、怒ってるかな

不安がいっぱいの中彼は電話に出た




「 なに 、 今更 」


「 あんま話したくないんだけど 」



「 … ニキニキ 、 ごめん 」


「 俺の所為で不快な気持ちにさせて 」



「 わかってんならいいよ 」


「 もういい? 」



「 まって 、 言いたいことがあるの 」



「 言いたいこと ? なに 」



「 俺なんかをメンバーに入れてくれて 、 

     ありがとう 、 嬉しかった 」 



「 … おう 」



「 ニキニキが俺に沢山掛けてくれた言葉 

    今でも覚えてるよ 、 ちゃんと 」



「 ちょ、たんま 」


「 別れみたいなこと言うなよ 」




彼の少し焦りや心配が重なった声を聞いて

何となく、覚悟ができた





「 ねえ、にきにき ? 」


「 世界でいちばん 、 愛してたよ 」



「 は 、 ぁ … ? 」


「 待って、りぃちょ、 !!! 」




彼の言葉を聞き終えた直後、俺は空を

抱き締めるかのように軽く飛んだ


ひゅーっと、冷たい空気が肌を通り抜ける

その間も、スマホは離さずそっと抱き締めた



これで終わりだね。












この作品はいかがでしたか?

165

コメント

3

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚