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狐十
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#塩レモン
comi
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⚠️花吐き病
M!LKのリーダーこと吉田仁人は、塩﨑太智に恋をしていた。
デビュー前からずっと、ライバルだと思っていたはずなのに、太智の明るい笑顔も、関西弁でみんなを引っ張る優しさも、ステージの上で誰よりも輝く姿も、気づけばすべてが愛おしかった。
その想いは年を重ねるたびに膨らみ、胸の奥へ、奥へと積もっていった。
だけど、その恋を口にすることだけはできなかった。
同じグループのリーダーとして、その一言がすべてを壊してしまうかもしれないと、誰よりも分かっていたから。
思いを押し殺すたびに体に異変が起こるようになった。
最初は薄紫色をしたリナリアの小さな花びらだった。
楽屋で太智が他のメンバーと楽しそうに笑っているのを見たあと、トイレで咳き込むと口から花びらが溢れて出てきた。
花吐き病ーーー片思いをこじらせたものが肺に花を咲かせる病。恋を成立させる、諦めるかをしない限り完治しない。
仁人は以前その病気について調べたことがあったので知っていたがまさか自分の片思いがここまでひどいものだとは思っていなかった。
「ははっ….惨めだなぁ….」
だが仁人はリーダーとして絶対に弱みを見せれなかった。
練習中も、収録中も常に笑顔を保ち、メンバーの相談に乗り、太智の前でもいつも通り優しく接した。
しかし病は容赦なく進行していった。
ある日、太智に熱愛報道の噂が浮上した。
女性タレントとの密会写真が週刊誌に掲載され、ネットでは大騒ぎになった。本人自身はテレビの打ち上げのようなものでたまたま2人でいたところを撮られてしまったと否定していたが、仁人は胸が張り裂けそうだった。
その夜、仁人はベッドにうずくまった。
「っ……なんでだよ……」
涙は止まらなかった。
太智が誰かのものになるかもしれない。
そう考えるだけで胸が締めつけられ、息がうまく吸えない。
「ごめん….ごめん…..ごめんなさい….太智….」
好きになってしまって、ごめん。
こんな俺が、お前を好きでいて、ごめん。
その瞬間、喉の奥が焼けるように熱くなった。
「っ……げほっ、げほっ……!」
激しく咳き込でしまった。
口元を押さえた手のひらに、見慣れた薄紫色のリナリアがはらりと落ちる。
だが、その中には見覚えのない橙色の花びらが一枚だけ混じっていた。
「……え」
震える指先で拾い上げる。
それは、マリーゴールドだった。
「っ….また、増えたのか….」
花びらは涙で濡れ、震える指先から静かにベッドへと零れ落ちていく。
好きという気持ちも、嫉妬も、自己嫌悪も。
もう、隠しきれなかった。
仁人は散らばった花びらを見つめたまま、自己嫌悪と絶望に襲われながら眠りへと落ちていった。
病は、仁人の想いを餌にするように日に日に悪化していった。
仁人は毎晩のように血の混じった花を吐いた。
息をするのも苦しくなり、視界はぼやけ、手は震える。鏡に映るやつれた自分を見つめながら、何度も小さく呟いた。
「もう、楽になりたい……」
ある日の仕事帰り、仁人はもう立っていることさえ限界だった。
頭もまともに働かない。
「……こんなに苦しいなら、いっそ告白して振られてしまおう」
恋が叶わなくてもいい。
嫌われてもいい。
この苦しみから解放されるなら、それでよかった。
そう決意した仁人は、その足で太智の家へ向かった。
インターホンを押すと、ほどなくして扉が開く。
「吉田さん??!! どうしたん?? こんな夜に….!」
太智の顔を見た瞬間、張りつめていた糸がぷつりと切れた。
堪えていた涙が、一気に溢れ出した。
「えええ??どうしたん??!?こんなとこでもあれやからな!一回中入ろな。うん。そうしよう!!」
太智はこんなときでも優しいのか、
’好きだなぁ’
そう思ってしまった瞬間発作が起きた。
「っ…!げほっ….!」
手ですぐに口を覆ったはいいものの指の隙間からいつもとは違う赤いチューリップと紫のヒヤシンスの花びらが何枚かひらひらと落ちてしまった。
「え、吉田さんそれ…」
あぁバレてしまった…
「俺、花吐き病なんだよね….」
言葉にした瞬間、胸の奥が痛んだ。
言ってしまった。
ずっと隠してきたものを、太智に知られてしまった。
「….いつから?」
太智の声は、思っていたよりずっと優しかった。
責めるでもなく、驚くだけでもなく、ただ心配している声だった。
「….ずっと前から」
「ずっとって….」
太智の表情が曇る。
「なんで言ってくれへんかったん」
その言葉に、仁人は俯いた。
「言えるわけないだろ….」
震える声が漏れる。
「俺がこんなん言ったら、太智困るでしょ。」
「……..」
「同じグループで、リーダーで….。今まで通りには戻れないかもしれない。」
握りしめた手から、花びらがこぼれ落ちる。
赤いチューリップ。
紫のヒヤシンス。
隠していた想いが、もう隠しきれないほど溢れていた。
「俺….」
何度も飲み込んできた言葉。
何年も胸の奥にしまっていた気持ち。
「俺、太智のことが好きなんだ」
言った瞬間、涙が落ちた。
「ずっと好きだった。」
「….ごめんね、俺に言われてもって感じだよね….。」
謝る言葉しか出てこなかった。
好きになったことも。
苦しませるかもしれないことも。
全部、申し訳なくて。
「俺のこと振ってくれない….??そしたら病気も治ってこれでけじめつけれるから….。」
太智は何も言わず、ただ静かに仁人を見つめていた。
しばらくの沈黙が続いたあと太智から出た言葉はこれだった。
もう振られる準備はできてる….
「俺もさ、吉田のこと好きって言ったら….どう思う?」
「….え?」
頭が真っ白になった。
何度も夢見た言葉。
何度も聞きたかった言葉。
なのに。
「…..やめて」
仁人の口から出たのは、喜びじゃなかった。
「え?」
太智が目を見開く。
「そういうの…..やめてよ」
声が震える。
「俺が花吐き病だから?」
「俺を助けるために言ってるだけじゃないの?」
「そんな優しい嘘、つかなくていいから….」
太智の表情が変わった。
「吉田さん」
「俺、そんな理由で好きって言うほど軽い気持ちで向き合ってないよ」
「….」
「病気を治すためだけなら、もっと早く言ってる」
「でも俺が言えなかったのは….。」
太智は少し俯いた。
「吉田さんが大事だったから」
「この関係が壊れるのが怖かったから」
その言葉に、仁人は息を止めた。
「俺だってずっと怖かったんよ」
「吉田さんが俺のこと見てるのと同じくらい、俺も吉田さんのこと見てた」
「頑張ってるところも」
「無理して笑ってるところも」
「全部好きだった」
「だから同情とかじゃない」
太智はまっすぐ仁人を見る。
「俺が好きだから言ってる」
その瞬間。
胸の奥が熱くなった。
「っ….」
また発作が起きる。
仁人は慌てて口元を押さえた。
でも、いつもの苦しさはなかった。
落ちてきたのは、一枚の白い花びら。
「…..え」
手のひらに乗ったそれは、今までのどの花よりも綺麗だった。
白銀の百合。
それは、ずっと苦しんできた恋が。
初めて、幸せだと認められた証だった。
手のひらに乗った白い花びらを、仁人はしばらく見つめていた。
今まで吐き出してきた花とは、何もかも違った。
薄紫色のリナリアは、この思いに気づいて。
黄色のマリーゴールドは、嫉妬、絶望。
赤いチューリップは、真実の愛。
紫のヒヤシンスは、諦めようとした痛み。
全部、自分が太智を好きだった証だった。
「….俺」
仁人の声が震える。
「ずっと、この気持ちが間違いだと思ってた」
「好きになっちゃいけなかったって….何回も思った」
太智は何も言わず、仁人の言葉を聞いていた。
「でも….」
白銀の百合を握りしめる。
「違ったんだな」
「俺が太智を好きだったことは….間違いじゃなかったんだな」
太智は優しく笑った。
「当たり前やん」
「俺は、吉田さんに好きになってもらえて嬉しいよ」
その言葉に、仁人の目からまた涙が溢れた。
でも、今まで流してきた涙とは違った。
苦しさじゃない。
悔しさでもない。
安心した涙だった。
「….太智」
「ん?」
「俺、これからちゃんと言うから」
「何を?」
仁人は少し照れながら笑った。
「好きって」
「もう、隠さない」
太智も笑う。
「うん。俺も何回でも言う」
「吉田さんのこと好きって」
その瞬間、床に落ちていた花びらが風に揺れた。
今まで仁人が吐き出してきた花たちは、もう苦しみの証じゃなかった。
長い間抱えてきた、大切な想いの証になった。
仁人は初めて思った。
恋は、叶わなければ苦しいものなんじゃない。
誰かを大切に思えたこと自体が、きっと幸せなことなのだと。
そしてその日から、仁人が花を吐くことは二度となかった。
読んでいただきありがとうございました😭
誤字脱字等ありましたら教えてくれると幸いです…🙇♀️
コメント
5件
読了しました…!😭💕 花吐き病設定、めっちゃ切なくて苦しくて、でも最後の白銀の百合で全部報われた感じがもう最高すぎました…!!リナリア→マリーゴールド→チューリップ→シクラメン→百合、花言葉で感情が可視化されるのエモすぎる…!太智が「俺もずっと好きだった」って言ってくれた瞬間、一緒に涙腺崩壊しました😭✨ すてきな作品をありがとうございます!