テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
駅前に近づくと、人の流れが一気に増えてきた。
悠真は信号の前で立ち止まり、咲の方をちらりと見た。
「ここでいいか。妹ちゃんはこっちだろ?」
「……はい」
短いやり取り。
それなのに、足を止めるのが名残惜しい。
「気をつけて帰れよ」
ふっと笑って、悠真は人の波に紛れていった。
その背中を目で追いながら、咲は胸の奥に小さな痛みを覚える。
――なんでだろう。
ただの兄友に、こんなにも心を奪われてしまうなんて。
信号が青に変わるのを待ちながら、咲はそっと深呼吸した。